さまざまな類天疱瘡の疾患群の抗原の詳細な解析と新しい検査法の開発による診断基準の作成

文献情報

文献番号
201024116A
報告書区分
総括
研究課題名
さまざまな類天疱瘡の疾患群の抗原の詳細な解析と新しい検査法の開発による診断基準の作成
課題番号
H22-難治・一般-061
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
橋本 隆(久留米大学 医学部・皮膚科学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 安元 慎一郎(久留米大学 医学部・皮膚科学教室 )
  • 名嘉真 武国(久留米大学 医学部・皮膚科学教室 )
  • 辛島 正志(久留米大学 医学部・皮膚科学教室 )
  • 濱田 尚宏(久留米大学 医学部・皮膚科学教室 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
自己免疫水疱症は表皮の構成蛋白に対する自己抗体により皮膚に水疱を形成する皮膚疾患で、正確な診断のもとに適正な治療を行わないと死に至る重要な皮膚疾患である。また、その抗原も同定され、血中自己抗体が病変を形成することが動物実験で証明された唯一の疾患である。各種の類天疱瘡の研究は、自己免疫発症機序の解明のパラダイムとなる可能性がある。今回の研究の目的はすべての類天疱瘡群の疾患の抗原を同定し、その蛋白を用いた診断システムを確立することである。プロテオミクスの手法を用いて、現在まで未知である自己免疫性水疱症の抗原を同定し、その蛋白を用いた抗原検出法を確立し、自己免疫性水疱症の完全な診断システムを確立する。
研究方法
当該研究施設で診察している患者から定期的に凍結生皮膚試料と血清試料を集める。さらに、国内外の施設から送付された多くの試料を集める。そして、本施設で過去20年以上にわたって渉猟してきたサンプルとあわせて世界有数の生体試料バンクを構築する。その後、この生体試料バンクを利用し、プロテオミクス手法を用いて、現在まで未知の類天疱瘡群疾患の抗原を同定し、その蛋白を用いた抗原検出法を確立する。最終的に、すべての類天疱瘡群疾患の完全な診断システムを確立する。
結果と考察
研究期間中に、当該研究施設および国内外の施設の各種の自己免疫性水疱症患者から、約500検体の凍結皮膚試料と約1.500検体の血清を渉猟した。そして、各種の類天疱瘡群疾患において、多くの未知の抗原をプロテオミクス法で同定した。その中には、ラミニンガンマ1、アルファ6インテグリン、ベータ4インテグリンなどがある。また、すでに、VII型コラーゲン、ラミニン332、LAD-1、ラミニンガンマ1などの新しいELISAを作成した。
結論
今回の研究では、各種の類天疱瘡群疾患の多くの自己抗原をすべて同定し、そのcDNAを単離してリコンビナント蛋白を作成した。そして、その蛋白を用いた新しい診断法を確立し今まで不可能であった類天疱瘡群疾患を診断できるようになった。このシステムで類天疱瘡群疾患が確実に診断され、適切な治療が施されるようになった。また、この研究の副次的産物として、デスモソームとヘミデスモソームの新しい構成蛋白が同定され、基礎的な細胞生物学の発展へとつながった。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201024116C

