文献情報
文献番号
202524014A
報告書区分
総括
研究課題名
指定薬物の指定に係る試験法の妥当性評価に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
25KC1002
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 勉(湘南医療大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和7(2025)年度
研究終了予定年度
令和9(2027)年度
研究費
3,360,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
指定薬物は薬物による中枢興奮や抑制作用を実験動物の自発運動を含む一般行動観察、脳内アミン量の変化、受容体結合実験などの結果から指定が行われているが、幻覚作用の評価は非常に困難である。これまで、幻覚発現薬の評価には、マウスによる head-twitching response(HTR)が主に用いられているが、その判別が困難である等から評価法の改良や新たな評価法の開発が求められている。市場に次々と出回る幻覚発現薬物を速やかに評価して、規制に繋げるためには、精度が高く、簡便で迅速な評価法の開発や各評価法の適正を明らかにすることが望まれる。そこで本研究では、幻覚発現薬の指定に資する評価法の妥当性や評価法の改良・機械化を検討する。
研究方法
本研究では、指定薬物のうち幻覚発現作用を有する薬物に対する迅速かつ客観的な評価法の構築を目的として、行動薬理学的解析、脳活動解析、薬物弁別試験および化合物合成を組み合わせた多面的検討を行った。研究-1では、κオピオイド受容体作動薬 U50,488H および 5-HT2A/2C 受容体作動薬 DOI を用い、ICR 系雄性マウスに対して条件づけ場所嫌悪性試験(CPA)およびガラス玉覆い隠し試験を実施した。研究-2では、DOI により誘発される Head Twitch Response(HTR)の自動測定系構築を目的として、マグネットメーターを作製し、ビデオ解析との相関性を検証した。また、5-HT2A 受容体拮抗薬 MDL100907 を用いた薬理学的検証および c-Fos 発現解析を行った。研究-3では、κオピオイド受容体作動薬 U50,488H の合成および光学分割を実施した。研究-4では、フェニルピペラジン誘導体について MDMA 弁別試験および自発運動測定を行い、乱用予測評価法の妥当性を検討した。研究-5では、DOI、U50,488H およびデキストロメトルファン投与後の異常行動として伏臥位に着目し、再現性および用量反応性を解析した。研究-6では、ketamine 投与後の c-Fos 発現変化を解析し、行動薬理学的変化との関連性を検討した。
結果と考察
研究-1では、U50,488H および DOI において CPA が認められ、幻覚発現関連薬物が嫌悪効果を伴う可能性が示唆された。また、ガラス玉覆い隠し試験においても両薬物投与後に行動変化が認められ、幻覚発現に伴う情動・認知変化を反映している可能性が考えられた。さらに DOI では、条件づけ終了後も変化が持続し、情動面への影響が強い可能性が示された。研究-2では、マグネットメーターによる HTR 自動測定系を確立し、ビデオ解析との間に高い相関性(r2=0.9936)が認められた。また、DOI 誘発 HTR は 5-HT2A 受容体拮抗薬により抑制され、前頭前野における c-Fos 発現増加も確認されたことから、HTR が幻覚様作用を反映する指標であることが示唆された。研究-3では、(±)-U50,488H の合成に成功し、さらに光学分割により部分的に光学純度を有する (−)-U50,488H を得た。研究-4では、phenylpiperazine 誘導体の一部が MDMA 様弁別刺激効果を示した一方、自発運動への影響とは一致しない結果も認められたことから、複数行動指標を組み合わせた評価の必要性が示された。研究-5では、伏臥位行動に再現性および用量反応性が認められ、幻覚発現薬に共通した行動指標となる可能性が考えられた。研究-6では、ketamine 投与後に複数脳領域で c-Fos 発現増加が認められ、幻覚発現薬ごとに特徴的な脳活動パターンが存在する可能性が示唆された。
結論
本研究では、幻覚発現薬の迅速かつ客観的評価法の構築を目的として、多面的な解析を実施した。その結果、CPA、ガラス玉覆い隠し試験、HTR 自動測定、伏臥位解析などの行動薬理学的指標が、幻覚発現に伴う情動・認知変化を反映する可能性が示唆された。また、c-Fos 発現解析により、行動変化と脳活動との関連性も明らかとなった。さらに、薬物弁別試験や化合物合成を組み合わせることで、指定薬物の作用特性を多面的に評価できる可能性が示された。今後は、各指標の妥当性をさらに検証するとともに、脳活動解析や三次元行動解析等を統合した高精度な評価体系を構築することで、指定薬物規制に資する科学的根拠の確立につながることが期待される。
公開日・更新日
公開日
2026-05-26
更新日
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