医療機関等の施設における感染症対策に関する研究

文献情報

文献番号
199700811A
報告書区分
総括
研究課題名
医療機関等の施設における感染症対策に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
多屋 馨子(大阪大学医学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 新興・再興感染症研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV・感染症の増加、移植医療の推進に伴って、免疫抑制状態下における日和見感染症、特にヘルペス科ウイルス感染症の重要性が注目されつつある。そこで、移植医療の成功に結びつけるためにβヘルペスウイルス感染症の病態を解明することを目的とする。
研究方法
1)サイトメガロウイルスに関して、DNA、mRNA、ウイルスの検出時期と臨床症状発現に関するこれまでの研究を進めるとともに、抗ウイルス剤の予防投薬の有無と感染症発現の差異ならびに最も効果的な抗ウイルス剤や高力価ガンマグロブリンの使用方法を確立する。2)HHV-6に関しては、最も効果的な抗ウイルス剤使用方法が確立されていない。そこで、抗ウイルス剤の使用状況と、DNA及びウイルスの検出状況からこれらを確立するとともにサイトメガロウイルスと同様ウイルスが検出された場合は抗ウイルス剤に対する活性、耐性の獲得の有無について検討する。3)HHV-7に関しては、その再活性化と臨床症状との関係について検討する。4)骨髄移植の際のGVHD(graft-versus-hostdisease)に焦点を当て、サイトメガロウイルス、HHV-6及びHHV-7との関係について、in situ hybridization法、免疫染色法を用いて、当該組織(皮膚、腸)生検材料、血液を検体としてウイルスDNAの存在部位を確認する。
結果と考察
腎移植患者42名、骨髄移植患者22名について経時的に移植前後でHHV-6,7,HCMVの動態について検討したところ、骨髄移植後特にCD34+selection法による幹細胞移植を施行した患者でHHV-6による重篤な症状が引き起こされた患者、HCMV網膜炎を発症した患者を経験した。NASBA法によるHCMVmRNAは、症状出現数週間前から検出された。DNA診断についても半定量を行えば症状出現数週前から検出され、早期診断に有効であった。HHV-6の再活性化の症状として、網膜炎も認められた。HHV-6による下痢の際採取した直腸の検索から浸潤マクロファージにHHV-6DNAを多量に検出した。γ-グロブリンとganciclovirの併用療法は症状の軽快には有効であったが治癒には至らなかった。HHV-7と症状との関係は認められなっかた。移植後ヘルペスウイルス感染症の制圧には適切な診断方法と、治療方法が要求される。NASBA法によるHCMV感染症の早期診断はきわめて有効であると考える。またHHV-6の再活性化の症状として網膜炎が認められることはこれまで報告されておらず他の原因であると考えられてきた症状の中にHHV-6によるものが含まれている可能性がある。HHV-7は移植後感染症としてはあまり重要ではないと考えられる。
結論
NASBA法によるHCMVmRNA、定量的DNA PCR法は感染症の早期診断に有効であった。HHV-6によって移植後網膜炎が認められた。HHV-7と症状との関係は認められなかった。

公開日・更新日

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更新日
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研究報告書(紙媒体)