AIを用いた医療情報の医薬品安全への活用に向けた諸要件の調査研究

文献情報

文献番号
202524003A
報告書区分
総括
研究課題名
AIを用いた医療情報の医薬品安全への活用に向けた諸要件の調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23KC1005
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
荒川 憲昭(国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐井 君江(国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部)
  • 岡本 里香(公益財団法人神戸医療産業都市推進機構 医療イノベーション推進センター(TRI))
  • 太田 実紀(定作 実紀)(東京大学 医学部附属病院)
  • 今任 拓也(福岡大学 薬学部医薬品情報学)
  • 瀬戸 僚馬(東京医療保健大学 医療保健学部 医療情報学科)
  • 鈴木 晶子(国際高等研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
6,021,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、ファーマコビジランス(PV)活動では、人工知能(AI)技術を活用した業務支援への期待が高まっている。本研究では、市販後安全対策および個別症例安全性報告(ICSR)を中心とするPV業務において、AIを適切に利活用するための課題、留意点および運用上の要件を整理し、医薬品安全管理の向上に資する知見を提供することを目的とした。令和7年度は、これまでの調査・検討結果を総括し、PV領域におけるAI活用の基本的な考え方およびガイダンス素案に資する基礎的情報を整理することを目的とした。
研究方法
令和7年度は、CIOMSや海外規制機関等の公開情報および関連文献を更新・整理するとともに、医療現場における実務上の課題を把握するため、病院薬剤部門を対象としたアンケート調査を実施した。また、個別症例評価に関連する業務を想定し、副作用の既知・未知判断支援モデルおよび因果関係評価モデルを用いたAI活用シミュレーションを実施し、AIの実装可能性、出力の妥当性、検証・品質保証上の課題を検討した。さらに、個人情報保護、ELSI、責任分界等の法的・倫理的論点について調査・整理した。

これらの令和7年度の検討結果と、前年度までに実施した製薬企業、IT企業、医療機関等を対象とする調査結果を統合し、日本のPV実務に即したAI活用の基本的な考え方を整理した。加えて、国内の医療機関、製薬企業、規制当局におけるPVプロセスについて、情報がどの主体から収集され、どのように評価、報告、分析、措置等に活用されるのかを整理し、PV業務全体における情報の流れを可視化した。その上で、各プロセスにおいて想定されるAI活用場面ごとに、課題、留意点および対応策案を検討した。
結果と考察
国際的議論では、AIを人の判断を代替するものではなく、リスクベースアプローチの下で人の判断を支援する技術として位置づける考え方が共通していた。国内調査では、製薬企業および医療現場の双方において、情報抽出、要約、転記、報告書作成支援等への期待が高い一方、AI精度の担保、個人情報保護、責任所在、人による確認手順が重要な課題として抽出された。

AI活用シミュレーションでは、既知・未知判断支援モデルに生成AIによる複合語分解・抽出機能を加えることで、従来の部分一致検索では拾いにくい事象を補完できる可能性が示された。一方で、薬剤や添付文書の記載様式、入力情報の与え方等によって誤検出や検出漏れが生じ得ることも確認された。因果関係評価においても、症例情報の追加やAIの応答条件により評価や根拠説明が変化し得ることが示された。これらの結果から、AIは候補抽出、情報整理、論点提示には有用であるものの、出力結果をそのまま採用するのではなく、専門職が判断根拠や評価内容を確認し、必要に応じて修正・承認する仕組みが不可欠であると考えられた。

法的・倫理的観点からは、患者情報の適正利用、外部サービス利用時の情報管理、二次利用・学習利用の取扱い、AI出力に対する責任主体の明確化、説明責任、監査可能性、公平性やバイアスへの配慮が重要な論点として整理された。

以上より、PV領域におけるAIは、人の最終判断を代替するものではなく、情報抽出、要約、分類、候補提示、論点整理等を通じて、専門職の意思決定を支援するツールとして位置づける必要があることが示された。また、AI導入にあたっては、利用目的および適用範囲の明確化、ユースケースごとのリスク層別化、Human-in-the-Loopを前提とした人による確認・修正・承認手順、品質保証・検証、継続的な性能監視、個人情報保護、記録管理、責任分界を含むガバナンス体制の整備が重要な要件となることを整理した。
結論
令和7年度は、本研究班におけるこれまでの調査・検討結果を総括する年度として、国際動向、国内調査、文献調査、AI活用シミュレーション、医療情報ソースおよび因果関係評価に関する検討、ならびに個人情報保護・ELSIに関する検討結果を統合的に整理した。さらに、医療機関、製薬企業、規制当局におけるPVプロセスの情報の流れを可視化し、想定されるAI使用場面ごとの課題、留意点および対応策案を検討した。これらの成果は、本研究班が提案するPV領域におけるAI活用ガイダンス素案に資する基礎的情報として位置づけられるものであり、最終的な整理結果については、総合研究報告書において詳述することとした。

