文献情報
文献番号
201024117A
報告書区分
総括
研究課題名
家族性良性慢性天疱瘡(Hailey-Hailey病)の診断基準作成とATP2C1遺伝子解析に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H22-難治・一般-062
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
橋本 隆(久留米大学 医学部・皮膚科学教室)
研究分担者(所属機関)
- 安元 慎一郎(久留米大学 医学部・皮膚科学教室 )
- 名嘉真 武国(久留米大学 医学部・皮膚科学教室)
- 辛島 正志(久留米大学 医学部・皮膚科学教室)
- 濱田 尚宏(久留米大学 医学部・皮膚科学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
家族性良性慢性天疱瘡(Hailey-Hailey病、以下HHD)は常染色体優性遺伝性角化症である。間擦部に疼痛を伴うびらん・水疱を認め、患者の日常生活は著しく障害される。病因はATP2C1遺伝子によりコードされるSPCA1と呼ばれるゴルジ装置のカルシウムポンプであることが明らかにされている。本研究ではHHDの症例について、それらの診療情報を詳細に検討すると共にATP2C1遺伝子検索を行い、得られた結果に基づいて診断基準作成と遺伝子変異の種類・部位と臨床的重症度との相関について明らかにすることを目的とした。
研究方法
22名のHHD患者について検討した。[診療情報] 家族歴・発症時期・皮膚病変の重症度などについて調べた。[ATP2C1遺伝子検査] 患者検体から抽出したゲノムDNAを用いて、PCR法・DGGE法・ダイレクトシークエンス法により遺伝子変異を検出した。さらに、患者皮膚から抽出したRNAやタンパク質の発現様式について検討した。[遺伝子異常の部位・種類と臨床的重症度との相関] 実験結果と臨床症状とを併せて検討することで遺伝子異常の部位・種類と臨床的重症度との相関について検討した。結果をとりまとめて診断基準の作成準備を行った。
結果と考察
ほとんどの症例が青年期以降に発症し、間擦部に限局して小水疱とびらんを繰り返す臨床像であった。全身皮膚に多発する重症例と頚部にのみに皮疹がみられる軽症例が各1例ずつ認められた。ATP2C1遺伝子検査では、全ての症例において変異を検出し15個が新規のものであったが、変異には多様性があり、過去の報告と同様に遺伝子変異の部位・種類と臨床的重症度との相関は明らかにできなかった。患者皮膚におけるATP2C1遺伝子は発現低下が認められた。HHDの診断基準については現在、作成準備中である。
結論
HHDは稀少疾患であるため、疫学や症状、治療などについて十分な検討がなされてこなかった。頑固な皮膚症状により日常生活は著しく障害されるが、本症の社会的認知度は低く、サポート体制も十分ではない。本研究ではHHD 22症例について、診療情報を検討するとともにATP2C1遺伝子検査を行った。成果をもとに診断基準の作成準備中である。診断基準により、適切な治療が選択され、症状が速やかに改善すれば、本症にかかる医療費は軽減することが期待される。また、診断基準の公開で民間にも関心が高まり、支援や環境整備が進む可能性がある。
公開日・更新日
公開日
2011-12-27
更新日
-