日本人長鎖脂肪酸代謝異常症の診断方法の確立、及び治療方法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201024144A
報告書区分
総括
研究課題名
日本人長鎖脂肪酸代謝異常症の診断方法の確立、及び治療方法の開発に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-089
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
大竹 明(埼玉医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 遠藤 文夫(熊本大学大学院 医学薬学研究部)
  • 奥山 虎之(国立成育医療研究センター 臨床検査部)
  • 高柳 正樹(千葉県こども病院 代謝科)
  • 長谷川 有紀(島根大学 医学部)
  • 但馬 剛(広島大学大学院 医歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究においては長鎖脂肪酸代謝異常症の(1)患者数と病状の現状把握、(2)新規の診断基準の作成、(3)病態に合わせた治療指針の作成、(4)医療現場へのフィードバックに基づく今後の長期フォローアップ・支援体制の確立を目的とする。
研究方法
以下の3つの集団を対象として、インフォームドコンセントを得た後に検体を採取し、酵素診断、遺伝子診断で病像を確定する。1)タンデムマス法を用いたマス・スクリーニングで疑われた症例、2)乳児突然死症候群やライ症候群、インフルエンザ脳症などとして急性発症した症例、3) 幼児期以降に筋肉痛、脱力、肝機能障害のエピソードなど骨格筋症状で発症した症例である。平行して文献調査、アンケート調査を実施し、患者数と病状の現状把握を行う。長鎖脂肪酸代謝異常症の上記疫学調査をもとに本疾患のスクリーニングから確定診断に至る診断支援体制を構築する。それを基に長鎖脂肪酸代謝異常症の各病状に応じた治療指針の作成を試みる。これらを基に、スクリーニング→確定診断→病状・病型に応じたきめ細かな治療とフォローアップに至る、全国的なシステム作りを試みる。
結果と考察
アンケート調査により日本ではカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼII (CPT II) 欠損症と極長鎖アシル-CoA脱水素酵素(VLCAD) 欠損症で長鎖脂肪酸代謝異常症の2/3以上を占めることが明らかになった。そこでCPTII欠損症とVLCAD欠損症について、その臨床像と遺伝子型を検討した。その結果、新生児型の予後は不良であったが、中間型や骨格筋型は発症時早期の十分な糖の補充やカルニチン内服および飢餓時間を作らないようにするなどの治療によって知的・生命予後は良好であることを示し、新生児期のタンデムマススクリーニングにより発症前に診断することは発症・障害予防につながることを強く示唆した。さらに、VLCADおよびCPT II欠損症の酵素診断・遺伝子診断を用いた確定診断法を引き続き検討し、脂肪酸代謝異常症を新生児マス・スクリーニング(NBS)に組み入れて早期診断することの重要性と確定診断に至る課題を述べた。
結論
マス・スクリーニング発見症例の予後が圧倒的に良いことが判明し、長鎖脂肪酸代謝異常症の管理のためにはタンデムマスを用いたNBSの必要性は明らかである。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024144Z