毒物又は劇物の指定等に係る急性吸入毒性試験の代替法の精緻化及び標準化のための研究

文献情報

文献番号
202525020A
報告書区分
総括
研究課題名
毒物又は劇物の指定等に係る急性吸入毒性試験の代替法の精緻化及び標準化のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
25KD2003
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
高須 伸二(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター病理部)
研究分担者(所属機関)
  • 小川 久美子(星薬科大学 毒性学研究室)
  • 赤根 弘敏(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
  • 魏 民(大阪公立大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
令和7(2025)年度
研究終了予定年度
令和9(2027)年度
研究費
20,890,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
毒物及び劇物は、原則として、動物を用いた急性毒性試験におけるLD50・LC50値から判定されており、投与経路としては経口、経皮及び吸入が想定されている。しかし、全身吸入暴露法は大規模な暴露装置が必要となるなどの困難があるため、吸入毒性情報は限定的である。本研究では、吸入暴露が想定される物質の毒劇物判定におけるin vivo試験法として、経気管肺内噴霧投与法(Intra-tracheal intrapulmonary spraying;TIPS法)の検証及びin vitro試験法として、ヒト肺腺癌細胞株A549の細胞毒性を指標とした評価法の検討・精緻化を行い、毒劇物の指定に資する手法の確立を図ることを目的としている。
研究方法
TIPS法の検証に関して、本年度は新たに6物質についてTIPS法による急性毒性試験に基づくLD50値の判定及び令和6年度に実施した3物質の病理組織学的検査による毒性影響の検討を実施した。また、難水溶性物質の新規投与媒体として人工肺サーファクタントのTIPS法における適用可能性を検討した。A549細胞毒性を指標としたin vitro 試験法に関しては、先行研究において構築されたA549-NRU assayを用いて、新たに13物質の細胞毒性評価を実施した。毒物/劇物判定と暴露経路に関する情報収集では、急性吸入毒性評価のためのin vivo試験法としてのTIPS法、及びin vitro試験法としてのA549細胞の細胞毒性を指標とした評価法の意義を解析するため、評価値に及ぼす暴露経路並びに投与方法の影響を検討することを目的とした。これまでに検討してきた49物質について、ラットにおける急性経口毒性のLD50値を公表情報から確認し、急性吸入毒性のLC50と比較し、GHS区分及び毒劇物判定を検討した。
結果と考察
TIPS法による急性毒性試験では、新たに3物質のLD50値を取得した。これまでに検討した27物質中、毒劇物区分外の5物質を含む21物質で、TIPS法のLD50値を基に試算した有害性区分が既報の急性吸入毒性試験による区分と概ね一致したことから、毒劇物判定における本法の有用性が示唆された。また、呼吸器以外の臓器に対する影響も検出可能であることが確認された。さらに、本投与条件下において人工肺サーファクタント様液は一般状態、体重および肺に顕著な影響を示さず、生理食塩水と同程度の肺内分布を示す可能性が示唆された。
A549-NRU assayでは、A549-NRU assayにより13物質についてin vitro LC50値を取得した。本年度に得られた13物質のデータを、これまでに検討した48物質のデータに加え、計61物質を対象として、ラット4時間吸入ばく露試験由来のin vivo LC50値との相関解析を行った。その結果、水溶性化合物およびアルデヒド・ケトン官能基を有する化学物質において、in vitro LC50値とin vivo LC50値との間に有意な正の相関を認めた。また、両者の一致性を評価したところ、13被験物質中10物質、全61物質中45物質が±1 log10単位以内の許容範囲内に収まった。さらに、A549-NRU assayにより得られたLC50値に基づき、TIPS試験に用いるLD50推定値を算出し、実施中のTIPS試験における初期投与量設定に活用した。これらの結果から、A549-NRU assayは急性吸入毒性評価におけるin vitro試験法として有用であり、TIPS試験の初期投与量設定に科学的根拠を与える情報としても活用可能であることが示された。
また、経口および吸入による急性毒性のデータが揃っている45化合物のうち、約80%は経口暴露よりも吸入暴露において急性毒性が高度であった。特に、規制対象外から劇物または毒物に分類が変わる化合物が約50%を占めていた。このことから、吸入が懸念される化合物については、経口暴露の急性毒性データによる毒物劇物の判断は適切ではなく、毒物又は劇物の指定においては、吸入による毒性評価の実施、あるいは、化合物の特徴に即した適切な換算方法を考慮する必要性があると考えられた。
結論
TIPS法による急性吸入毒性試験結果と既報の吸入による急性毒性を比較した結果、TIPS法のデータは吸入暴露における毒物・劇物判定に有用であることが示唆された。また、A549-NRU assayは、TIPS試験の初期投与量設定に科学的根拠を与える情報として活用可能であることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2026-06-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-06-26
更新日
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収支報告書

文献番号
202525020Z