Ellis-van Creveld症候群の疫学調査と治療指針作成

文献情報

文献番号
201024114A
報告書区分
総括
研究課題名
Ellis-van Creveld症候群の疫学調査と治療指針作成
課題番号
H22-難治・一般-059
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
梶野 浩樹(旭川医科大学 医学部小児科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋 悟(旭川医科大学 医学部小児科学講座)
  • 中西敏雄(東京女子医科大学 医学部循環器小児科学講座)
  • 松野丈夫(旭川医科大学 医学部整形外科学講座)
  • 松田光悦(旭川医科大学 医学部歯科口腔外科学講座)
  • 水流聡子(東京大学 大学院工学系研究科 医療社会システム工学 医療管理学・医療情報学 )
  • 藤原優子(東京慈恵会医科大学 医学部小児科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
Ellis-van Creveld症候群をもって新生児期を生存できた患者は知能が正常でありながら、低身長や四肢短縮、または残存する心不全に伴う身体活動の制限によって社会生活に困難を感じながら過ごしている。その実態の解明と治療指針作成、あるいは患者支援体制の確立が本研究の目的である。
研究方法
1)アンケート方式による疫学調査:全国の小児循環器診療施設、小児専門整形外科学施設、小児歯科施設に調査用紙を郵送した。2)インターネットを介する疫学調査:インターネットを介した小児期発症心疾患実態調査の電子コンテンツを新開発し、そのシステムを用いて本症候群患者の疫学調査を実施した。3)遺伝子解析:本症候群の原因遺伝子EVC・EVC2遺伝子の解析を施行した。各地の病院で採血された検体からDNAを抽出し、両遺伝子の全exonをdirect sequence法で解析した。
結果と考察
一次アンケート調査では、254/443施設の回答があった。回答のあった施設でこの10年間に診療した患者数は20例で、二次アンケート調査で情報が集まった患者は9例のうち10歳以下の患者は3例であったことを考慮すると、わが国における本症候群患者発生数は10万人当たり約0.1人と推定できた。期間中にインターネットによる登録患者はなかった。
遺伝子異常として、既報の2変異と新規変異の可能性が考えられる4変異を検出した。10例中4例にEVC遺伝子変異が認められ、3例にEVC2遺伝子変異が認められた。遺伝子変異が確認できた患者においては遺伝カウンセリングが可能になった。
先天性心疾患、整形外科疾患、歯科口腔外科疾患のそれぞれにおいて、その分野での標準的治療が行われており、治療自体に対する問題点は指摘し得なかった。しかし、運動機能や心機能に遺残障害が認められ、就学・就労や婚姻等に困難が認められた。
結論
わが国におけるEllis-van Creveld症候群患者発生数は10万人当たり約0.1人と推定した。遺伝子異常として、既報の2変異と新規変異の可能性が考えられる4変異を検出した。先天性心疾患、整形外科疾患、歯科口腔外科疾患のそれぞれにおいて、その分野での標準的治療を行うことが適当と考えられた。また患者の運動機能や心機能におけるハンディキャップに対して、医療福祉制度の利用、養護学校との連携、身体障害者就労支援等に協力していく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201024114C

成果

専門的・学術的観点からの成果
原因遺伝子とされるEVC・EVC2遺伝子の全exonの解析を10例に対して施行することができた。わが国において本症候群のまとまった遺伝子解析の報告はこれが初めてとなる。その結果、既報の2変異と新規変異の可能性が考えられる4変異を検出した。10例中4例にEVC遺伝子変異が認め、3例にEVC2遺伝子変異が認めた。また2例についてはこれら遺伝子について変異を認めなかった。今後遺伝子変異の機能解析や次世代シークエンサーを用いて他の原因遺伝子の探索を行う必要がある。
臨床的観点からの成果
わが国において本症候群の疫学調査はこれが初めてである。その発生頻度は10万人に約0.1人と推定した。また、インターネットによる小児心疾患の登録システムを開発したが、期間中に心疾患を合併した本症候群患者の登録はなかった。この登録システムは難病の登録にも応用可能である。合併する先天性心疾患、整形外科疾患、歯科口腔外科疾患について、わが国でのスペクトラムを明らかにすることができた。特に先天性心疾患は欧米の報告より高頻度に合併していることが判った。
ガイドライン等の開発
合併する先天性心疾患、整形外科疾患、歯科口腔外科疾患について、各分野での標準的治療が行われていることが判った。症例数が極めて少ないことが判明し、その限られた例数の中での判断では標準的治療を行うという以外に特別な治療指針は定める必要がないとした。
その他行政的観点からの成果
インターネットによる小児心疾患の登録システムを開発した。このシステムは他の難病の登録に応用可能と思われた。また、本症候群患者の就学、就労、婚姻におけるハンディキャップに対し、現行の医療福祉制度の利用、養護学校との連携、身体障害者就労支援等に協力していく必要があると考えた。
その他のインパクト
この研究に関する報道や公開シンポジウム等はない。

発表件数

原著論文(和文)
1件
梶野浩樹:小児期発症心疾患実態調査、患者状態適応型パス-電子コンテンツ2009年度版、p188-193、患者状態適応型パスシステム研究会編著、日本規格協会、2010
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
市田蕗子, 佐地勉, 梶野浩樹, 小川俊一, 中澤誠、平成21年度稀少疾患サーベイランス調査結果、日本小児循環器学会雑誌、26:348-350, 2010
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
梶野浩樹:日本における小児期発症心疾患実態調査の創設、平成22年度「医療安全と質を保証する患者状態適応型パス統合化システム開発研究」最終成果報告シンポジム、東京、2011.3.5 等
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024114Z