先天性高インスリン血症の病態解明と治療適正化に関する研究

文献情報

文献番号
201024156A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性高インスリン血症の病態解明と治療適正化に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-101
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
依藤 亨(大阪市立総合医療センター 小児代謝・内分泌内科)
研究分担者(所属機関)
  • 米川 幸秀(京都大学 小児外科学)
  • 吉澤 明彦(信州大学 病理学)
  • 増江 道哉(木沢記念病院 小児科)
  • 西堀 弘記(木沢記念病院 放射線科)
  • 楠田 聡(東京女子医科大学 母子総合医療センター)
  • 河井 昌彦(京都大学 新生児集中治療部)
  • 安達 昌功(神奈川県立こども医療センター 内分泌代謝科)
  • 市場 博幸(大阪市立総合医療センター 新生児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
先天性高インスリン血症は、持続性の低血糖により高頻度に重篤な中枢神経後遺症を残す疾患である。近年本疾患の発生機序に対する理解が進み、欧米先進医療施設では膵部分切除によって後遺症なく治癒にいたる症例が増加しているが、本邦では従来通りの合併症の多い亜全摘が行われてきた。研究班では(1)欧米先進諸国と同等の医療を我が国の実情に合った形で提供できる体制の確立、(2)さらに進んだ医療の基礎となるデータ・知見を収集することを目的とした。
研究方法
(1)国内全症例に迅速に対応できる遺伝子診断体制を確立し、本邦患者の分子疫学調査を行った。すなわち、全国より収集した85例についてKCNJ11, ABCC8, GLUD1, GCK遺伝子の包括的解析を行い、本邦症例の病型頻度・分類を検討した。(2)我が国で従来行われていなかった18F-DOPA PET診断体制を行い、日本人患者の画像上の特徴、病理像と比較した診断率を検討した。(3)実際に同定された局所性病変を持つ患児に対して、術中病理診断を行いつつ膵局所切除を行った。(4)切除困難な難治性症例に対し、新しい内科的治療としてオクトレオチド持続皮下注射療法の可能性を検討した。(5)一過性・持続性先天性高インスリン血症の取り扱い暫定ガイドラインを策定した。
結果と考察
(1)すべての遺伝子解析を2週間以内に家族検索を含めて結果を得る体制が確立した。現時点でのスループットは我が国における本症の全例に対応することが可能であった。(2)分子疫学調査では局所性病変の比率が、本邦症例では90%近くに及び、膵部分切除の対象となりうる症例の比率がより高いことが判明した。(3)日本人症例の18F-DOPA PETでは局所性であっても多発性・びまん性にみえる例が多いことが判明し、診断率を向上するためのアルゴリズムを開発して大幅に診断精度が向上した。(4)実際に10例の局所切除を行い、いずれも成功した。(5)手術不能例に対してオクトレオチド持続皮下注療法を試み、多くの症例で有効であることを確認した。(6)本症の暫定診療ガイドラインを策定した。
結論
本研究で、本邦において欧米並みの先進治療を行える基盤が確立した。さらに、非手術療法の可能性が確認された。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024156Z