地域共生社会における調剤業務の効率化に係る方策の有用性・安全性の評価・検討のための研究

文献情報

文献番号
202524008A
報告書区分
総括
研究課題名
地域共生社会における調剤業務の効率化に係る方策の有用性・安全性の評価・検討のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24KC1005
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
入江 徹美(国立大学法人 熊本大学 大学院生命科学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 武田 香陽子(北海道科学大学 薬学部薬学科薬学教育学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
3,065,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
厚生労働省は令和4年7月、「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループのとりまとめ」を公表し、調剤業務の一部外部委託、箱出し調剤、調剤機器導入等を通じた対物業務の効率化を提言した。しかし、箱出し調剤は有用性が認識されつつある一方、十分な普及には至っていない。現在、自動化が進んだ薬局においても、薬剤の取り揃えや残薬の戻し作業は依然として手作業であり、計数調剤は効率化の余地が大きい業務として指摘されている。本研究では、海外事例を参考に、薬剤の効能効果を考慮した個包装サイズの標準化が箱出し調剤実現の鍵となるとの仮説のもと、製剤設計および医薬品包装学的観点から調査研究を行う。さらに、患者、医師、薬剤師、製薬企業、設備関連企業等へのヒアリングを通じ、薬局・薬剤師の対物業務効率化におけるボトルネックを明らかにし、関係者が納得できる実践的な解決策の提示を目的とする。
研究方法
1. 薬剤師へのWebアンケート調査
2. ドイツおよびイングランド薬局視察
3. 薬剤師以外のステークホルダーへのヒアリング・アンケート調査
4. 一般市民へのWebアンケート調査
5. 調剤機器類の導入による調剤業務の効率化に係る有用性・安全性に関する調査
6. Web公開シンポジウムの開催
結果と考察
令和6年度に得られた知見を踏まえ、薬剤師を対象とした箱出し調剤に関するWebアンケート調査を実施した。その結果、従来から指摘されてきた調剤業務効率化や在庫管理負担軽減といった利点に加え、トレーサビリティや物流効率化を含む新たな観点からの課題が明らかとなった。特に、処方単位の個包装品として望ましい薬剤として、片頭痛用剤、抗ウイルス薬、ビタミン剤、総合感冒剤、降圧薬などが上位に挙げられ、服薬期間や処方実態を踏まえた包装設計へのニーズが示唆された。また、導入に際しては、欧州のように個装箱や貼付ラベルへ必要事項を明記し、取り違い防止やトレーサビリティを確保する必要性が多く指摘された。さらに、箱出し調剤が不動在庫や廃棄医薬品の削減に寄与するとの認識は半数以上を占めた一方、処方量と包装単位が一致しない場合の対応については意見が分かれ、制度設計上の課題であることが示された。
次に、箱出し調剤に関する歴史的背景が異なるドイツおよびイングランドにおいて現地視察を行った。その結果、欧州では箱出し調剤が一般的に行われているものの、調剤形態や包装に対する考え方には国ごとの差異が認められた。ドイツでは個装箱をそのまま患者へ交付する箱単位調剤が原則であり、処方も包装規格(N1、N2、N3)に基づいて行われ、部分的な払い出しは原則認められていなかった。包装は患者への交付単位として位置づけられ、複数の包装規格が整備されているほか、EUの医薬品認証システムであるSecurPharmにより高いトレーサビリティが確保されていた。一方、イングランドでは箱単位調剤を基本としつつも、必要に応じて薬局で開封し、処方量に応じた払い出しを行う運用が認められていた。包装は主として物流・保管単位として位置づけられ、包装規格の種類も比較的少なかった。これらの結果から、箱出し調剤の運用は各国の医療制度や流通構造と密接に関連していることが示唆された。
さらに、薬剤師以外のステークホルダーを対象としたヒアリングおよびアンケート調査では、製薬企業、包材供給企業、設備関連企業等の立場から、包装設計、物流、品質保証、機器適合性などに関する具体的かつ専門的な意見が得られた。また、一般市民を対象とした調査では、薬剤師の対物業務効率化と対人業務充実を目的とした方策について、十分な説明と質の高いサービス提供を前提とすれば、箱出し調剤への理解が進む可能性が示唆された。
加えて、日本薬科機器協会の協力のもと実施した調査では、日本の調剤機器類は国内の医薬品提供体制に対応する形で独自の発展を遂げ、高い性能と安全性を有することが確認された。一方、さらなる効率化と高精度化を実現するためには、リアルタイム型調剤設計システム、包括的品質管理フレームワーク、自動化された医薬品記録システム等の整備が課題として挙げられた。これらを段階的に導入することで、薬剤師が患者ケアにより注力できる環境整備、安全性向上、地域医療へのさらなる貢献が期待される。
結論
薬局・薬剤師の対物業務の効率化に向けた施策について、本研究では、これまで有用と認識されながらも普及に至っていない背景や要因の一端を明らかにした。本研究で得られる成果は、対物業務の効率化を通じて薬剤師の対人業務へのシフトを促進し、地域における薬剤師の役割拡充に資する施策を検討する上で、有用な示唆を与えるものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2026-07-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2026-07-17
更新日
-