成果

専門的・学術的観点からの成果
今回の研究で、異なった類天疱瘡群疾患の多数の自己抗原を同定し、さらに、そのcDNAを単離しリコンビナント蛋白を作成した。その蛋白を用いた免疫ブロット法とELISA法を確立し、各種の類天疱瘡群を診断する新しいシステムを構築することができた。また、この研究の副次的産物として、ヘミデスモソームの新しい構成蛋白が同定された。この分子の生化学的・分子生物学的検討を行うことにより、基礎的な細胞生物学の発展にも寄与することができた。以上から、学術的にも大きな貢献をした。
臨床的観点からの成果
本研究で取り扱う自己免疫水疱症である類天疱瘡群疾患は非常に難治であり、しばしば死に至る重要な皮膚疾患である。このため各種の類天疱瘡群の正確な診断は適切な治療の選択に大いに役立つ。今回開発した診断システムにより、今まで診断できなかった類天疱瘡群疾患が確実に診断できるようになり、それぞれの患者に最も適切な治療が施されることが可能となった。このように、今回の研究成果は重篤な皮膚病変に苦しむ患者の救済に大いに役立つ。この難治性の類天疱瘡群の治療が改善することは、国民の保健・医療・福祉の向上等につながる。
ガイドライン等の開発
日本皮膚科学会の依頼により、久留米大学医学部皮膚科を中心に、水疱性類天疱瘡治療ガイドライン作成委員会が招集され、本研究の主任研究者である橋本隆が委員長となって、新しいガイドラインが検討された。現在、論文化され、投稿に向けて最終的検討を行っている。同時に、本研究の主任研究者である橋本隆は、世界の水疱性類天疱瘡の重症度分類作成委員会に参加し、新しい水疱性類天疱瘡の重症度であるBPDAIの作成にあたった。現在、この論文は英文誌に投稿中である。この重症度は今後の類天疱瘡の治験の遂行に有効である。
その他行政的観点からの成果
厚生労働省難病対策班会議で、難病の天疱瘡の分野で、久留米大学医学部皮膚科を中心に類天疱瘡の研究も進められた。今後、類天疱瘡も難病に指定される可能性がある。今回の研究から、新しい診断法として、各種のELISA法が開発され、一部は、保険診療に向けて検討中である。現在、これらの疾患には多額の医療費がかかっているが、適切な治療を行なうことで、速やかな病勢の改善と、医療費の軽減が得られ、このことは厚生労働行政にも大いに益する。
その他のインパクト
久留米大学医学部皮膚科を事務局として、初めて、天疱瘡・類天疱瘡の患者会が設立され、久留米大学医学部キャンパス内で第一回の患者の親睦会と講演会が開かれ、今後、定期的な講演会が行われることになった。この中で市民公開講座も行われた。さらに、世界の天疱瘡・類天疱瘡患者会と交流することになった。また、東京で、マスコミ向けの、皮膚難病の講演会を行い、類天疱瘡に関しても、その一部がマスコミに取り上げられ、新聞および医学系雑誌に掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
35件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
19件
学会発表(国際学会等)
10件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ishii N. Hamada T, Hashimoto T, et al.
Epidermolysis bullosa acquisita: What’s new?
J Dermatol , 37 (3) , 220-230  (2010)
10.1111/j.1346-8138.2009.00799.x.
原著論文2
Dainichi T, Koga H, Hashimoto T, et al.
From anti-p200 pemphigoid to anti-laminin1 pemphigoid.
J Dermatol , 37 (3) , 231-238  (2010)
10.1111/j.1346-8138.2009.00793.x.
原著論文3
Koga H, Hamada T,Hashimoto T, et al.
Exon 87 skipping of the COL7A1 gene in dominant dystrophic epidermolysis bullosa.
J Dermatol , 38 (5) , 489-492  (2010)
10.1111/j.1346-8138.2010.01008.x. 
原著論文4
Fukuda S, Tsuruta D, Hashimoto T, et al.
Brunsting-Perry type pemphigoid with immunoglobulin G autoantibodies to laminin-332, BP230 and desmoplakins I/II.
Br J Dermatol. , 165 (2) , 433-435  (2011)
10.1111/j.1365-2133.2011.10343.x.
原著論文5
Saleh MA, Ishii K,Hashimoto T, et al.
Development of NC1 and NC2 domains of Type VII collagen ELISA for the diagnosis and analysis of the time course of epidermolysis bullosa acquisita patients.
J Dermatol Sci. , 62 (3) , 169-175  (2011)
10.1016/j.jdermsci.2011.03.003.

公開日・更新日

公開日
2014-05-21
更新日
2015-06-08

収支報告書

文献番号
201024116Z