ナノマテリアルの有害性評価を迅速化・高度化する短期経気管肺内噴霧暴露評価系およびin vitro予測手法の開発

文献情報

文献番号
202525002A
報告書区分
総括
研究課題名
ナノマテリアルの有害性評価を迅速化・高度化する短期経気管肺内噴霧暴露評価系およびin vitro予測手法の開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
23KD1002
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
内木 綾(公立大学法人 名古屋市立大学 大学院医学研究科 実験病態病理学)
研究分担者(所属機関)
  • 戸塚 ゆ加里(星薬科大学 衛生化学)
  • 梯 アンナ(大阪公立大学 大学院医学研究科)
  • 津田 洋幸(公立大学法人 名古屋市立大学大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
14,722,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
CNTを含むナノマテリアルは、吸入暴露により肺・胸膜中皮に毒性および発がん性を誘発する可能性があるが、従来の吸入暴露試験は施設・費用面の制約が大きい。本年度は、経気管肺内噴霧投与(TIPS)法を基盤として、発がん性陽性対照であるMWCNT-7、MWCNT-Nと、発がん性が未知であったSWCNTを同条件で評価し、104週発がん性と4週・13週で観察可能な短期有害性指標との対応を明らかにすることを目的とした。さらに、発がん性陰性CNTおよび化学発癌物質との比較、全ゲノム解析、in vitro解析を通じて、発がん性と連結するAOPのKey Event(KE)候補を絞り込み、短期in vivo評価およびin vitro評価系へ接続可能なin vivo参照軸を整理することを目指した。
研究方法
F344雄性ラットに、MWCNT-7、MWCNT-NおよびSWCNTをPFポリマー分散液に懸濁してTIPS投与し、4、13、52、104週に剖検した。肺・胸膜中皮の腫瘍性病変、肺胞マクロファージ集積、肺胞上皮増殖活性(Ki67)、DNA損傷(γH2AX)、酸化的DNA損傷(8-OHdG)、炎症関連DNA損傷(8-NG)および炎症性遺伝子発現を解析した。さらに、発がん性陽性CNT、発がん性陰性CNT(CNH、CNB)および化学発癌物質(DHPN/NNK)を比較対象として、投与後4週肺組織のRNA-seq、GO/KEGG解析およびqRT-PCRを実施し、発がん性陽性CNTに共通する経路と候補遺伝子を抽出した。DHPN、NNKおよびCNT誘発肺がん・中皮腫41検体について全ゲノム解析を行い、変異シグネチャーとストランドバイアスを比較した。RAW264.7マクロファージ細胞を用い、in vitroでのCcl種発現も評価した。
結果と考察
。8-OHdGは主にMWCNT群で、8-NGはSWCNT群で特徴的に変動し、CNT種によりROS/RNSを介する傷害様式が異なる可能性が示された。Ccl2/Ccl3は複数CNTで共通して上昇し、Il-1b/Tnfaは高発がん感受性群で持続的に上昇した。RNA-seqでは、発がん性陽性CNTで免疫・炎症応答、白血球遊走、サイトカイン・ケモカインシグナル、補体系/凝固系、貪食―リソソーム系等が富化し、Spp1、Ccl2、Mmp12が候補マーカーとして抽出・検証された。これらはマクロファージ/ケモカイン系を中心とした炎症性微小環境形成および組織リモデリングを反映し、発がん性陽性CNTに特徴的な短期KE候補と考えられた。DHPN/NNKとの比較からは、CNT発がんでは変異原性を基盤とする化学発癌とは異なり、炎症持続化、異物応答、組織傷害・修復反応の反復が重要である可能性が示された。全ゲノム解析では、DHPN/NNK誘発腫瘍でストランドバイアスを伴う変異シグネチャーが認められた一方、CNT由来腫瘍では明確ではなく、CNT発がんはDNA直接作用のみでは説明しにくい可能性が支持された。RAW264.7細胞では高濃度条件でCcl2発現上昇を認めた。
結論
本年度は、TIPS法で得られた104週発がん性を基準として、腫瘍発生前段階で検出可能な短期KE候補を整理した。増殖活性、DNA損傷、酸化・炎症関連DNA損傷、マクロファージ/ケモカイン系を中心とした炎症・自然免疫応答および組織改変は、CNT発がん性を反映する重要な短期反応である。特に、Spp1、Ccl2、Mmp12等の候補マーカーは、発がん性陽性CNTに共通する反応を捉える指標として有用である。本成果は、短期in vivo評価とin vitro評価系の妥当性確認に用いるin vivo参照軸となり、ナノマテリアルのリスク評価、試験法標準化およびOECD TG/IATAへの接続を検討するための基盤情報となる。

