文献情報
文献番号
202524005A
報告書区分
総括
研究課題名
危険ドラッグ等の乱用薬物に関する最新の分析情報の収集及び危害影響予測のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24KC1002
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
花尻 瑠理(木倉 瑠理)(国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部)
研究分担者(所属機関)
- 田中 理恵(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
- 齊藤 公亮(国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部)
- 辻 厳一郎(国立医薬品食品衛生研究所 有機化学部)
- 石井 祐次(九州大学 大学院薬学研究院)
- 富山 健一(国立精神神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和8(2026)年度
研究費
7,026,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
指定薬物制度に対応し,具体的な化合物を指定薬物として指定する際に考えられる問題点を科学的に解決し,規制化に必要な評価手法及び科学的データを監視指導・麻薬行政に提供することを目的とする.
研究方法
新規流通危険ドラッグについて,国連等の国際公的機関が発信する海外薬物情報を広く収集するとともに,問題となりうる製品を入手し,新規流通化合物の構造決定及び分析用標品の準備,各種分析データの整備,識別法等を検討した.また,∆9-THC及び∆8-THCのO-butanoate体と∆9-THCのmethylcarbonate体の代謝活性化を検討した.さらに,危険ドラッグの中枢神経系への影響を検討するために,in vitro及びin vivo評価法を検討した.
結果と考察
①粉末3製品から,新規流通危険ドラッグ3成分4-PrO-DMT,4F-4-MAR及びエトミデートを同定した(いずれも令和7年度に指定薬物指定).また,錠剤1製品とシート状1製品から,LSDの新規誘導体1Bz-LSD及び1-TMSBz-LSDを同定した(1Bz-LSDは令和7年度に指定薬物指定).LSD類縁体含有を標榜していた14製品について分析を行った結果,シート状8製品とグミ2製品から1S-LSDを,シート状3製品から1-TMSBz-LSDを検出したが,これらは表示内容と実際の含有成分が一致していなかった.また,シート状1製品からはLSD類縁体が検出されなかった.
②Δ9-THC及びΔ8-THC類縁化合物及び各O-acetate体,Δ9-THCOP及びΔ8-THCOPの26化合物を分析対象として,GC-MS及びLC-MSを用いた一斉分析法を検討した.その結果,26化合物はGC-MSにおいて15分以内で分離可能であり,マススペクトルにより異性体識別が可能であった.しかし,スプリットレス注入時に,O-acetate体の脱アセチル化が認められた.LC-MSでは18分以内に分離可能で,分子量370の4異性体は,プロトン付加分子イオンのインソースCIDにより,各構造由来の特異的フラグメントイオンが観測され,識別可能であった.
③デキストロメトルファンの代謝物(+)-3-Hydroxymorphinan,イソトニタゼンの代謝物N-Desethyl-O-dealkylisotonitazene,カンナビノールの代謝物11-Hydroxycannabinolについて,親化合物を原料とする経路と他の前駆体を経由する経路を検討することで安定な供給量を得られるルートを確立した.
④∆9-THC及び∆8-THCのO-butanoate体及び∆9-THCのmethylcarbonate体について,ヒト肝ミクロゾームを用いて代謝を検討した結果,反応時間依存的に∆9-THC及び∆8-THCの増加が認められ,カルボキシエステラーゼ阻害剤によってその増加が認められなくなった.THCのO-butanoate体やmethylcarbonate体は,ヒト体内でもカルボキシエステラーゼによって酵素化学的に加水分解され,麻薬THCを生成する可能性が考えられた.
⑤新規合成オピオイドのイソトニタゼンの代謝物について,μオピオイド受容体作用およびマウス運動活性への影響を検討した.その結果,複数の代謝物が受容体活性を保持し,用量依存的な運動促進作用を示し,ナロキソンやドパミンD1/D2受容体拮抗薬により抑制されが,二重脱アルキル体では有意な作用は認められなかった.また,5HT1Aおよび5HT2A受容体発現CHO細胞においてセロトニン応答と拮抗薬による抑制を確認し,本評価系が受容体標的薬物のスクリーニングに有用であることを示した.
