国際流通する偽造医薬品等の実態と対策に関する研究

文献情報

文献番号
202524026A
報告書区分
総括
研究課題名
国際流通する偽造医薬品等の実態と対策に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23KC2007
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
吉田 直子(金沢大学 医薬保健研究域薬学系)
研究分担者(所属機関)
  • 前川 京子(同志社女子大学)
  • 小出 達夫(国立医薬品食品衛生研究所 薬品部)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
2,501,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
偽造医薬品対策として、医薬品の個人輸入代行業者に着目するとともに、個人輸入が濫用等のおそれのある医薬品の入手ルートになる可能性を踏まえ、インターネットを介して国際流通する医薬品の実態や国際的規制の動向を明らかにすることにより、より効果的な啓発と対策の強化に資するため、本年度は、①医薬品等の個人輸入代行に係る規制状況調査(規制調査)、②偽造医薬品による健康被害に関する調査、③インターネットを介して個人輸入される医薬品の実態調査(試買調査)を行うとともに、④新たな実態調査手法として、アンケートと消費者の手元にある製剤の画像収集を試み、国際流通するGLP-1受容体作動薬の国内侵入実態調査(アンケート調査)を行った。
研究方法
①医薬品個人輸入代行業者の資格要件について、オーストラリア、カナダおよび中国を対象に調査した。②2025年度中に論文として報告された偽造医薬品による健康被害事例について、PubMedをデータソースとして情報を収集した。また、WHOや政府発表の偽造医薬品による健康被害に関する報告を抽出した。③2023年度に試買したフォシーガ10mg錠について、真正性調査を行った。2024年度に入手したリベルサス錠について、液体クロマトグラフィー-質量分析を用いて主薬成分である高分子化合物セマグルチドの測定条件を検討し、定量を行った。また、新たに、医療ダイエット等と称した適応外使用等が問題となっている肥満症治療薬ウゴービを対象に、個人輸入代行サイトを介して試買調査を実施した。④インターネット調査会社登録会員(20-49歳)を対象にアンケート調査を実施し、GLP-1受容体作動薬の入手方法等の情報をと入手製品の画像を収集し、外観観察と真正性調査を行った。
結果と考察
①自己使用のために、少量の医薬品を郵送により国外から取り寄せる個人輸入はオーストラリア、カナダ訪問者、及び中国で認められていた。オーストラリア、カナダ、中国では医薬品個人輸入代行業者には免許や資格要件、その他個人輸入に関連する特段の規制は薬事関係法令では見受けられなかった。②英語で書かれた論文527件のうち偽造医薬品に関する67件の内容を確認し、偽造医薬品による健康被害の内容が記載された論文は2件を特定した。ノルウェーにおけるオキシコドンと誤認した偽造錠剤(エトニタゼピン含有)による死亡事例、ならびに医療機関の管理下ではない状況でオンライン購入したセマグルチドを自己判断で使用し、正常血糖性ケトアシドーシスを発症した事例について報告されていた。WHO Medical Product AlertsとUS-FDA Drug Alerts and Statemenにおいて、健康被害に関する情報は発出されていなかったが、United States Drug Enforcement Administrationにおいて、偽造医薬品による健康被害の内容が記載された事例が3件(偽造オキシコドン錠、フェンタニルを含む偽造「M30」錠、およびフェンタニルを含む偽造オキシコドンの過剰摂取による死亡例)が報告されていた。③本研究で入手したフォシーガ錠は、製造販売業者における真贋判定において、すべて真正品であることが確認された。試買により入手したリベルサス錠4種におけるセマグルチド含量は97.3〜143.3%とばらつきがみられ、定量法の再検討の必要性が示された。ウゴービについて、個人輸入代行サイト(2 サイト)から、処方箋の提示なしで、ウゴービ 2.4 mg製剤を3サンプル入手し、すべて真正品であることが確認された。販売価格は約8万円/本と高額であった。④スクリーニング調査において、GLP-1受容体作動薬の使用経験者の一部は、個人輸入代行サイト、フリマサイト、SNS等を介して入手したと回答した。画像収集調査では、提供された製品はすべて日本語表記であり、今回調査対象となった一般消費者が所持する範囲において国外市場向け製品の国内侵入は確認されなかった。
結論
オーストラリア及びカナダ並びに中国では医薬品個人輸入の発注に介在する個人輸入代行業者に対して、特別の規制は設けられていなかった。偽造医薬品による健康被害として、偽造オピオイド等による死亡事例の他、美容目的で使用される医薬品の不適正使用による健康被害事例が新たに収集された。本研究で入手した個人輸入医薬品に明らかな低品質・偽造医薬品の混在は確認されていないが、世界的には偽造医薬品の出現が報告されていることから、販売者に対する監視・指導に加え、国民に対する情報提供や実効性のある注意喚起の必要性が示された。アンケート調査において国外市場向け製品の直接的流入は確認されなかったが、アンケートと画像収集を併用することにより、国民の使用実態を把握できることが示された。