公開日・更新日

公開日
2026-06-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-06-11
更新日
-

文献情報

文献番号
202525002B
報告書区分
総合
研究課題名
ナノマテリアルの有害性評価を迅速化・高度化する短期経気管肺内噴霧暴露評価系およびin vitro予測手法の開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
23KD1002
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
内木 綾(公立大学法人 名古屋市立大学 大学院医学研究科 実験病態病理学)
研究分担者(所属機関)
  • 戸塚 ゆ加里(星薬科大学 衛生化学)
  • 梯 アンナ(大阪公立大学 大学院医学研究科)
  • 津田 洋幸(公立大学法人 名古屋市立大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
カーボンナノチューブ(CNT)を含むナノマテリアルは、軽量・高強度などの有用性から利用拡大が見込まれる一方、吸入暴露により肺・胸膜中皮に慢性炎症、組織傷害および発がん性を誘発する可能性がある。従来の吸入暴露試験は長期・高額で大規模施設を要するため、3Rに配慮しつつ発がん性リスクを見据えた実用的な評価体系の確立が課題である。本研究では、経気管肺内噴霧投与(TIPS)法を用い、CNTの長期発がん性(104週)に裏付けられた短期有害性指標およびAdverse Outcome Pathway(AOP)のKey Event(KE)候補を同定し、短期in vivo評価と将来的なin vitro評価系を接続するためのin vivo参照軸を構築することを目的とした。さらに、発がん性陽性CNT、陰性CNTおよび化学発癌物質を比較し、CNT発がんに特徴的な機序を整理した。
研究方法
F344雄性ラットに、発がん性陽性対照であるMWCNT-7、MWCNT-Nと、発がん性が未知であったSWCNTをTIPS投与し、4、13、52、104週に肺および胸膜中皮を解析した。肺・胸膜中皮の腫瘍性病変、肺胞マクロファージ集積、肺胞上皮増殖活性(Ki67)、DNA損傷(γH2AX)、酸化的DNA損傷(8-OHdG)、炎症関連DNA損傷(8-NG)および炎症性遺伝子発現を評価し、長期発がん性に先行して検出可能な反応を経時的に整理した。さらに、発がん性陽性CNT、発がん性陰性CNT(CNH、CNB)および化学発癌物質(DHPN/NNK)を比較対象として、投与後早期肺組織のRNA-seq、GO/KEGG解析およびqRT-PCRを行い、発がん性の有無を分ける共通経路と候補マーカーを抽出した。加えて、CNTおよび化学発癌物質誘発腫瘍の全ゲノム解析により変異シグネチャーとストランドバイアスを比較し、RAW264.7マクロファージ細胞を用いてin vivoで抽出された炎症性応答のin vitro再現性を検討した。
結果と考察
MWCNT-7およびMWCNT-Nでは胸膜中皮腫を含む発がん性が確認され、SWCNTは肺発がん性を示す一方、本試験条件下では胸膜中皮腫誘発性は明確には支持されなかった。これにより、CNT種、物性、形状により標的臓器や発がんプロファイルが異なる可能性が示された。短期指標では、Ki67およびγH2AXが複数CNTで投与後4週から上昇し13週まで持続し、腫瘍発生前段階のスクリーニング指標として有用であった。8-OHdGは主にMWCNT群で上昇し、8-NGはSWCNT群で早期から持続的に増加するなど、ROS/RNSを介する傷害様式にはCNT種間の差異が認められた。Ccl2/Ccl3は複数CNTで共通して上昇し、Il-1b/TnfaはMWCNT-NおよびSWCNTなど高発がん感受性群で持続的に上昇した。RNA-seq解析では、年度により比較対象は異なるものの、発がん性陽性CNTに共通して、免疫・炎症応答、白血球遊走、サイトカイン・ケモカインシグナル、補体系/凝固系、貪食―リソソーム系が富化した。Spp1、Ccl2、Mmp12等は、マクロファージを中心とした炎症性微小環境形成および組織リモデリングを反映する候補マーカーとして抽出・検証された。全ゲノム解析では、DHPN/NNK誘発肺がんでDNA付加体形成を示唆するストランドバイアスを伴う変異シグネチャーが認められた一方、CNT由来腫瘍では明確なストランドバイアスは認められなかった。この結果は、CNT発がんがDNA直接作用のみでは説明しにくく、炎症持続化、異物応答、組織傷害・修復反応の反復を介する腫瘍促進が重要である可能性を支持する。RAW264.7細胞では高濃度条件でCcl2発現上昇を確認し、in vivo反応の一部を培養系で検出できる可能性が示された。
結論
本研究では、TIPS法によりCNTの長期発がん性と腫瘍発生前段階で観察可能な短期KE候補を接続し、発がん性陽性・陰性CNTおよび化学発癌物質との比較により、CNT発がんに関わる炎症・自然免疫応答、DNA損傷、組織改変および直接遺伝毒性との差異を整理した。得られた短期KE候補と候補マーカーは、短期in vivo評価、in vitro評価系の妥当性確認、被験物質の優先順位付け、ナノマテリアルのリスク評価およびOECD TG/IATAへの接続を検討するための基盤情報となる。特に、長期発がん性に裏付けられたin vivo参照軸を提示したことにより、3Rを意識した短期・簡便な評価体系への展開可能性が示された。

