マイクロスフェアー利用による経口感作増強型インフルエンザワクチンの開発

文献情報

文献番号
199700809A
報告書区分
総括
研究課題名
マイクロスフェアー利用による経口感作増強型インフルエンザワクチンの開発
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
内田 享弘(武庫川女子大学・薬学部・助教授)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 新興・再興感染症研究事業
研究開始年度
-
研究終了予定年度
-
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 我々は数年来、蛋白、ペプチドなど生理活性物質のデリバリーシステムとしてのマイクロスフェアー製剤(以下、MSと略)の調製とその応用に興味をもち鋭意検討を進めてきた。すでにモデル蛋白であるOvalbuminを含有した生体分解性MS(直径1~5μm)をマウスに単回経口ならびに皮下注射することにより、対照の抗原水溶液投与や市販のアジュバントに比較し著しく血漿中IgA, IgG抗体価を上昇させるという優れたワクチン効果を確認している。
インフルエンザのHA1抗原のなかからThに抗原提示出来るエピトープ(120-139)が含まれており免疫原性を向上させることが期待できるペプチド抗原(35塩基)を合成し、この抗原をマイクロスフェアー中に安定に封入することを研究の目的とする。スフェアーの粒子径などの製剤側の要因と抗体価の関係を精査し最適化を計る。高性能顕微鏡によるMSのパイエル板への取り込みの観察や、マイクロダイアリシス法によるパイエル板やリンパ組織への移行量を評価して、in vivo-in vitro相関性の確立を試み本システムの免疫化機構を総合的に探ることを最終目的とする。
研究方法
 更に本システムを、不安定な水溶性巨大抗原分子(分子量約360万)である組換え型ヒトB型肝炎コア抗原粒子(以下HBc抗原と略)に敷衍しすることにも成功し本システムの繁用性はかなり確認されている。インフルエンザウイルスのHANA抗原のうちHA1抗原の、領域Aと領域Bの半分をカバーする種々のペプチドを対象とした。この中にはBALB/cとCBAマウスでThに抗原提示出来るエピトープ(120-139)が含まれており免疫原性を向上させることが期待できる。また、ペプチドには中和抗体が結合するエピトープが分布する領域を含み種々の長さの変異部位と不変部位が散
在することになる。研究者らは特にこの中から35塩基(下記参照)のペプチドを合成しモデル抗原とした。さらにこの水溶性ペプチドを我々が考案したw/o/w型複合エマルション溶媒留去法で粒子系10μm以下の生体分解性MS中へこのペプチドの封入を試みた。
結果と考察
 並びに結果検討の際、外水相に従来の0.5%ポリビニールアルコール溶液中にNaClを封入することで飛躍的に水溶性ペプチドの封入率を向上できた。これは外水相に浸透圧が加わったことと膜安定化効果により現象と推察された。現在このペプチド単独、マイクロスフェアー化ペプチドやCFA化ペプチドのマウスやラットに経口、皮下投与後4、6、8、12週間後採血して抗体価を測定予定である(今年7月に完了予定)。ラットのパイエル板にマイクロダイアリシスにより環流したところ少ないながら抗原の移行が認められた。投与後4週の血清中IgGの測定結果では、マイクロスフェアー化抗原皮下投与ではではある程度の抗体価の上昇を認めている。経口投与に於いても更に観察を継続しているが、この事実はパイエル板へ抗原移行と相関することが明らかになった。 
今後抗体価の測定に続く野生株でのチャレンジはA/Udorn/307/72 (H3N2)で行う予定である。
ペプチド配列:FISEG FTWTG VTQNG GSNAC KRGPD SGFFS RLNWL
結論
 ペプチドの分子量は在る程度大きいもののパイエル板への移行が観察され、マイクロスフェアー化により取り込み率は上昇した。血中抗体価の更なる測定を今後予定しているが、上記モデル抗原とそのマイクロスフェアー化で経口免疫の可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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