バルデー・ビードル症候群実態把握のための奨励研究

文献情報

文献番号
201024110A
報告書区分
総括
研究課題名
バルデー・ビードル症候群実態把握のための奨励研究
課題番号
H22-難治・一般-055
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
平野 牧人(近畿大学 医学部堺病院)
研究分担者(所属機関)
  • 生野 恭司(大阪大学 医学部)
  • 石原 立(大阪府立成人病センター)
  • 岩橋 博見(大阪大学 医学部)
  • 大石 充(大阪大学 医学部)
  • 真野 利之(大阪府立母子保健総合医療センター)
  • 山下 俊英(大阪大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
11,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
バルデー・ビードル症候群(BBS)は肥満、知能障害、網膜色素変性症、透析に至る慢性腎障害、性腺機能低下症、多指症を特徴とする常染色体劣性疾患である。肝線維化による肝硬変も合併する。本邦ではローレンス・ムーン・ビードル症候群と呼ばれることが多いが、それは世界的には肥満のない別の疾患を指すとされる。原因遺伝子はBBS1-BBS14として同定されたが、原因不明例も多い。本疾患において、知能・視力障害による介護体制整備や腎・肝障害に対する生命予後改善のために、患者数の把握や疾患の啓発は重要だが、実際には症状が症例ごとに異なり、多数の専門分野に分かれるため困難を伴う。本研究は、全国調査により本邦におけるBBSの実態を把握し、臨床データと患者試料の収集を目的とした。
研究方法
全国実態調査を施行した。すなわち、日本神経学会 (765施設)、小児神経学会(124施設)、肥満学会(109施設)、網膜硝子体学会(115施設)、肝臓学会(367施設)、腎臓学会(580施設)、足の外科学会(106施設)の合計2,166の専門医施設に啓発用文書と調査票を送付した。BBSが疑われる9例では遺伝子解析を実施した。研究に同意された2例では、人工多能性幹細胞(iPS)作製のため、皮膚生検後に線維芽細胞を樹立した。
結果と考察
新たに38例の本症と考えられる症例が見出された。しかし、遺伝子検査を施行した9例では、BBS1-13遺伝子上の既知の変異は検出されなかった。欧米の症例とは遺伝的背景が異なる可能性が示された。
結論
本疾患はまれであるが、今後も早期診断と合併症回避のために継続した啓発活動と、多能性幹細胞などによる病態解明や治療法開発が必要である。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201024110C

成果

専門的・学術的観点からの成果
バルデー・ビードル症候群(BBS)は肥満、知能障害、網膜色素変性症、透析に至る慢性腎障害、性腺機能低下症、多指症を特徴とする常染色体劣性疾患である。BBS1-14遺伝子が原因遺伝子として単離されたが、本邦には遺伝子異常例はない。本研究でBBSが疑われ、希望された9例でマイクロアレイ解析を施行したが、欧米で既報告の変異は認められなかった。以上から、本邦例は遺伝学的背景が欧米とは異なることが示唆された。希望された2例では、人工多能性幹細胞作製のために皮膚生検、さらに線維芽細胞の樹立をおこなった。
臨床的観点からの成果
本研究では、日本神経学会 (765施設)、小児神経学会(124施設)、肥満学会(109施設)、網膜硝子体学会(115施設)、肝臓学会(367施設)、腎臓学会(580施設)、足の外科学会(106施設)の合計2,166の専門医施設に啓発用文書と調査票を送付した。この結果、38例の本例と考えられる症例を得た。ほとんどの症例が本研究により診断された症例であり、疾患の周知という目的の一つは達せられたと考えられる。
ガイドライン等の開発
本研究は、ガイドラインの作成を目的とはしていないが、現在の診断基準には糖尿病が含まれており、2次的に知能障害、腎機能障害、肥満などのBBSでみられる兆候が出現する可能性が考えらえ、今後、そういった観点を含めた診断ガイドラインが必要と考えられる。
その他行政的観点からの成果
血液中のシスタチンCが早期の腎機能異常を検出するマーカーとなりうることを示し、これが早期診断に用いることができる可能性がある。将来、早期診断にもとづく早期の患者数把握を可能とする。
その他のインパクト
研究班以外の施設での学会発表(小児腎臓病学会[アジア小児腎臓病学会])に、謝辞として本研究の研究成果が紹介されている。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hirano M, Ohishi M, Yamashita T, et al.
Abnormal cystatin C levels in two patients with Bardet-Biedl syndrome.
Clin. Med. Insights Case Rep. , 4 , 17-20  (2011)
原著論文2
Muramatsu R, Kubo T, Mori M, et al.
RGMa modulates T cell responses and is involved in autoimmune encephalomyelitis.
Nat Med , 17 (4) , 488-494  (2011)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024110Z