精神活性物質の化学構造に基づく乱用危険性予測に関する研究

文献情報

文献番号
202524002A
報告書区分
総括
研究課題名
精神活性物質の化学構造に基づく乱用危険性予測に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23KC1002
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
舩田 正彦(湘南医療大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋 秀依(東京理科大学 薬学部)
  • 富山 健一(国立精神神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
  • 栗原 正明(湘南医療大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
7,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新規危険ドラッグ乱用による健康被害の発生は依然として大きな社会問題となっている。こうした危険ドラッグに関して、迅速かつ包括的な薬物検出および有害作用の評価法の導入が必須となっている。合成カンナビノイド、フェンタニル誘導体の流通に加え、最近は催幻覚作用を示すLSD誘導体などのセロトニン受容体作用薬による健康被害の発生が問題となっている。こうした危険ドラッグの標準品として関連の誘導体のライブラリーを作製し、有害作用の評価や機器分析による微量分析法について検討することが急務である。本研究では、細胞を利用して、危険ドラッグの検出とその毒性を同時に検出する手法の開発を試みた。また、危険ドラッグの化合物ライブラリーを作製し、機器分析による微量分析法について検討した。
研究方法
本研究では、細胞を利用して、LSD誘導体の検出とその有害作用を同時に検出する手法の開発を試みた。更に、検出の機動性を高める目的で、持ち運び可能な細胞利用による薬物検出器の作製を実施した。また、ヒトへの健康被害を推定するために重要であるヒト神経細胞を利用した毒性評価および危険ドラッグの包括指定の範囲を決めるデータを供する目的で、コンピュータを用いたインシリコ活性予測を行った。さらに、危険ドラッグの化合物ライブラリーを作製し、機器分析による微量分析法について検討した。
結果と考察
LSD誘導体検出のために、5HT2A受容体発現細胞にカルシウムセンサータンパク質GCaMPを導入して、CHO-5HT2A-GCaMP細胞を構築した。本細胞を利用して、LSD誘導体について解析した。その結果、評価薬物はセロトニン5HT2A受容体作用を示した。開発した小型蛍光検出器においても検出が可能であった。行動薬理学解析では、LSD誘導体によりhead-twitch response (HTR)が誘発され、HTR発現強度は5-HT2A受容体の活性強度と正の相関が認められた。培養細胞を利用した解析によりターゲットとなる受容体を特定し、行動薬理学的実験へ反映させることで、迅速な中枢神経系の有害作用の予測に役立つと考えられる。ヒトiPS由来ドパミン神経細胞およびラット縫線核由来初代培養神経細胞を用いて、メタンフェタミン添加による神経毒性を検討したところ、添加24時間後に細胞生存率は濃度依存的に低下しており、細胞毒性の発現が確認された。コンピュータを用いたインシリコ活性予測では、LSD誘導体について、パブリックweb-accessible databaseである”BindingDB”を探索し、5-HT2A受容体の親和性を有する化合物群の中からLSDと構造類似性の高い化合物群を用いてQSAR解析を行った。LSD誘導体の包括的危険予測範囲の検証に利用するためのマトリックスを作成した。危険ドラッグの化合物ライブラリーの作製では、特にフェンタニルとLSD誘導体を化学合成した。フェンタニル誘導体については、200種類を超える化合物をライブラリー化した。LSDの誘導体については4種を合成し、物性として遮光を必要とすること、インドールのN-アロイル化体は塩基性条件下で脱保護されやすいことから、やや不安定であることがわかった。また、薬理活性については3級アミンの置換基により、活性が異なることが明らかとなった。特に、N-アロイル化体については、創薬で用いられるプロドラッグを意識した分子設計であるとも予想され、このような高度な創薬の手法を用いた危険ドラッグが市中に流通していることは危険な状況である。将来にわたって十分に備える必要がある。同様に、化学合成した化合物については、化合物ごとにNMR、IR、MSを測定し、データベースを作成した。
結論
本研究では、危険ドラッグであるLSD誘導体の薬理作用の解析並びに検出用細胞としてCHO-5HT2A -GCaMP細胞を樹立した。本細胞はセロトニン受容体作用薬に関して、化学構造特性に依存しない包括的検出に応用可能である。また、覚醒剤類似の危険ドラッグについては、ヒトiPS細胞よりヒトドパミン神経細胞を誘導して、細胞毒性の検討が可能となった。コンピュータシミュレーションに関する研究では、LSD誘導体の解析準備が進み、今後、動物実験および細胞実験から得られたデータをもとに、QSAR解析を行いセロトニン受容体への活性予測を行い、包括対象とすべき置換部位について検証する予定である。危険ドラッグ関連化合物の合成及びライブラリー構築に関する研究では、200種類のフェンタニル誘導体および4種類のLSD誘導体の合成を行い、ライブラリー化した。本研究成果は、新規化学構造を有する危険ドラッグが次々に登場する状況に対応するための、総合的な薬物有害作用評価システムおよび検出システムとして、重要な役割を果たすと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2026-05-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-05-07
更新日
-

