有機フッ素化合物の発がん性評価と評価スキームの確立に関する研究

文献情報

文献番号
202525005A
報告書区分
総括
研究課題名
有機フッ素化合物の発がん性評価と評価スキームの確立に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24KD1002
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
魏 民(大阪公立大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 周五(大阪公立大学大学院医学研究科)
  • 戸塚 ゆ加里(星薬科大学 衛生化学)
  • 松本 真理子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 安全性予測評価部)
  • 藤岡 正喜(公立大学法人大阪 大阪公立大学 大学院医学研究科 分子病理学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和8(2026)年度
研究費
15,686,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
有機フッ素化合物であるPFASは幅広い用途で使用され、環境中での難分解性及び生体内蓄積性が問題となっている。近年、国内複数地域の水道水等からPFOA、PFOSを含むPFASが検出され、ばく露による健康影響、とくに発がん性への懸念が高まっている。一方、PFASは1万種類以上存在し、すべてを長期発がん性試験で評価することは、費用、時間及び動物使用数の観点から極めて困難である。本研究では、短期肝発がん物質検出法、DNA付加体解析及びin silico予測ツールを組み合わせ、PFASの構造特性及び毒性発現機序を踏まえた発がん性評価スキームを構築することを目的とした。
研究方法
令和7年度は、in silico解析、既存毒性情報及びばく露情報に基づき10種類のPFASを選定し、SD雄ラットを用いた1日単回経口投与試験を実施した。急性経口毒性情報が得られていない9物質については、OECD TG423に準拠して急性毒性を評価し、得られた最大耐量等に基づき投与量を設定するとともに、GHS急性経口毒性区分を判定した。投与24時間後に肝臓を採取し、肝臓における10マーカー遺伝子の発現を解析し、遺伝毒性肝発がん物質超短期検出法により判定した。また、7種類のPFASについてOECD TG407に準拠した28日間反復経口投与試験を実施し、肝臓における網羅的遺伝子発現解析を行い、非遺伝毒性肝発がん物質短期検出法により評価した。さらに、PFAS投与ラット肝臓DNAを用いたDNAアダクトーム解析及び遺伝毒性肝発がん物質超短期検出法で陽性を示した一部のPFASを対象にアルキル化DNA修復酵素(MGMT)欠損株によるAmes試験を実施した。そしてin silico評価系では、480物質のPFASを対象としてAmes変異原性及び発がん性QSAR解析を行った。また、化審法分類、既存毒性情報及び国内外のばく露情報を整理し、短期肝発がん物質検出法との比較解析を行った。
結果と考察
遺伝毒性肝発がん物質超短期検出法では、10物質中4物質が陽性と判定された。令和6年度に検討した19物質と合わせると、計29物質中7物質が陽性を示し、これらのPFASについては遺伝毒性肝発がん物質である可能性が示唆された。また、GenX関連構造を有する複数の物質が陽性を示したことから、遺伝毒性肝発がん性を示すPFASには一定の構造的特徴が存在する可能性が示された。急性毒性評価では、9物質はいずれもGHS区分4又は5に該当し、経口毒性において毒劇物には該当しなかった。病理組織学的解析では、10物質中6物質で肝障害、4物質で腎障害が認められた。本研究条件下では、PFASの急性毒性における主な標的臓器は肝臓であり、一部の物質では腎臓にも毒性影響が及ぶことが明らかとなった。
非遺伝毒性肝発がん物質短期検出法では、7物質中4物質が陽性と判定された。令和6年度までの結果と合わせると、計13物質中6物質が陽性を示し、これらのPFASについては非遺伝毒性肝発がん物質である可能性が示唆された。陽性物質はいずれもPPARα誘導モデルで陽性を示して、PFASによる非遺伝毒性肝発がん機序としてPPARα活性化が重要である可能性が示された。
DNAアダクトーム解析では、19種類のPFASを投与したラット肝臓DNAの解析により、肝発がん物質短期検出法及びQSARの結果と関連する3つのグループに分類されることを確認した。また、MGMT欠損株を用いたAmes試験を実施した結果、陽性となるPFASが存在し、DNAのアルキル化様付加体を介した遺伝毒性を示す可能性が示唆された。
in silico評価系では、480物質のPFASを対象にAmes変異原性及び発がん性QSAR解析を行い、関連する構造アラートを整理した。また、化審法分類、既存毒性情報及びばく露情報を整理し、優先的に検討すべき候補物質に関する情報が得られた。一方、短期検出法との比較により、未学習PFASに対するAmes QSAR解析には限界があり、単一のin silicoツールに依存せず、複数の解析結果を組み合わせて評価する必要性が示された。
結論
本研究により、PFASの急性毒性、遺伝毒性及び非遺伝毒性肝発がん性、DNA付加体形成、QSAR予測及び既存毒性情報との関連性に関する有用な基盤データが得られた。一方で、短期肝発がん物質検出法、Ames試験、QSAR解析及びDNAアダクトーム解析の結果には一致しない点も認められ、単一の評価法ではPFASの発がん性を十分に捉えきれない可能性が示された。今後は、より多様なPFASを対象に検討を進め、上記の多様な手法や情報を統合したPFAS発がん性評価スキームの確立を目指す。

公開日・更新日

公開日
2026-07-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-07-13
更新日
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収支報告書

文献番号
202525005Z