公開日・更新日

公開日
2026-07-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2026-07-14
更新日
-

文献情報

文献番号
202524003B
報告書区分
総合
研究課題名
AIを用いた医療情報の医薬品安全への活用に向けた諸要件の調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23KC1005
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
荒川 憲昭(国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐井 君江(国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部)
  • 岡本 里香(公益財団法人神戸医療産業都市推進機構医療イノベーション推進センター(TRI))
  • 太田 実紀(定作 実紀)(東京大学 医学部附属病院)
  • 今任 拓也(福岡大学薬学部 医薬品情報学)
  • 瀬戸 僚馬(東京医療保健大学 医療保健学部 医療情報学科)
  • 鈴木 晶子(国際高等研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、ファーマコビジランス(PV)活動においては、情報量の増大、データソースの多様化、症例評価の複雑化を背景に、人工知能(AI)技術を活用した業務支援への期待が高まっている。国際的にも、国際医学団体協議会CIOMSをはじめ、規制当局、製薬企業、研究機関等により、PV分野におけるAI利活用の原則や課題に関する検討が進められている。本邦においても、PV分野でAIを適切に利用するための諸要件を整理し、国内実装に向けた指針作成に資する検討が求められている。そこで本研究では、市販後安全対策および個別症例安全性報告(ICSR)を中心とするPV業務において、AI利活用の推進と医薬品安全管理の向上に資する知見を提供することを目的とした。
研究方法
CIOMSや海外規制機関等の公開情報に基づき、PV用AIに関する国際的な議論や規制上の動向に関する調査を行った。また、国内の製薬企業、IT企業、医療機関等における検討状況について、アンケート・ヒアリング調査および文献調査を実施した。さらに、個別症例評価に関連する業務を想定し、副作用の既知・未知判断支援モデルおよび因果関係評価モデルを用いたAI活用シミュレーションを実施し、AIの実装可能性、出力の妥当性、ならびに検証・品質保証上の課題を検討した。加えて、医療機関、製薬企業、規制当局におけるPVプロセスの情報の流れを整理し、想定されるAI使用場面ごとに、課題、留意点および対応策について議論・整理した。

これらの結果に基づき、国内外におけるAI利活用の検討状況やニーズの高い活用場面を整理し、日本のPV実務にAIを導入する際の課題および実務上の検討事項を抽出した。
結果と考察
国際的議論では、AIを人の判断を代替するものではなく、リスクベースアプローチの下で人の判断を支援する技術として位置づける考え方が共通していることを確認した。本邦では一般的なAI関連法令・ガイドラインの整備は進みつつあるものの、PV業務におけるAIの活用範囲、検証方法、責任分界、監査可能性等を具体化する必要があることが示唆された。

国内調査では、製薬企業においてPV領域でのAI活用への関心が高く、個別症例評価、症例情報取得、情報抽出、ナラティブ作成等の日常的なPV業務において、業務効率化と品質向上への期待が大きいことが明らかとなった。その反面、バリデーション方法の不明確さ、AI精度の担保、導入コスト等が主要な課題として抽出された。医療現場では、副作用情報の収集・整理・報告に薬剤部門が中心的役割を担っており、AIには処方歴や検査結果の転記、経過記録の要約・整理等への期待が示された。一方、被疑薬の特定、因果関係評価、報告内容の確定は専門職による確認・判断を前提とすべきであり、個人情報保護、出力の正確性、責任所在等が重要な課題として明らかとなった。

AI活用シミュレーションでは、既知・未知判断支援モデルに生成AIによる複合語分解・抽出機能を加えることで、従来法では検出困難であった事象を補完できる可能性が示された。ただし、誤検出や検出漏れも確認され、検出感度と判定精度のバランスを踏まえた評価が必要であると考えられた。また、因果関係評価では、AI出力をそのまま採用せず、判断根拠等の整合性を人が確認する必要があることが示された。

法的・倫理的観点からは、個人情報保護法やGVP実務との整合性、患者情報の適正利用、外部送信・二次利用・学習利用の管理、AI出力に対する責任主体の明確化、説明責任、監査可能性、公平性やバイアスへの配慮が重要な論点として抽出された。