公開日・更新日

公開日
2026-07-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
その他
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2026-07-16
更新日
-

文献情報

文献番号
202524026B
報告書区分
総合
研究課題名
国際流通する偽造医薬品等の実態と対策に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23KC2007
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
吉田 直子(金沢大学 医薬保健研究域薬学系)
研究分担者(所属機関)
  • 前川 京子(同志社女子大学)
  • 小出 達夫(国立医薬品食品衛生研究所 薬品部)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
偽造医薬品対策として、医薬品の個人輸入代行業者に着目し、個人輸入が濫用等のおそれのある医薬品の入手ルートとなる可能性を踏まえ、インターネットを介した国際流通医薬品の実態と国際的規制動向を明らかにし、啓発・対策強化に資するため、①個人輸入代行に係る規制調査、②偽造医薬品による健康被害調査、③医薬品濫用による健康被害調査、④個人輸入医薬品の実態調査(試買)を実施した。加えて、⑤アンケートと製剤画像収集によりGLP‑1受容体作動薬の国内侵入実態調査を行い、⑥カンボジア流通痩身サプリの含有成分探索、⑦偽造医薬品取扱個人輸入代行サイトの推定を試みた。
研究方法
① 医薬品個人輸入代行業者の資格要件をフランス、米国、ドイツ、英国、豪州、カナダ、中国で調査した。
② 2023–2025年度に論文報告された偽造医薬品による健康被害情報、WHO Medical Product Alertsおよび政府発表情報を収集した。
③ 2023年度末までに日本語原著論文として報告された医薬品濫用による健康被害情報を収集した。
④ デキストロメトルファン製剤、ジフェンヒドラミン製剤、フォシーガ錠、リベルサス錠、ウゴービ皮下注を対象に、試買調査を実施した。
⑤ インターネット調査会社登録会員を対象にアンケートを実施し、GLP-1受容体作動薬の入手方法等と製品画像を収集し、外観を観察した。
⑥ シブトラミン含有が確認されたダイエットサプリメントについて、LC/MSにより未知成分の同定を試みた。
⑦ 2022年度までに収集した個人輸入医薬品212検体について、代行サイト記載情報を収集し、偽造医薬品取扱サイト推定法を提案し、新たに入手したリベルサス錠で検証・データ追加を行った。
結果と考察
① 医薬品の輸入には政府許可が必要だが、自己使用の少量については各国条件下で個人輸入が可能であった。ただしカナダ居住者には処方箋薬の個人輸入は認められていなかった。個人輸入代行業者について、フランスでは届出・記録・回収義務、ドイツ・英国では存在を認めていなかった。米国・豪州・カナダ・中国では薬事関連法規や関税法で資格要件や許可制は設けられていなかった。
② 英語論文1420件中、偽造医薬品159件から健康被害9件を検出。9件中6件が偽造オピオイドで、うち5件は米国または北欧の死亡例。その他、偽カリソプロドール、偽ボツリヌス毒素、非管理下でオンライン購入したセマグルチドによる被害が報告された。WHOおよびUS-FDAのAlertでは健康被害情報は未発出だが、DEAで偽造オピオイドの被害5件が報告された。
日本語論文268編から症例199件、OTCによる健康被害39件以上が検出された。過剰摂取による致死例も見られ、販売・購入規制については個人輸入経路も含め慎重な検討が必要と考えられる。
④処方箋医薬品は約1か月分を処方箋なしで、OTCは1–2か月分を本人確認なしで入手可能であった。処方箋医薬品は真正品、OTCは真正性不明だが含量に顕著な過不足は認められなかった。
⑤ GLP-1受容体作動薬は一部が個人輸入代行・フリマ・SNS等で入手とされたが、国外市場向け製品の国内侵入は確認されなかった。
⑥ LCMS8060の選択反応モニタリング法により、ダイエットサプリメント中の未知成分としてN-デスメチルシブトラミンの含有を確認。
⑦ 個人輸入代行サイト情報から偽造医薬品取扱サイトの特徴を抽出し、分類・予測モデルを提案。リベルサス錠を正しく予測した。
結論
医薬品個人輸入に介在する代行業者については、存在を認めない国、医薬品関連法で規制する国、特段の規制がない国と対応が分かれた。2023–2025年度の偽造医薬品による健康被害として、偽造オピオイドによる死亡例のほか、美容目的医薬品の不適正使用事例が報告されていた。国内では医薬品濫用による健康被害として、ジフェンヒドラミン製剤の濫用による致死例等が報告され、当該製品は個人輸入で大量入手が可能であるため、OTC医薬品の販売・購入規制について個人輸入経路も含め慎重な検討が必要と考えられた。試買調査では明らかな低品質・偽造医薬品の混在は確認されなかったが、世界的には偽造医薬品の出現が報告されており、未報告事例の存在も推察されることから、販売者の監視・指導と国民への情報提供・注意喚起の必要性が示された。アンケート調査では国外市場向け製品の直接流入は確認されなかったが、アンケートと画像収集の併用により使用実態把握が可能と示された。今後増加が見込まれる高分子医薬品の品質試験や未知成分の同定にはLC/MSが有力であり、新規偽造・未承認医薬品の同定や起源解明に資する継続的取組が必要と考えられた。また、本研究の偽造医薬品取扱サイト推定法については、データ拡充により精度向上を図り、監視・指導等での活用が期待される。

