文献情報
文献番号
202523009A
報告書区分
総括
研究課題名
食中毒原因病原大腸菌の検査法の整備及び食中毒対策推進のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24KA1002
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
工藤 由起子(星薬科大学 薬学部薬学科)
研究分担者(所属機関)
- 大岡 唯祐(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科 感染防御学講座 微生物学分野)
- 窪村 亜希子(国立感染症研究所 細菌第一部)
- 小嶋 由香(川崎市健康安全研究所)
- 大西 貴弘(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和8(2026)年度
研究費
18,374,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
日本では多様な病原大腸菌による食中毒が発生しており、社会的に問題となっている。そのため、食中毒原因病原大腸菌の検査法の整備および食中毒対策推進のための研究を実施する。astA(腸管凝集付着性大腸菌耐熱性エンテロトキシン1 ;EAST1をコードする遺伝子)保有大腸菌は多種食品から分離され、食品汚染株の一部の株が食中毒を引き起こすと考えられ、食中毒由来株との特性の違いの解明が必要とされている。また、これら病原大腸菌の食品汚染状況や食品での生残性は食品洗浄等の制御を確立するために重要である。さらに、食中毒での食品試験法の重要性は一層高く、腸管出血性大腸菌、腸管毒素原性大腸菌など病原大腸菌について食中毒対応が速やかに行われるように示される必要がある。
研究方法
(1)工藤は、astA保有大腸菌の食品由来株および食中毒由来株の動物での比較試験を行ない、差異を検討する。また、astA保有大腸菌の自然汚染食品からの分離法の検討と菌株の解析を行い、分離株の遺伝子型の解析等を行う。さらに、EAST1特異的モノクローナル抗体の作製等を検討する。(2)大岡は、astA保有大腸菌ゲノム情報の高度解析を行い、IS1414の転移を介したastA遺伝子バリアントの発現亢進条件やEscherichia albertiiの免疫磁気ビーズ濃縮法を検証する。また、これまでのastAバリアントの多様性や機能有無の可能性などについての成果を論文投稿する。(3)窪村は、astA保有大腸菌O166:H15株を中心に集発事例由来のastA保有株のゲノムデータの取得を行ない、莢膜遺伝子(kps)クラスターおよび保有プラスミドの比較解析、CHO細胞への付着性に関与する因子の特定を行う。(4)小嶋は、白菜キムチによる腸管出血性大腸菌O157食中毒予防を目的に、野菜での大腸菌の付着状況を走査型電子顕微鏡を用いて観察、消毒・洗浄法の検討、白菜キムチ細菌叢のゲノム解析を行う。(5)大西は、現在市販されている腸管毒素原性大腸菌のSTおよびLT遺伝子キットの検出限界を比較し、地方自治体で広く活用可能な、効果的かつ効率的な食品の検査法を確立することを目指し、本菌の通知法案を作成する。
結果と考察
(1)工藤は、食品でのastA保有大腸菌試験においてNmEC培地での増菌や選択分離培地の有用性を示し、食品ごとにO抗原およびH抗原遺伝子型やastAバリアントの傾向があること、また、動物モデルでは由来に関係なくastA保有大腸菌には一定の病原性を保有することが考えられた。また、EAST1特異的モノクローナル抗体を得た。(2)大岡は、IS1414の構造が完全であり、最も株間で保有数の多いV0について、ISを介したastA遺伝子バリアントの発現亢進を調べる目的で検出系の構築を実施した。E. albertii のIgG結合性因子候補としてゲノム領域について解析を進めた。astA遺伝子バリアントの多様性等について国際誌に発表した。(3)窪村は、集団下痢症事例由来astA保有大腸菌株がいずれも類似した巨大プラスミドを保有すること、細胞付着性株のK抗原型はK131であり、細胞付着性に関与する2遺伝子がkfoCおよびkfoGと高いアミノ酸相同性を示すことを明らかにした。(4)小嶋は、白菜キムチの原材料である白菜の洗浄法の検討、走査型電子顕微鏡による大腸菌の白菜付着部分の特定、白菜キムチの細菌叢のゲノム解析を行った。(5)大西は、食品からの腸管毒素原性大腸菌の検査法を作成するために、現在市販されている検査キットの検出限界を比較し、性能評価を行ない、通知法案を作成した。
結論
(1)工藤は、食品でのastA保有大腸菌試験法を検討し、複数のO抗原およびH抗原遺伝子型やastAバリアントにも対応することも考慮した方法を示した。今後、動物モデルや作製したEAST1抗体の応用について検討する。(2)大岡は、今後さらにIS1414の転移・増幅と連動したEAST-1による病原性亢進の可能性やE. albertii免疫磁気ビーズ濃縮法を検討する。(3)窪村は、astA保有大腸菌に共通して類似のプラスミドが検出されたことから、当該プラスミドに着目した解析を行うことにより、集団下痢症を引き起こすastA保有大腸菌の病原性解明に繋がる可能性がある。(4)小嶋は、白菜内部に存在する細菌の洗浄は困難であり、菌を増殖させないための温度管理が重要であることを示した。これらは、キムチにおける腸管出血性大腸菌発生予防対策の基礎データとなると考えられる。(5)大西は、地方自治体で広く活用可能な、効果的かつ効率的な食品の検査法を目指して作成した食品での腸管毒素原性大腸菌の検出法案を厚生労働省と協議を行い、発出を進める。
公開日・更新日
公開日
2026-08-17
更新日
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