さらに本研究では、医療機関、製薬企業、規制当局におけるPVプロセスの情報の流れを整理し、有害事象情報の収集、症例情報の抽出・要約、報告書草案作成、既知・未知判断、因果関係評価等の想定されるAI使用場面ごとに、リスクの程度、専門職が確認すべき範囲、根拠情報の紐付け、個人情報・入出力情報の管理、変更管理、監査証跡、ならびに誤出力や見逃しを抑制するために考慮すべき対応策を整理し、実務上の留意点として提示した。
結論
以上より、PV領域におけるAI活用は、単なる業務効率化ではなく、患者安全、規制遵守、品質保証と一体的に設計すべき課題であることが明らかとなった。国内実装にあたっては、ユースケースごとのリスク層別化、Human-in-the-Loopを前提とした確認・監督体制、責任分界、根拠情報の紐付け、監査証跡、変更管理、継続的性能監視を確保する必要がある。また、医療情報の欠損や不確実性をAIが補完・推測するのではなく、不足情報として可視化し、追加確認を促す設計が重要である。本研究成果は、日本のPV実務に即したAI活用のあり方を検討する上での基礎資料となり、今後の制度的・実務的な議論、ならびに企業・医療機関における実装検討に資するものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2026-07-14
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202524003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
PV領域におけるAI活用について、国際的動向を整理するとともに、国内製薬企業・医療機関等へのアンケート調査等により、国内ニーズと課題を分析した。また、個別症例評価や既知・未知判定等を想定したAIシミュレーションを行った。結果に基づき、国内で想定されるユースケースごとに、リスク管理、人による確認・判断、説明可能性、個人情報保護等の観点から課題を整理した。本研究は、AI実装を業務効率化としてではなく、患者安全、規制遵守、品質保証等と調和させて進めるための学術的・実務的基盤を提示した点に意義がある。
臨床的観点からの成果
臨床現場から報告される副作用情報は、医薬品安全性監視活動の基盤となる一次情報であり、その収集・整理・報告の正確性と効率性は、以降のPV業務の質を大きく左右する。本研究班では、病院薬剤部門を対象とした調査により、副作用情報管理や報告書作成における業務の現状、AI活用への期待、ならびに情報の正確性、責任所在等に関する課題や留意点を整理した。本知見は、医療現場にAIを導入する際の実務上・倫理的課題を示すとともに、専門職の判断を支援し、副作用報告の効率化と質の向上に資する基礎情報となることが期待される。
ガイドライン等の開発
PV領域におけるAI活用について、国内外の規制動向、企業・医療機関等のニーズ、AI活用シミュレーション結果を整理し、日本のPV実務に即したガイダンス案作成に資する基礎資料を整備した。本研究成果は、当局ガイダンスを先取りして要件を定めるものではなく、今後の制度的・実務的議論に必要な論点を整理する位置づけである。今後、本研究成果を参考資料として、国内のガイダンス作成が進められることが期待される。
その他行政的観点からの成果
本研究では、PV領域におけるAI活用に関する国際動向、国内企業・医療機関のニーズ、医療現場で想定されるユースケースと課題を整理した。特に、副作用報告業務におけるAI活用範囲、専門職による確認手順、個人情報保護、責任分界、品質管理等の留意点を具体化した点は、厚生労働行政における医薬品安全対策の高度化に資するものである。現時点で審議会資料等として活用された実績はないが、今後、PV領域のAI活用に関するガイダンス、通知、予算要求、行政施策の検討における基礎資料として活用されることが期待される。
その他のインパクト
本研究班では、主な成果発信の一環として、令和6年度日本医療情報学会ワークショップおよび令和7年度レギュラトリーサイエンス学会シンポジウムを企画・開催し、研究成果の発表・討議を行った。また、令和6年度DIA日本年会や関西医薬品協会主催研究会等での講演を通じて、産学官、医療現場関係者および一般の関係者に対し、PV領域におけるAI活用に関する知見の共有と普及・啓発を行った。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
10件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
11件
シンポジウム(ワークショップ含む)開催 2件、講演9件(開催シンポジウムでの発表含む)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ohta M, Miyawaki S, Yokota S, et al
Causality Assessment Between Drugs and Fatal Cerebral Haemorrhage Using Electronic Medical Records: Comparative Evaluation of Disease-Specific and Conventional Methods
Drugs Real World Outcomes , 11 (2) , 221-229  (2024)
10.1007/s40801-023-00413-y.

公開日・更新日

公開日
2026-07-14
更新日
-

収支報告書

文献番号
202524003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,021,000円
(2)補助金確定額
6,021,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,704,302円
人件費・謝金 1,148,827円
旅費 685,601円
その他 2,482,270円
間接経費 0円
合計 6,021,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2026-07-14
更新日
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