レリーワイル症候群の実態把握と治療指針作成

文献情報

文献番号
201024115A
報告書区分
総括
研究課題名
レリーワイル症候群の実態把握と治療指針作成
課題番号
H22-難治・一般-060
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
深見 真紀(独立行政法人国立成育医療研究センター研究所 分子内分泌研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 緒方 勤(独立行政法人国立成育医療研究センター研究所 分子内分泌研究部)
  • 宮崎 治(独立行政法人国立成育医療研究センター)
  • 長谷川 奉延(慶應義塾大学 医学部)
  • 関 敦仁(独立行政法人国立成育医療研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
レリーワイル症候群 (LWS) は、生涯にわたるQOL低下を招く難病であるが、正確な発症頻度と臨床像は解明されていない。また、本症の治療法の有効性は充分検討されていない。本研究班は、これらの点を明らかとすることを目的として研究を行った。
研究方法
疫学一次調査:
関連学会と連携し、2100名の専門医を対象とした全国疫学調査を行なった。
2. 分子遺伝学的解析:
FISH法、MLPA法、アレイCGH法で解析を行い、LWSの遺伝子診断におけるこれらの方法の有効性を比較検討した。
3. 疾患重症度修飾因子の検討:
分子遺伝学的に診断された患者の臨床データの収集を開始した。
4. 画像データの解析:
遺伝子変異が同定された患者の画像データを解析し、本症診断の指標となる所見を明らかとした。
5. 現行の内科的治療の実態把握:
成長ホルモン投与の実態を調査し、その効果について検討した。
6. 新規外科的治療法の開発:
重度の骨症状を呈する患者を対象として橈骨楔状骨片組み換え法を行い、予後を検討した。
結果と考察
1. 疫学調査:
79例の患者が把握された。
2. 分子遺伝学的解析:
下記の点が明確となった。①本症の遺伝子変異には人種差があり、本邦では全エクソン欠失の頻度が比較的高いと推測される。②FISH法、MLPA法、CGH法はいずれも既報の欠失の同定に有効である。③SHOX翻訳領域外欠失の同定にはCGHが有効である。④SHOX遺伝子内点変異は、翻訳全体に広く分布する。
3. 疾患重症度修飾因子の検討:
変異陽性患者家系の解析から、SHOX全エクソン/エンハンサー領域欠失と遺伝子内点変異がほぼ同等の表現型を招く一方、思春期発来テンポが重症度を修飾することが見出された。
4. 画像データの解析:
初期の骨変化として、metaphysis透亮像とcarpal angle減少がとくに重要であることが見出された
現行治療の実態把握:
成長ホルモン投与と橈骨楔状骨片組み換え法が有効である可能性が見出された。
結論
当初予想されたより多数の患者が存在することが明確となった。本症の予後は早期治療により改善すると予想されることから、診断法と治療指針の確立は急務である。今後、本研究班では、疫学二次調査と集積されたデータの解析により、遺伝子診断システムの確立、画像診断指標の明確化、疾患重症度決定因子の解明、各治療法の適正化を行う計画である。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201024115C

成果

専門的・学術的観点からの成果
1.本研究により、本症が先天性骨形成異常症の中で頻度の高い病態であることが見出された。
2.LWSを招く遺伝子変異パターンには人種間差異が存在する可能性が見出された。このような知見は、個々の人種の遺伝学的特性の解明に貢献する。
3.本症の遺伝子異常にこれまで知られていなかった新たな微小欠失が含まれる可能性が見出された。この欠失には、SHOXエンハンサーが存在する可能性がある。この知見は、普遍的転写発現制御機構の理解の点で重要である。
臨床的観点からの成果
本研究の成果は、本症患者の早期診断に役立ち、予後改善に貢献する。また、治療指針の統一はLWSのような稀な疾患における医療の均てん化に役立つ。さらに、診断効率化と治療法の適正化は、医療コスト削減につながる。
ガイドライン等の開発
既報の欠失のすべてが1回の解析で同定できるアレイCGHシステムを構築し、これを用いて新規欠失を見出した。また、本年度の研究成果に基づき、レリーワイル症候群診断の手引き(案)を作成した。
その他行政的観点からの成果
本年度には、微小欠失同定におけるCGHの有用性が見出された。本研究では、様々な遺伝子解析技術を組み合わせた効率的遺伝子解析システムを構築する。このシステムは、他の遺伝疾患の診断にも応用可能である。
また、本研究により、LWSの診療におけるチーム医療の必要性が明確となった。このような診療体制の構築は、境界領域疾患における連携強化の観点から、他の疾患に対する診療体制のモデルとなる。
その他のインパクト
研究成果を研究班ホームページと国際SHOX変異データベース上に公表した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
研究成果を研究班ホームページと国際SHOX変異データベース上に公表した。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2016-06-20

収支報告書

文献番号
201024115Z