Shwachman-Diamond症候群の効果的診断法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
201024101A
報告書区分
総括
研究課題名
Shwachman-Diamond症候群の効果的診断法の確立に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-045
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
渡邉 健一郎(京都大学大学院医学研究科 発達小児科学)
研究分担者(所属機関)
  • 小島 勢二(名古屋大学大学院医学研究科 小児科)
  • 伊藤 悦朗(弘前大学大学院医学研究科 小児科)
  • 小林 正夫(広島大学大学院 医歯薬学総合研究科 小児科学)
  • 金兼 弘和(富山大学附属病院 小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
Shwachman-Diamond症候群(SDS)は骨髄不全、膵外分泌異常を主徴とする稀な遺伝性疾患であり、白血病を発症するリスクが高いことが特徴である。本研究では、わが国でのSDSの実態を把握し、診断ガイドラインの作成、登録システムの確立、それに続く診療体制の整備、臨床研究の基盤を構築することを目的とする。
研究方法
全国的な疫学調査を行い、SDS症例の臨床情報を収集する。日本小児血液学会中央診断事業からSDSが疑われる症例を抽出する。遺伝子診断は、原因遺伝子であるSBDSについてシークエンスを行い変異解析する。得られた臨床情報を基に、診断ガイドラインを作成する。
結果と考察
全国疫学調査として、小児科を標榜し入院施設のある全国705施設を対象に一次調査を行った。459施設から回答を得、遺伝子診断例16例、臨床診断例9例、疑い例5例の合計30例が抽出された。次に、SDSの症例報告している施設も加えた計30施設、40症例を対象として二次調査を行った。これにより遺伝子診断例18例を含む20例について詳細な臨床情報が得られた。膵外分泌不全では、膵酵素血中濃度の測定、便中脂肪の他、CTやMRIによる膵の画像評価が行われ、診断に有効であることが示唆された。血球減少は、3系統いずれの血球が減少する場合もあり得、また好中球減少が経過と共に進行し、500/μl未満となる症例も少なからず存在することがわかった。発育不全、低身長、骨格異常が、高率に認められ、診断の上で重要な所見であった。遺伝子診断により、本邦でも、SBDS遺伝子変異は、common mutationのcompound heterozygote (183-184TA/258+2T>C)が最も多いことが判明した。白血化は1例あり、造血細胞移植により救命されていた。骨髄形態異常、染色体異常を示す症例があり、血液学的フォローアップが重要と考えられた。この他、膵酵素補充療法、G-CSF使用や輸血など、治療上の情報も収集できた。日本小児血液学会中央診断事業でも3例が同定され、本疾患の診断システムとして有効であると考えられた。
結論
本邦のSDS症例も、海外の症例と同様の臨床的特徴を持つことがわかった。本研究により、診断ガイドライン、治療指針を作成し、新規診断法や治療の開発、海外との共同研究を推進する基礎となる情報が収集できたと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201024101C

成果

専門的・学術的観点からの成果
Shwachman-Diamond症候群(SDS)は欧米では3番目に多い先天性骨髄不全症候群であるが、本邦では稀とされ、症例報告はあったが、その実態は明らかではなかった。本研究では、初めて全国的な疫学調査を行い、本邦でのSDS症例の実態を把握することができた。また、日本小児血液学会中央診断による把握が有効であり、遺伝子診断により多くの症例が確定診断可能であることがわかった。
臨床的観点からの成果
本疾患患者の診療には正確な診断が重要である。本研究の疫学調査により、初診時の症状から診断に至るまでの期間、また症候の変化も把握された。またどのような検査を行い、経過観察や治療を行う上で、どのような選択がなされているか情報を得ることができた。SDSを診断する糸口になる所見、疑った場合の検査項目、遺伝子診断の確立、また日本小児血液学会中央診断システムで正確な診断が可能なことがわかり、臨床上も有用な情報が得られた。
ガイドライン等の開発
本研究により得られた情報に基づき、データベースを構築し、診断ガイドラインを作成している。検査項目についても詳細なデータが得られているので、本邦の実態に合ったガイドライン作成が可能である。海外では、北米で本疾患に特異的な登録システムが開始されており、国際共同登録システムの構築が検討されている。本研究では、北米の登録システムで採用されている診断基準に基づいて、疫学調査を行った。これにより、海外との比較可能な、ガイドライン作成ができる。
その他行政的観点からの成果
本研究により、患者のニーズを正確に把握し、それに対して適切な支援策を検討することが可能となる。稀少疾患に対し、日本小児血液学会中央診断の様な既存の事業を利用して診断し患者を把握する方法の可能性を示しており、他の希少疾患に対する施策にも応用可能であると考える。また、海外のデータベースと比較可能なデータセットを作成することで、海外からの新規治療薬導入など、国際共同研究に参画可能な体制を構築することができる。
その他のインパクト
本疾患を含む先天性骨髄不全症候群は、病態解明が進んでおり、基礎的にも臨床的にも興味が持たれている疾患群である。2010年の日本小児血液学会でも、SDSが教育セッションで取り上げられ、研究代表者の渡邉が講演を行った。また、2011年2月には、先天性造血不全のシンポジウムが開催され、そこでもSDSについて発表を行った。2011年6月には米国で本疾患の国際学会が開催される予定で、今回の研究の成果をもって海外の研究者と意見交換を行う予定である。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
渡邉健一郎 先天性造血不全-Shwachman-Diamond症候群 第52回日本小児血液学会総会教育セッションテキスト P8-10 2010
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
第52回日本小児血液学会総会  血液教育講演Shwachman-Diamond症候群 (渡邉)平成22年12月17日 大阪国際会議場 先天性造血不全シンポジウム 2011年2月5日
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2015-05-21

収支報告書

文献番号
201024101Z