文献情報
文献番号
201024102A
報告書区分
総括
研究課題名
致死性骨異形成症の診断と予後に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-046
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
澤井 英明(兵庫医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 室月 淳(東北大学 医学系研究科)
- 山田 崇弘(北海道大学 大学病院)
- 堤 誠司(山形大学 医学部)
- 佐藤 秀平(青森県立中央病院 総合周産期母子医療センター)
- 篠塚 憲男(株式会社胎児医学研究所 臨床研究部)
- 高橋 雄一郎(国立病院機構長良医療センター 周産期診療部)
- 早川 博生(春日井市民病院 産婦人科)
- 夫 律子(クリフム夫律子マタニティクリニック 臨床胎児医学研究部)
- 河井 昌彦(京都大学 医学研究科)
- 沼部 博直(京都大学 医学研究科)
- 岡本 伸彦(地方独立行政法人大阪府立母子保健総合医療センター)
- 鬼頭 浩史(名古屋大学 医学部附属病院)
- 宮崎 治(独立行政法人国立成育医療センター 放射線診療部)
- 長谷川 奉延(慶應義塾大学 医学部)
- 岡崎 伸(大阪市立総合医療センター 小児神経内科)
- 緒方 勤(浜松医科大学 医学部)
- 池川 志郎(独立行政法人理化学研究所 ゲノム医科学センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
致死性骨異形成症thanatophoric dysplasiaは稀な先天性骨系統疾患であるが、日本では正確な統計はなく、全国的な症例数の概略も不明である。また周産期致死性とされているが、学会等での報告によると長期の生存例が散見される。その実情を把握することと、この疾患に関連した診断と予後に関する各種調査を行う。
研究方法
全国の産科、小児科、整形外科のうち骨系統疾患の診断や母児の管理が可能と考えられる施設を対象に、全国調査(1次調査)として症例数とその予後についての概要の調査を実施した。それ以外には1)胎児骨格異常の早期診断に必要な超音波検査の四肢長幹骨の正常値の日本人データは大腿骨と上腕骨しかないため、すべての四肢長幹骨について標準値作成プロジェクトを開始し、データ集積中である。2)胎児診断として3次元胎児ヘリカルCTは有用であるが、本法は胎児被爆、撮影条件、確定診断で重視すべき所見など、未解決の問題が山積している。放射線科医と技師で胎児CTサブグループを結成し、撮影条件や症例数などの全国調査を実施中である。3)本疾患はFGFR3遺伝子の突然変異による疾患で、遺伝子診断により確定診断できる。国内で遺伝子診断のできる体制の整備を行っている。4)胎児骨系統疾患に詳しい専門医のグループ「胎児骨系統疾患フォーラム」を基盤として、これまでの症例検討のまとめを作成すると同時に、胎児診断の基準を作成している。またウェブ上の症例診断支援システムを作成し効率的な疾患の診断を行い、臨床医を支援するシステムを構築中である。5)致死性骨異形成症についてのホームページを開設し、成果の社会還元を行っている。
結果と考察
全国調査では産科108施設、小児科173施設、整形外科101施設から回答を得て、過去5年間に65症例が報告された。そしてそのうち周産期死亡を起こしたものは27例(54%)で、致死性という名称にもかかわらず、ほぼ半数は致死性ではなかった。出生直後からの適切な呼吸管理を実施すれば、半数近くが周産期死亡を起こさず、生存することが判明した。しかも1年以上の生存も15例と生産児(総数47例)の32%に達した。また致死性骨異形成症という名称については、産科と小児科では4割以上の医師が、不適切であると回答している。今回の調査結果と合わせて、現状を反映しない疾患名の再検討の必要性を示唆した。
結論
致死性骨異形成症は周産期致死は約半分であり、出生直後の適切な呼吸管理により長期生存が可能である。疾患名の妥当性も検討する必要がある。
公開日・更新日
公開日
2011-12-27
更新日
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