文献情報

文献番号
202524002B
報告書区分
総合
研究課題名
精神活性物質の化学構造に基づく乱用危険性予測に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23KC1002
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
舩田 正彦(湘南医療大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋 秀依(東京理科大学 薬学部)
  • 富山 健一(国立精神神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
  • 栗原 正明(湘南医療大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新規危険ドラッグ乱用による健康被害の発生は依然として大きな社会問題となっている。こうした危険ドラッグに関して、迅速かつ包括的な薬物検出および有害作用の評価法の導入が必須となっている。フェンタニル誘導体の流通に加え、最近は催幻覚作用を示すLSD誘導体などのセロトニン受容体作用薬による健康被害の発生が問題となっている。こうした危険ドラッグの標準品として関連の誘導体のライブラリーを作製し、有害作用の評価や機器分析による微量分析法について検討することが急務である。本研究では、細胞を利用して、危険ドラッグの検出とその毒性を同時に検出する手法の開発を試みた。また、危険ドラッグの化合物ライブラリーを作製し、機器分析による微量分析法について検討した。
研究方法
本研究では、細胞を利用して、セロトニン受容体作用薬の検出とその有害作用を同時に検出する手法の開発を試みた。更に、検出の機動性を高める目的で、持ち運び可能な細胞利用による薬物検出器の作製を実施した。また、ヒトへの健康被害を推定するために重要であるヒト神経細胞を利用した毒性評価および危険ドラッグの包括指定の範囲を決めるデータを供する目的で、コンピュータを用いたインシリコ活性予測を行った。さらに、危険ドラッグの化合物ライブラリーを作製し、機器分析による微量分析法について検討した。
結果と考察
LSD誘導体などのセロトニン受容体作用薬検出のために、5HT2A受容体発現細胞にカルシウムセンサータンパク質GCaMPを導入して、CHO-5HT2A-GCaMP細胞を構築した。本細胞による解析から、LSD誘導体等の評価薬物はセロトニン5HT2A受容体作用を示した。開発した小型蛍光検出器においても検出が可能であった。行動薬理学解析では、LSD誘導体によりhead-twitch response (HTR)が誘発され、HTR発現強度は5-HT2A受容体の活性強度と正の相関が認められた。培養細胞を利用した解析によりターゲットとなる受容体を特定し、行動薬理学的実験へ反映させることで、迅速な中枢神経系の有害作用の予測に役立つと考えられる。ヒトiPS由来ドパミン神経細胞を用いて、メタンフェタミン添加による神経毒性を検討したところ、強力な細胞毒性の発現が確認された。コンピュータを用いたインシリコ活性予測では、LSD誘導体について、パブリックweb-accessible databaseである”BindingDB”を探索し、5-HT2A受容体の親和性を有する化合物群の中からLSDと構造類似性の高い化合物群を用いてQSAR解析を行った。LSD誘導体の包括的危険予測範囲の検証に利用するためのマトリックスを作成した。危険ドラッグの化合物ライブラリーの作製では、特にフェンタニルとLSD誘導体を化学合成した。フェンタニル誘導体については、200種類を超える化合物をライブラリー化した。LSDの誘導体については4種を合成し、物性として遮光を必要とすること、インドールのN-アロイル化体は塩基性条件下で脱保護されやすいことから、やや不安定であることがわかった。また、薬理活性については3級アミンの置換基により、活性が異なることが明らかとなった。特に、N-アロイル化体については、創薬で用いられるプロドラッグを意識した分子設計であるとも予想され、このような高度な創薬の手法を用いた危険ドラッグが市中に流通していることは危険な状況である。将来にわたって十分に備える必要がある。同様に、化学合成した化合物については、化合物ごとにNMR、IR、MSを測定し、データベースを作成した。
結論
本研究では、危険ドラッグであるLSD誘導体の薬理作用の解析並びに検出用細胞としてCHO-5HT2A -GCaMP細胞を樹立した。本細胞はセロトニン受容体作用薬に関して、化学構造特性に依存しない包括的検出に応用可能である。また、覚醒剤類似の危険ドラッグについては、ヒトiPS細胞よりヒトドパミン神経細胞を誘導して、細胞毒性の検討が可能となった。コンピュータシミュレーションに関する研究では、LSD誘導体の解析が進み、192化合物の活性値を計算し、包括指定対象の範囲を限定することができた。今後は、包括対象とすべき置換部位について検証する予定である。危険ドラッグのライブラリー構築に関する研究では、200種類のフェンタニル誘導体および4種類のLSD誘導体の合成を行い、ライブラリー化した。本研究成果は、新規化学構造を有する危険ドラッグが次々に登場する状況に対応するための、総合的な薬物有害作用評価システムおよび検出システムとして、重要な役割を果たすと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2026-05-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-05-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202524002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
危険ドラッグであるLSD誘導体について、行動薬理学的手法による中枢作用の評価と培養細胞による毒性評価から構成される解析システムは、有害作用発現の迅速な評価法として有用である。また、コンピュータ計算によるインシリコ評価法を用いて、セロトニン5HT2A受容体作用を有する危険ドラッグの有害作用の予測が可能であることが明らかになった。また、危険ドラッグの識別に関する機器分析条件を確立した。得られる科学データは規制根拠として活用できると考えられる。
臨床的観点からの成果
本研究では、セロトニン5HT2A受容体作用を有する危険ドラッグを検出することが可能な細胞を作出した。また、細胞用のポータブル検出器の製作し、大型検出同様の検出感度であることを確認した。こうした検出システムは、救命救急の現場で、危険ドラッグタイピングに利用可能であり、適切な医療対応に貢献できると考えられる。
ガイドライン等の開発
特記なし
その他行政的観点からの成果
幻覚作用を示すLSD誘導体に関して、細胞実験とビッグデータ解析により包括指定を実施するためのデータ収集を行った。
その他のインパクト
特記なし

