遺伝性鉄芽球性貧血の診断分類と治療法の確立

文献情報

文献番号
201024131A
報告書区分
総括
研究課題名
遺伝性鉄芽球性貧血の診断分類と治療法の確立
課題番号
H22-難治・一般-076
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
張替 秀郎(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 小澤敬也(自治医科大学 医学部)
  • 土屋滋(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 小島勢二(名古屋大学 大学院医学系研究科)
  • 伊藤悦朗(弘前大学 大学院医学系研究科)
  • 真部淳(聖路加病院 )
  • 古山和道(東北大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
13,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
鉄芽球性貧血は、骨髄における環状鉄芽球の出現を特徴とする難治性貧血であり、遺伝性鉄芽球性貧血と、骨髄異形成症候群をはじめとする後天性鉄芽球性貧血に大別される。遺伝性鉄芽球性貧血は希少疾患であるため、調査研究が行われたことはなく、その疫学や病態は不明である。本研究の目的は、遺伝性鉄芽球性貧血の発症頻度・病態を明らかにし、遺伝性鉄芽球性貧血の診断および治療指針を確立することである。
研究方法
予備調査で鉄芽球性貧血の症例が確認された施設に対し、臨床病態を解析するための一次調査を依頼する。一次調査にて遺伝性鉄芽球性貧血と診断した症例を二次調査の対象とし、遺伝性鉄芽球性貧血の原因遺伝子の変異解析を行う。
結果と考察
2000年以降に鉄芽球性貧血と診断した症例の有無について確認する予備調査を行ったところ、全国で計299例の鉄芽球性貧血症例が確認された。この予備調査で鉄芽球性貧血の症例が確認された施設に対し、臨床病態を解析するための一次調査を依頼した。その結果本年度研究終了時点で、134例のデータが回収された。一次調査で得られたデータを解析した結果、MDS-RCMD 68例、MDS-RARS 40例、MDS-RAEB 9例、遺伝性鉄芽球性貧血 17例の診断に至った。遺伝性鉄芽球性貧血症例17例中、新たに同定された2例を含め計8例でALAS2遺伝子の変異が認められた。その他PMPS症例が一例確認されたが、残り8例においては原因遺伝子は不明である。臨床情報を解析した結果、後天性鉄芽球性貧血群と比較して、遺伝性鉄芽球性貧血確定群で有意にMCV、ヘモグロビンは低値であり、血清鉄値は高い傾向が認められた。これらの結果から、鉄芽球性貧血の中でも、小球性貧血を呈し、血清鉄値が高い症例は遺伝性鉄芽球性貧血が強く疑われることが明らかとなった。また、本邦で認められた遺伝性鉄芽球性貧血の遺伝子変異はALAS2遺伝子のみであり、欧米で比較的頻度が高くみられるSLC25A38遺伝子の変異は認められなかった。この結果から、遺伝性鉄芽球性貧血の原因遺伝子は地域間、人種間で異なることが示唆される。
結論
本邦において、300例に上る鉄芽球性貧血症例が存在することが明らかとなった。このうち遺伝性鉄芽球性貧血は17例が確認され、現時点で確認し得た変異遺伝子はALAS-2遺伝子のみであった。今後変異遺伝子が不明の症例の解析から、新たな遺伝性鉄芽球性貧血の原因遺伝子が同定されることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024131Z