公開日・更新日

公開日
2026-07-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
その他

公開日・更新日

公開日
2026-07-16
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202524026C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究は、医薬品の個人輸入に関する規制、健康被害、流通実態を多面的に解析した。諸外国の規制、文献調査から偽造オピオイドやOTC過量摂取による健康被害事例を確認した。試買調査により医薬品入手の容易性を明らかにし、統計解析によって偽造医薬品取扱サイトの特徴抽出と予測モデルを構築した。これらの成果は、偽造医薬品や濫用リスクを明確化し、規制強化に資する科学的根拠を提示するものである。さらに、偽造医薬品取り扱いサイト予測モデルや実態把握手法は、監視体制の強化と消費者・国民の保護に貢献することが期待される。
臨床的観点からの成果
該当しない
ガイドライン等の開発
医薬品の個人輸入については、全国薬務関係主管課長会議(R5, R6, R7年度)議題に挙がっており、本研究班は、関連知見を集積・提供することにより、対策強化・更新を支援する。
その他行政的観点からの成果
本研究で考案された偽造医薬品取り扱いサイトの予測モデルは、今後継続的に情報を追加し、見直しを行うことにより、より的確な監視・指導の対象となる個人輸入代行サイトの検出に貢献する。
その他のインパクト
本研究成果について、地方衛生研究所全国協議会東海北陸支部衛生化学部会(2024.2.9)における講演や総説(吉田直子: 偽造医薬品の脅威. Precision Medicine 7(12): 53-58 (1001-1006), 2024等)を通して、情報を発信した。マスメディアからの取材依頼に応じる等、医薬品個人輸入に関する情報提供を行った(テレビ報道2件)。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件
総説2件、講演1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yoshida N, Maeda S
Development of a visual inspection method for identifying falsified medicines obtained by personal import via the Internet.
BPB Reports , 8 (2) , 27-37  (2025)
doi.org/10.1248/bpbreports.8.2_27

公開日・更新日

公開日
2026-07-14
更新日
-

収支報告書

文献番号
202524026Z