文献情報

文献番号
202524008B
報告書区分
総合
研究課題名
地域共生社会における調剤業務の効率化に係る方策の有用性・安全性の評価・検討のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24KC1005
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
入江 徹美(国立大学法人 熊本大学 大学院生命科学研究部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
薬剤師が地域包括ケアシステムに積極的に貢献するためには、対物業務の効率化と対人業務の充実が不可欠である。近年、ICTや医療DXの進展を背景に、厚生労働省等では調剤業務の効率化策として、調剤機器導入や箱出し調剤等が提言されている。しかし、箱出し調剤は有用性が認識されつつも普及には至っていない。本研究では、海外事例や厚生労働科学研究の成果を踏まえ、効能効果を考慮した個包装サイズの標準化が箱出し調剤実現に必要との仮説のもと、製剤設計・医薬品包装学的観点から調査研究を行う。さらに、患者、医療従事者、製薬企業等へのヒアリングを通じて課題を明らかにし、対物業務の効率化と対人業務の充実に資する教育内容や施策を提案し、安全・安心な地域医療への貢献を目指す。
研究方法
(令和6年度)
1. 箱出し調剤に関する公開情報調査
2. 薬剤師を対象とした箱出し調剤に関わるアンケート作成およびステークホルダーへのヒアリングの準備
3. 偽造医薬品流通防止の観点から、箱出し調剤に関する懸念事項に関する意見聴取
4. 薬剤師以外の調剤補助者・支援者の業務および教育に関するアンケート調査
5. 日本薬学会第145年会シンポジウム開催
(令和7年度)
1. 薬剤師へのWebアンケート調査
2. ドイツおよびイングランド薬局視察
3. 薬剤師以外のステークホルダーへのヒアリング・アンケート調査
4. 一般市民へのWebアンケート調査
5. 調剤機器類の導入による調剤業務の効率化に係る有用性・安全性に関する調査
6. Web公開シンポジウムの開催
結果と考察
令和6年度は、箱出し調剤に関する国内外の文献・情報を精査し、特に欧州における導入背景、運用実態、利点および課題について整理を行った。その結果、箱出し調剤の有用性は徐々に認識されつつあるものの、現時点では十分な普及には至っていないことが明らかとなった。一方、新型コロナウイルス感染症治療薬等では、処方単位で包装された製剤が上市されるなど、新たな包装形態の導入が進みつつある。また、薬局では高性能な調剤設備・機器類の導入が進展し、調剤業務の自動化・効率化が急速に進んでいる。さらに、薬剤師以外の調剤補助者・支援者による業務範囲も拡大しており、医療提供体制は大きく変化しつつある。
加えて、医薬品供給不足、不動在庫や廃棄医薬品の発生、患者ニーズの多様化等を背景として、箱出し調剤導入の可能性を再検討する意義が高まっている。偽造医薬品流通防止に関する専門家ヒアリングでは、包装上の工夫や識別システム等の技術的対策は補助的手段であり、最も重要なのは健全な医薬品流通体制の維持であるとの見解が示された。また、調剤補助者・支援者に関するWebアンケート調査では、補助業務への従事は進む一方、教育頻度や教材整備は十分ではなく、今後は一定水準の教育体制構築が必要と考えられた。
令和7年度には、薬剤師を対象としたWebアンケート調査を実施し、片頭痛用剤、抗ウイルス薬、ビタミン剤、総合感冒剤、降圧薬等について、処方単位での個包装化を望む意見が多くみられた。また、取り違い防止やトレーサビリティ確保の観点から、欧州のように個装箱やラベルへの必要事項記載を求める意見が多数を占めた。一方、処方量と包装単位が一致しない場合の対応は制度設計上の課題であることが確認された。さらに、ドイツおよびイングランドでの現地視察では、同じ欧州でも箱出し調剤の制度・運用に大きな違いが認められた。
結論 255
本研究では、薬局・薬剤師の対物業務の効率化について、有用性が認識されながらも十分に普及していない背景や課題の一端を明らかにした。得られた知見は、薬剤師の対人業務へのシフトや地域における役割拡充を検討する上で有用な示唆を与えるものである。対物業務の効率化は、単なる負担軽減ではなく、薬剤師が専門性を発揮し、患者支援により注力するための基盤整備として重要である。今後は、制度設計、教育体制、調剤機器、医薬品流通、多職種連携など多面的観点から継続的な検討を進め、持続可能な地域医療提供体制の構築につなげる必要がある。
結論
本研究では、薬局・薬剤師の対物業務の効率化について、有用性が認識されながらも十分に普及していない背景や課題の一端を明らかにした。得られた知見は、薬剤師の対人業務へのシフトや地域における役割拡充を検討する上で有用な示唆を与えるものである。対物業務の効率化は、単なる負担軽減ではなく、薬剤師が専門性を発揮し、患者支援により注力するための基盤整備として重要である。今後は、制度設計、教育体制、調剤機器、医薬品流通、多職種連携など多面的観点から継続的な検討を進め、持続可能な地域医療提供体制の構築につなげる必要がある。

公開日・更新日

公開日
2026-07-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

総合研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2026-07-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202524008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
該当なし
臨床的観点からの成果
該当なし
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
該当なし
その他のインパクト
日本薬学会第145年会にてシンポジウムを開催した。関連記事が年会ハイライト集、「薬事日報」、「薬読」に掲載された。さらに、日本薬学会学術誌「YAKUGAKU ZASSHI」 誌上シンポジウムとして2026年5月号に掲載された。2026年3月にWeb公開シンポジウムを開催した。関連記事が「ドラビス for Pharmacy」、「薬事日報」に掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
5件
誌上シンポジウム総説として
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
日本薬学会スポンサードシンポジウムとして
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
上記スポンサードシンポジウム、Web公開シンポジウム

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kayoko Takeda Mamiya, Tetsumi Irie, Hajime Hashiba, et al
What should be done to improve the efficiency in dispensing-related tasks
Journal of Asian Association of Schools of Pharmacy , 13 , 20-28  (2024)
https://doi.org/10.62100/jaasp.2024.13104

公開日・更新日

公開日
2026-07-17
更新日
-

収支報告書

文献番号
202524008Z