⑥合成カンナビノイド5F-CUMYL-PEGACLONE(5F-CP)による中枢神経系での耐性獲得と,末梢性肝臓代謝に及ぼす毒性作用とその機序を解明することを目的とし,マウスに5F-CPを低用量で投与し検討を行った.その結果,5F-CPは中枢作用への耐性が獲得された状況でも,肝機能の血清マーカーであるASTの有意な上昇及び血清脂質プロファイルの乱れを引き起こした.CB1受容体拮抗剤AM251は肝臓での遺伝子発現変動の一部を部分的に解除したが,血清中の主要な脂質レベルの変化を元に戻すことはできなかった.肝臓にて誘発される代謝攪乱は持続的に存在し,かつその一部はCB1受容体とは独立した機序に基づくものである可能性が示された.
②Δ9-THC及びΔ8-THC類縁化合物及び各O-acetate体,Δ9-THCOP及びΔ8-THCOPの26化合物を分析対象として,GC-MS及びLC-MSを用いた一斉分析法を検討した.その結果,26化合物はGC-MSにおいて15分以内で分離可能であり,マススペクトルにより異性体識別が可能であった.しかし,スプリットレス注入時に,O-acetate体の脱アセチル化が認められた.LC-MSでは18分以内に分離可能で,分子量370の4異性体は,プロトン付加分子イオンのインソースCIDにより,各構造由来の特異的フラグメントイオンが観測され,識別可能であった.
③デキストロメトルファンの代謝物(+)-3-Hydroxymorphinan,イソトニタゼンの代謝物N-Desethyl-O-dealkylisotonitazene,カンナビノールの代謝物11-Hydroxycannabinolについて,親化合物を原料とする経路と他の前駆体を経由する経路を検討することで安定な供給量を得られるルートを確立した.
④∆9-THC及び∆8-THCのO-butanoate体及び∆9-THCのmethylcarbonate体について,ヒト肝ミクロゾームを用いて代謝を検討した結果,反応時間依存的に∆9-THC及び∆8-THCの増加が認められ,カルボキシエステラーゼ阻害剤によってその増加が認められなくなった.THCのO-butanoate体やmethylcarbonate体は,ヒト体内でもカルボキシエステラーゼによって酵素化学的に加水分解され,麻薬THCを生成する可能性が考えられた.
⑤新規合成オピオイドのイソトニタゼンの代謝物について,μオピオイド受容体作用およびマウス運動活性への影響を検討した.その結果,複数の代謝物が受容体活性を保持し,用量依存的な運動促進作用を示し,ナロキソンやドパミンD1/D2受容体拮抗薬により抑制されが,二重脱アルキル体では有意な作用は認められなかった.また,5HT1Aおよび5HT2A受容体発現CHO細胞においてセロトニン応答と拮抗薬による抑制を確認し,本評価系が受容体標的薬物のスクリーニングに有用であることを示した.
⑥合成カンナビノイド5F-CUMYL-PEGACLONE(5F-CP)による中枢神経系での耐性獲得と,末梢性肝臓代謝に及ぼす毒性作用とその機序を解明することを目的とし,マウスに5F-CPを低用量で投与し検討を行った.その結果,5F-CPは中枢作用への耐性が獲得された状況でも,肝機能の血清マーカーであるASTの有意な上昇及び血清脂質プロファイルの乱れを引き起こした.CB1受容体拮抗剤AM251は肝臓での遺伝子発現変動の一部を部分的に解除したが,血清中の主要な脂質レベルの変化を元に戻すことはできなかった.肝臓にて誘発される代謝攪乱は持続的に存在し,かつその一部はCB1受容体とは独立した機序に基づくものである可能性が示された.
結論
指定薬物総数は令和8年6月1日時点で2480となった.本研究成果の一部は,令和7年度に実施された指定薬物指定の根拠資料として用いられた.また,分析データは,国立衛研違法ドラッグ閲覧システムに登録され公開された.本研究結果は危険ドラッグの規制化に有用な情報を提供し,国の監視指導行政に直接貢献するものである.
公開日・更新日
公開日
2026-06-01
更新日
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