文献情報
文献番号
201024105A
報告書区分
総括
研究課題名
重症・難治性急性脳症の病因解明と診療確立に向けた研究
課題番号
H22-難治・一般-049
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
水口 雅(東京大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 岡 明(杏林大学 医学部)
- 奥村 彰久(順天堂大学 医学部)
- 久保田 雅也(国立成育医療研究センター)
- 斎藤 義朗(国立精神・神経センター)
- 高梨 潤一(亀田総合病院)
- 廣瀬 伸一(福岡大学 医学部)
- 山形 崇倫(自治医科大学 医学部)
- 山内 秀雄(埼玉医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
急性脳症はありふれた小児の感染症を契機に発症し、しばしば死亡や重篤な後遺症をもたらす。急性脳症は複数の症候群の集合体であるので、症候群ごとの解析が必要である。本研究は、急性脳症のうち重症・難治性の病型(症候群)につき診断・治療の確立・向上を目指す。個々の症候群ごとに実態を把握し、診断基準を作成し、臨床・検査・画像所見を集積・解析し、重症度判定のためのマーカーを見いだし、治療法の共同研究のプロトコール・システムを準備する。さらに急性脳症の遺伝要因解明のため、遺伝子研究の検体を収集し、解析を進める。
研究方法
急性脳症の代表的症候群のうち急性壊死性脳症(ANE)、遅発性拡散低下をともなう急性脳症(AESD)、可逆性脳梁膨大部病変を有する軽症脳炎・脳症(MERS)の診断基準を作成し、これを用いて急性脳症の疫学に関する全国アンケート調査を行った。ANEとAESDの遺伝子検体を収集し、候補遺伝子(CPT-II、SCN1A、RANBP2など)について解析を進めた。重症度スコアの作成と症例データベース作成に向けた研究を開始した。
結果と考察
急性脳症全体の罹病率は年間400?700人、症候群別の罹病率はAESD(100?200人)、MERS(100?200人)、ANE(15?30人)と推定した。年齢分布は、ANE とAESD(中央値1~2歳)に比しMERS(同5歳)で高年齢だった。病原体と症候群の相関について、インフルエンザはANEおよびMERSとの関連が強く、HHV-6はAESDとの関連が強いなどの特徴が見られた。予後は症候群ないし病原ウイルスにより著しく異なり、致死率はANEで高く(28%)、AESD、MERSないしHHV-6脳症で低かった(0~2%)。後遺症はAESDとANEで多く、MERSでは稀だった。
結論
急性脳症の代表的病型(症候群)であるANE、AESD、MERSの診断基準を確立した。急性脳症の好発年齢や予後、病原体との関係は症候群間で著しく異なるので、診療も症候群ごとに個別化されるべきである。急性脳症の発症にはCPT-II、RANBP2、アデノシン受容体、SCN1Aなど複数の遺伝子の変異・多型が関与し、遺伝子型と表現型の関係は複雑である。
公開日・更新日
公開日
2011-12-27
更新日
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