化学物質による抗甲状腺作用および周産期の甲状腺機能低下に伴う次世代影響の評価に関する総合研究

文献情報

文献番号
202525016A
報告書区分
総括
研究課題名
化学物質による抗甲状腺作用および周産期の甲状腺機能低下に伴う次世代影響の評価に関する総合研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24KD2003
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
豊田 武士(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター病理部)
研究分担者(所属機関)
  • 小川 久美子(星薬科大学 薬学部 毒性学研究室)
  • 石井 雄二(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 病理部)
  • 赤根 弘敏(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
  • 諫田 泰成(国立医薬品食品衛生研究所 薬理部)
  • 中西 剛(岐阜薬科大学 薬学部)
  • 松丸 大輔(岐阜薬科大学 衛生学研究室)
  • 石田 慶士(岐阜薬科大学 衛生学研究室)
  • 田熊 一敞(大阪大学 大学院 歯学研究科 薬理学教室)
  • 早田 敦子(髙野 敦子)(大阪大学 歯学研究科)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和8(2026)年度
研究費
19,869,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 化学物質による妊娠期の甲状腺機能低下は、発達神経毒性(DNT)等の次世代影響を誘発することが懸念されている。本研究では、既存ガイドライン試験を活用した抗甲状腺物質の効率的な検出および機序推定を可能とするin vivo試験法の確立を目的とする。また、レポーター遺伝子導入マウス(Syn-Repマウス)を用いて、甲状腺機能低下時の児動物、特に発達期脳における影響の解析を通じて、次世代影響を検出可能なエンドポイント/バイオマーカーを同定する。さらに、これらの結果を基に、ヒトiPS細胞等を用いたin vitro評価法の構築を目指す。
研究方法
 令和7年度は、前年度に投与実験を実施した2物質について、病理組織学的・免疫組織化学的解析を行った。また、新規被験物質として予備検討を含め8種の抗甲状腺物質の28日間投与試験を実施した。さらに、TSH産生阻害剤・DIO阻害剤等を投与したラット甲状腺・下垂体サンプルを用いた網羅的遺伝子発現解析を実施し、新規マーカー候補の探索を行った。海外の動向調査として、OECD「Thyroid Disruption Method」およびICCVAM/EPA「甲状腺機能評価法バリデーション」に関する専門家会議に参画した。
 甲状腺機能低下時に誘導される次世代影響を同定するため、マウス周産期甲状腺機能低下モデルを用い、母動物および児動物の甲状腺関連ホルモン、脳in vivoイメージング指標(Syn-Repマウス頭部BLI)、ならびに行動試験結果を統合的に解析した。また、ヒトDNTの陽性対照物質であるバルプロ酸に関する文献調査に加え、前年度に引き続きNGS解析のパスウェイ解析によるTHRαを介してDNTに関与する遺伝子の探索を行った。
結果と考察
 令和7年度までの解析結果から、ラット28日間反復経口投与試験における甲状腺の病理組織学的解析が、様々な機序による抗甲状腺物質の検出において最も鋭敏な指標であることが示された。また、甲状腺におけるNIS等の各種免疫染色を併用することで、抗甲状腺作用の機序推定が可能であることが示された。本手法は、既存のOECDガイドライン試験(TG407)に容易に組み込みが可能であり、化学物質の抗甲状腺作用検出のための簡便かつ効率的なin vivo評価法として利用し得る。
 マウス周産期甲状腺機能低下モデルを用いた統合的な解析の結果、妊娠末期の母動物と離乳期の児動物の甲状腺指標(T4等)には強い線形関係がみられ、母体甲状腺ホルモン環境の変動が児動物における甲状腺機能低下の程度と整合して変化することが示唆された。また、in vivoイメージング解析(BLI)が、母動物および児動物の甲状腺ホルモン指標と一貫した関連を示すことを確認した。さらにBMD解析により、BLI_meanの変動が生じる用量域が定量化され、行動学的変化が示唆される低用量域においても、脳発達影響を検出し得る可能性が示された。
 バルプロ酸に関する文献調査により、ヒトおよびラットで血中甲状腺ホルモン量の減少が報告されていることを明らかにした。また、THRαを介して神経機能に関わる遺伝子の探索を行った結果、神経分化・成熟に関与する遺伝子、神経細胞の移動や軸索誘導に関与する遺伝子等が見出された。
結論
 本研究により、既存ガイドライン試験(ラットを用いた28日間反復経口投与毒性試験)において病理組織学的・免疫組織化学的解析を併用することで、抗甲状腺物質の早期検出および機序推定が可能な、効率的なin vivo評価法として活用し得ることが示された。また、出生前発生毒性試験等で取得可能な母動物の甲状腺関連ホルモン値を、“早期警戒(トリガー)指標”として追加試験の実施判断に利用し得る可能性が示された。これらの評価手法は、動物実験の3Rsに貢献するのみならず、化学物質の安全性評価の迅速化・精緻化に繋がり、厚生労働行政に係る施策への活用が期待される。また、本研究の成果は、研究期間を通じて日本毒性学会、日本毒性病理学会および米国毒性学会等、国内外の関連学会において継続して発表しており、学術論文として国際雑誌に順次投稿予定である。

公開日・更新日

公開日
2026-06-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

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公開日・更新日

公開日
2026-06-02
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収支報告書

文献番号
202525016Z