発生毒性リスク評価に資するシグナル伝達かく乱作用を基にしたNAMsの開発

文献情報

文献番号
202525006A
報告書区分
総括
研究課題名
発生毒性リスク評価に資するシグナル伝達かく乱作用を基にしたNAMsの開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
24KD1003
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
大久保 佑亮(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部)
研究分担者(所属機関)
  • 福田 淳二(横浜国立大学大学院 工学研究院)
  • 中島 芳浩(産業技術総合研究所 健康医工学研究部門)
  • 平林 容子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター)
  • 小島 肇(山口東京理科大学 工学部 医薬工学科)
  • 桑形 麻樹子(帝京平成大学 健康医療スポーツ学部 医療スポーツ学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和8(2026)年度
研究費
18,630,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
化学物質による胚・胎児発生への影響にはヒトと実験動物との種差があり、従来は複数動物種を用いた発生毒性試験によりヒトへの外挿性を補ってきた。しかし、これらの試験は高コストかつ長期間を要し、動物福祉の観点からも代替法の開発が求められている。一方、複雑な発生過程を細胞レベルで網羅的に再現することは困難である。そこで我々は、発生過程が少数のシグナル伝達経路の相互作用により制御される点に着目し、化学物質によるシグナルかく乱をヒトiPS細胞でリアルタイムに検出する発生毒性評価法DynaLux/cを開発してきた。本研究では、DynaLux/cをハザード評価から定量的なリスク評価へ展開するとともに、試験法の高精度化、技術移転及び公定化に向けた基盤整備を行った。
研究方法
FGFシグナル下流の血清応答因子(SRF)活性をNanoLucで検出するヒトiPS細胞を用い、Kronos HTにより48時間以上連続測定した。溶媒対照群と試験物質処置群の発光曲線間面積をArea Between the Curves(ABC)として算出し、発生毒性陽性・陰性物質の分類及び濃度応答解析を行った。また、技術移転に向けて標準作業手順書(SOP)を改良した。in vitro-in vivo extrapolation(IVIVE)に向け、9化合物の臨床用量、薬物動態及び非臨床毒性情報を収集した。さらに、内部標準として赤色発光ルシフェラーゼSLR3を導入した多色リアルタイム発光測定、最小プロモーターの比較及びシングルセル発光イメージングを実施した。公定化に向けて、コンソーシアム会議、国内外の規制関連会議及び学会を通じて情報収集と意見交換を行った。
結果と考察
これまでに得られた陽性対照23種類、陰性対照10種類、計33種類のデータを解析した結果、既知分類と一致した。唯一の偽陽性はアクリルアミドであり、母体毒性及び胚・胎児致死作用を示す一方、生存胎児の形態異常が認められないという既存毒性情報が分類結果に影響した可能性が考えられた。各濃度のABC値を用いた定量解析を進め、リスク評価法の構築に向けた基盤を得た。IVIVEについては、5-フルオロウラシル、ホウ酸、シメチジン、ジメチルフタラート、レナリドミド、塩化リチウム、メトトレキサート、ベンジルペニシリン及びサッカリンの毒性プロファイル整理に着手した。多色測定では、NLucとSLR3の発光を光学フィルターにより定量的に分離でき、FGF刺激によりNLucのみが増加し、SLR3は一定に保たれた。最小プロモーター比較では従来のミニプロモーターが最適であった。シングルセル解析では、大部分の細胞が測定開始約4時間後にピークを示し、FGF応答が主として細胞集団内で同期的に生じることが示された。第3回コンソーシアム会議には27名が参加し、技術講習会、共同研究、知的財産、ライセンス及びSOP改定について協議した。
結論
DynaLux/cは、33物質を97%の正確度で分類し、発生毒性ハザード評価法として高い性能を示した。ABCに基づく濃度応答解析、多色発光測定、IVIVE情報整備及び技術移転体制の構築により、定量的リスク評価と公定化に向けた基盤が整備された。今後は、解析法の統計学的妥当性、ヒトへの外挿性及び施設間再現性を検証し、OECDテストガイドライン化を含む行政利用を目指す。

公開日・更新日

公開日
2026-07-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-07-10
更新日
-

収支報告書

文献番号
202525006Z