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
26件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
28件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

特許の名称
オピオイド受容体拮抗剤及び医薬組成物
詳細情報
分類:
特許番号: 2024-174109
発明者名: 高橋秀依、中村佳代、有田浩暢、富澤宰、菊川俊太郎、坂田遥佳、舩田正彦、富山健一
権利者名: 学校法人東京理科大学、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
出願年月日: 20241003
国内外の別: 国内

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sogawa K, Funada M.
Effects of cannabidiol on the viability and neuronal differentiation of human iPS cells.
Toxicol Lett.  (2025)
doi: 10.1016/j.toxlet.2025. 111812.
原著論文2
Tomiyama KI, Funada M.
The synthetic opioid isotonitazene induces locomotor activity and reward effects through modulation of the central dopaminergic system in mice.
Toxicol Appl Pharmacol. , 500 , 17361-  (2025)
原著論文3
Hosoya R, Kitajima K, Sogawa K, et al
Principal component analysis of antiseizure medication- induced hostility/aggression and factor analysis of levetiracetam using the food and drug administration adverse event reporting system.
Epilepsy Res.  (2025)
doi: 10.1016/j. eplepsyres.
原著論文4
Tanaka, Ryoko; Takano, Ryota; Natsugari, Hideaki; et al
Insight into the axial chirality in benzodiazepines.
Yuki Gosei Kagaku Kyokaishi , 83 , 119-130  (2025)
原著論文5
Arita, Hironobu; Tomizawa, Tsukasa; Kikukawa, Shuntaro; et al
Determination of the absolute configuration of 1-(2-amino-3-methylphenyl)ethanol based on the modified Mosher and microcrystal electron diffraction methods.
Chemical & Pharmaceutical Bulletin. , 73 , 520-525  (2025)
原著論文6
Arita, Hironobu; Tanaka, Ryoko; Kikukawa, Shuntaro et al
Fentanyl-Type Antagonist of the μ-Opioid Receptor: Important Role of Axial Chirality in the Active Conformation.
Journal of Medicinal Chemistry , 67 , 10447-1046  (2024)
原著論文7
Kasai, Satoka; Ogawa, Natsuki; Takagi, Miho et al
Fentanyl analogs exert antinociceptive effects via sodium channel blockade in mice.
Biological & Pharmaceutical Bulletin , 47 , 872-877  (2024)

公開日・更新日

公開日
2026-05-08
更新日
2026-06-03

収支報告書

文献番号
202524002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,100,000円
(2)補助金確定額
8,100,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,931,780円
人件費・謝金 0円
旅費 129,780円
その他 138,440円
間接経費 900,000円
合計 8,100,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2026-05-08
更新日
-