公開日・更新日

公開日
2026-06-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-06-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202525002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
TIPS法により、CNTの104週長期発がん性と腫瘍発生前段階で検出可能な短期有害性指標を対応づけた。Ki67、γH2AX、8-OHdG、8-NG、Spp1、Ccl2、Mmp12等を短期KE候補として整理し、CNTを参照物質としたAOP構築および発がん性予測に資する知見を得た。
臨床的観点からの成果
本研究は直接の臨床研究ではないが、CNT吸入暴露による肺発がんおよび胸膜中皮腫リスクの理解に資する基盤情報を得た。職業・環境暴露に関連する健康影響評価や、将来的な予防的リスク管理の考え方を検討する際の参考情報となる。
ガイドライン等の開発
本研究期間中にガイドライン策定には至っていないが、TIPS法で得られた長期発がん性に裏付けられた短期KE候補、候補マーカー、in vitro評価系との接続課題を整理した。今後、OECD TG化およびIATAへの組込みを検討する際の基盤資料となる。
その他行政的観点からの成果
SWCNTの肺発がん性、MWCNTとの発がんプロファイル差、発がん性陽性・陰性CNTを分ける短期指標を整理した。本成果は、CNTを参照物質とした短期評価系の基盤情報であり、今後、非CNTを含むナノマテリアルへの応用可能性を検討する上で、リスク評価や優先順位付けに資する。
その他のインパクト
病理解析、RNA-seq、qRT-PCR、全ゲノム解析、in vitro試験を統合し、CNT発がんを多面的に評価する基盤を構築した。長期発がん性に裏付けられたin vivo参照軸は、今後、非CNTを含むナノマテリアル評価へ展開する際の比較基準となり得る。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
20件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
39件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2026-06-11
更新日
-

収支報告書

文献番号
202525002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
19,138,000円
(2)補助金確定額
19,138,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 8,867,687円
人件費・謝金 1,904,315円
旅費 176,702円
その他 3,773,296円
間接経費 4,416,000円
合計 19,138,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2026-06-11
更新日
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