3次元培養系と次世代シークエンサーによる変異解析手法(ec-NGS)を組み合わせた化学物質の遺伝毒性評価法の開発

文献情報

文献番号
202525009A
報告書区分
総括
研究課題名
3次元培養系と次世代シークエンサーによる変異解析手法(ec-NGS)を組み合わせた化学物質の遺伝毒性評価法の開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
25KD1001
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
戸塚 ゆ加里(星薬科大学 衛生化学)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷川 晋也(星薬科大学 薬学部衛生化学研究室)
  • 美谷島 克宏(東京農業大学 応用生物科学部)
  • 樋口 裕一郎(公益財団法人実中研 ヒト化モデル研究部 ヒト臓器/組織モデル研究室)
  • 山崎 大樹(国立医薬品食品衛生研究所 薬理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
令和7(2025)年度
研究終了予定年度
令和9(2027)年度
研究費
16,948,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
化学物質の開発には安全性評価が不可欠であり、従来は実験動物を用いた反復投与試験等の結果が重視されてきた。しかし、近年の動物愛護3Rs(Replacement・Reduction・Refinement)の観点から、動物実験を代替・削減し得る新規評価法の開発が求められている。一方、汎用されている in vitro 遺伝毒性試験は均質な細胞を用いた評価系であり、生体内の複雑な組織構造や代謝応答を十分に反映できないという課題がある。また、化学物質の代謝活性化には主として齧歯類由来 S9 が用いられており、ヒト代謝を十分に反映した評価系とはなっていない。本研究では、3D培養により作製した肝臓オルガノイドを用いて、ヒト外挿性が高く迅速かつ簡便な新規 in vitro 遺伝毒性評価法の構築を目的とした。さらに、ヒト肝キメラマウス由来 HepaSH 細胞やヒト肝キメラマウスを活用し、ヒト代謝を反映した遺伝毒性評価系の開発を目指した。
研究方法
本年度は、①肝毒性物質の in vivo および in vitro における病態評価、②γ-H2AX を指標とした DNA 損傷性評価法の検討、③マウス肝オルガノイドと HepaSH 細胞の共培養条件の最適化、④ヒト肝キメラマウスを用いた遺伝毒性評価法の妥当性検証、⑤Error-Corrected NGS(ec-NGS)によるゲノム変異解析、⑥オルガノイドおよび MPS を用いた研究の国内外動向調査を実施した。PB、CMR、MCT および APAP を用いてマウスおよび肝臓由来オルガノイドの毒性評価を行うとともに、γ-H2AX 免疫染色法の構築、HepaSH 細胞との共培養条件の検討、ヒト肝キメラマウスへの MCT 投与試験を実施した。さらに、MCT、EC および CMR 曝露試料について ec-NGS 解析を行い、変異頻度、変異シグネチャーおよび strand bias を評価した。
結果と考察
肝毒性評価では、PB および CMR による肝細胞肥大、MCT による多核細胞の増加、APAP による肝細胞障害など、各化合物の作用機序に対応した特徴的な病理変化が認められた。また、オルガノイドにおいても肝細胞肥大、多核化、細胞毒性、小核形成などの変化が観察され、in vivo と同様の傾向を示したことから、肝臓オルガノイドの有用性が示された。
γ-H2AX を用いた DNA 損傷評価では、EMS 曝露により明瞭な γ-H2AX foci が観察され、オルガノイドを用いた評価法が成立することを確認した。PB では γ-H2AX 陽性細胞率の上昇は認められなかったが、EC、MCT および CMR では増加傾向が認められ、特に MCT では強いシグナルが観察された。これらの結果は小核試験とも一致しており、γ-H2AX が DNA 損傷の初期指標として有用であることが示唆された。共培養条件の検討では、HepaSH 細胞の薬物代謝酵素発現とオルガノイドの肝成熟化マーカー発現が維持され、2:1(OGM:Cellatis)混合培地が最適条件として選定された。また、ヒト肝キメラマウスへの MCT 投与試験では、血中肝障害指標の上昇および体重減少が認められ、ヒト代謝を反映した評価モデルとしての有用性が示唆された。
ec-NGS 解析では、MCT 曝露によりオルガノイドおよびマウス肝臓の双方で変異頻度の上昇と C>A 変異の増加が認められた。また、濃度依存的に増加する SBS 成分や strand bias を伴う C>A 変異が検出され、in vitro と in vivo で対応する変異誘導が確認された。一方、EC ではマウス肝臓において T>A を中心とした変異頻度の増加が認められたが、オルガノイドでは顕著な変化は認められなかった。
さらに、MPS World Summit 2025 および EUROTOX 2025 の調査から、MPS を用いたコメットアッセイ、小核試験、Duplex Sequencing の活用事例は増加しているものの、ec-NGS を組み合わせた報告は限定的であり、本研究の新規性と発展性が確認された。

結論
本研究の結果、オルガノイドは in vivo の病態や遺伝毒性応答を反映し得ることが示され、ヒト代謝活性化系との組み合わせにより、従来法よりもヒト外挿性の高い評価法となる可能性が示された。今後は、共培養系およびヒト肝キメラマウスとの比較解析を進めるとともに、MPS 技術や ec-NGS を組み合わせた次世代型遺伝毒性評価法としての実用化を目指す。

公開日・更新日

公開日
2026-06-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-06-29
更新日
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収支報告書

文献番号
202525009Z