間質性膀胱炎に対するA型ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法に関する研究

文献情報

文献番号
201024103A
報告書区分
総括
研究課題名
間質性膀胱炎に対するA型ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-047
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
本間 之夫(東京大学医学部附属病院 泌尿器科)
研究分担者(所属機関)
  • 野宮 明(東京大学医学部附属病院 泌尿器科 )
  • 西松 寛明(東京大学医学部附属病院 泌尿器科 )
  • 藤村 哲也(東京大学医学部附属病院 泌尿器科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
海外で間質性膀胱炎に対する有効性が報告されているA型ボツリヌス毒素100単位を分割して膀胱壁内に注入し、症状スコア、排尿日誌、尿中炎症マーカー測定にて治療効果の評価を行うことを目的とした。
研究方法
当科で間質性膀胱炎と診断されて、膀胱水圧拡張術や鎮痛薬などによる内服治療など、通常の治療に抵抗する症例を対象とした。
当院の倫理委員会で承認を経た上で、候補となる患者に文書による説明の後、同意を得た後に前期治療群(=介入群)と後期治療群(=対照群)に無作為化し、前者には直ちに治療を行い、後者には1ヶ月遅れて治療を行い、治療介入1ヶ月後と無治療で1ヶ月経過した時点での患者の症状をO‘Leary and Santによる間質性膀胱炎の症状スコア・問題スコア(OSSI/OSPI)、過活動膀胱症状スコア(OABSS)、国際前立腺症状スコア(IPSS)、下部尿路症状スコア(CLSS)、疼痛スコア(visual analogue scaleによる)、排尿日誌を用いて比較検討した。
治療は、入院・麻酔下にてA型ボツリヌス毒素100単位を膀胱壁内に注入し、特に問題なければ治療の翌日以降に退院し、以降は外来で経過を追跡した。
結果と考察
2011年4月15日時点で治療後1ヶ月以上経過した症例について中間解析を行った。その結果、間質性膀胱炎の自覚症状の指標であるOSSI、OSPI、疼痛スコア(Visual analogue scale for painによる)、1日排尿回数、夜間排尿回数、平均1回排尿量のうち、OSSIを除く各指標で治療前に比べて有意な改善を認めた。治療前後で尿流量測定検査では有意な変化を認めず、また内服を含めて追加の治療を要する合併症を認めなかった。 すなわち、治療後1ヶ月時点では本治療の有効性と安全性が確認された。
また、介入群と対照群の比較においては、登録時と登録1ヵ月後の各種指標を比較した。その結果、介入群において、有意に各種指標の改善を認めた一方で、対照群においては変化を認めなかった。
結論
中間解析の結果、A型ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法による介入が、間質性膀胱炎症状の改善に寄与したこと、および間質性膀胱炎に対するA型ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法は、有効かつ安全な治療であることが確認された。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201024103C

成果

専門的・学術的観点からの成果
間質性膀胱炎に対するA型ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法は、中間解析の結果、また、潰瘍型と非潰瘍型との比較の結果、潰瘍型では疼痛を中心に自覚症状の改善を、非潰瘍型では頻尿を中心に自覚症状の改善を認め、潰瘍の有無で治療効果が異なる可能性が示唆されおり、このことは潰瘍の有無で間質性膀胱炎の病態が異なる可能性を示唆しており、A型ボツリヌス毒素の作用機序の解析が勧めば、それぞれの病態が明らかになることが期待される。
臨床的観点からの成果
2011年5月30日現在、29例が登録され、20例が治療を完了し経過観察中である。そのうち治療後1ヶ月以上を経過した症例について中間解析を実施したところ、介入群で非介入群に比較して介入前後で有意に間質性膀胱炎の各種スコアの改善を認めた。まだ、目標症例数に達していないこともあり、両群での有意差を見出すには至っていない。
安全性に関しては、追加の治療を要する合併症の発生を認めず、本治療の安全性にも問題は無いと思われる。現時点では、本治療は間質性膀胱炎に安全で有効な治療であると考える。
ガイドライン等の開発
目標症例数に達して、効果・安全性に関する解析が完了し、本治療に対する評価が確定すると考える。その上で、2007年に日本間質性膀胱炎研究会が刊行した「間質性膀胱炎ガイドライン」が改定される際に本治療の推奨レベルなどの再検討を行う予定である。
その他行政的観点からの成果
間質性膀胱炎は、頻尿・膀胱痛などの症状を伴う原因不明の難治性疾患で有効とされる治療法はほとんど存在しない。2010年に間質性膀胱炎に対する膀胱水圧拡張術が保険適応となったが、本治療が間質性膀胱炎に対する治療の選択肢の一つとして、保険適応もしくは先進医療の適応となれば、有効な治療法が少なく、対症療法に終始していることが多い間質性膀胱炎患者にとって福音となり、ひいては国民全体の健康の増進に繋がることが期待される。
その他のインパクト
現時点では、中間解析直後であり今後、成果の普及を図っていく予定である。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
排尿機能学会(演題登録、9月発表予定)
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2016-06-20

収支報告書

文献番号
201024103Z