VATER症候群の臨床診断基準の確立と新基準にもとづく有病率調査およびDNAバンク・iPS細胞の確立

文献情報

文献番号
201024096A
報告書区分
総括
研究課題名
VATER症候群の臨床診断基準の確立と新基準にもとづく有病率調査およびDNAバンク・iPS細胞の確立
課題番号
H22-難治・一般-040
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
小崎 健次郎(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 高山 真一郎(独立行政法人国立成育医療研究センター)
  • 黒澤 健司(地方独立行政法人神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター)
  • 小崎 里華(独立行政法人国立成育医療研究センター)
  • 岡本 伸彦(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター)
  • 水野 誠司(愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所)
  • 工藤 純(慶應義塾大学医学部)
  • 星野 健(慶應義塾大学医学部)
  • 赤松 和土(慶應義塾大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
VATER症候群(VATER連合)は、椎体・肛門・気管食道・橈骨・腎奇形の5徴により命名され、「疾患区分(17):奇形症候群」に属する。多系統に障害が発症する機序は不明であり、上記の暫定基準は不十分と考えられている。これまで、全国調査は行われておらず、原因は不明である。治療や合併症の管理に関する包括的な診療ガイドラインはない。本研究ではVATER症候群患者の診療に関わる各診療科の専門医が連携を強化して医療の質の向上基礎と疾患の原因究明に向けた取り組みを行った。
研究方法
疫学調査:小児外科専門施設179施設、小児遺伝学会専門医在籍施設166施設に対して過去5年間のVATER症候群の症例の調査票を送付した。原因遺伝子の同定に向けて、遺伝子変異解析システムの設計と動物への胎児期曝露によりVATER様の表現型を誘導するアドリアマイシンに結合するタンパクの単離を試みた。
結果と考察
197施設から回答を得てうち111施設にVATER症候群症例が確認された。全国患者数は最少で147名、上限としては500名程度の患者の存在が予測される。初年度の研究により全国の患者数は150~500人前後と算定された。二次調査票を送付し、120症例について回答を得た。アンケートで集積された120例のうち、水頭症合併症例と母体糖尿病合併症例は、病因論的には他のVATER症候群患者と区別すべきであることが先行研究により示されていることから、以後の解析では112例に限った解析をおこなった。鎖肛は112例中80例(71.5%)、食道気管奇形は112例中90例(80.4%)に認められた。また、特徴的な所見として十二指腸閉鎖が得られた。椎体および頬骨の異常は全体の約半数、橈側列の異常は全体の1/4に認められた。動物モデルより、発症と関連があると示唆されている遺伝子群の変異解析システムを設計した。皮膚線維芽細胞を培養し、山中4因子を導入して、リプログラミングを行った。アドリアマイシンによるVATER症候群様奇形の発症機転を探るため、磁性微粒子を利用して、アドリアマイシン結合蛋白の単離に成功した。
結論
我が国における初のVATER症候群の疫学調査を行った。十二指腸閉鎖がVATERに特異的な所見である可能性が示唆された。アドリアマイシン結合タンパクが単離され、VATER症候群の原因候補遺伝子であると期待される。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201024096C

成果

専門的・学術的観点からの成果
(1)我が国初の系統的なVATER症候群に対する全国調査を行い、本邦で初めて患者数を明らかにした。
(2)各患者の症状をデータベース化した。得られたデータベースを多変量解析の手法により分析し、群化をおこなった。
(3)新しいアドリアマイシン結合タンパクを新規に同定した。VATER症候群の新規候補遺伝子である。
臨床的観点からの成果
(1)これまでに報告が少ないが主要な症状の一つとして十二指腸閉鎖が示された。
(2)VATER症候群と診断されている患者の中に、18トリソミーやFanconi貧血が含まれていることが示された。両者の知能予後や生命予後は、他のVATER症候群患児と大きく異なるので鑑別診断として重要である。今後、臨床医に周知を図る計画である。
ガイドライン等の開発
日本医学会「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」
(平成23年2月発表)の立案に参加し、VATER症候群を含む奇形症候群の専門家の立場から意見を述べた。
その他行政的観点からの成果
奇形症候群の中で最も頻度が高く、病因も不明であるVATER症候群に対して、全国の奇形症候群を専門とする小児科医のコンソーシアムと各科の専門医が有機的に連携した。
このようなT字型の研究班構成は他の「多系統に症状を有する先天異常」の臨床研究のあり方を考える上で参考となる。
その他のインパクト
VATER症候群および本研究班の活動について一般小児科医師や患者・家族に広報するために、ウェブサイトを開設・公開した。
http://clin-res-vater.jp/ (現在、試験運用中)

発表件数

原著論文(和文)
9件
原著論文(英文等)
16件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nakayama , Kosaki K, and Okamoto N 
A case of Brachmann-de Lange syndrome with congenital diaphragmatic hernia and NIPBL gene mutation
Congenit Anom (Kyoto). 2010 , 50 , 129-132  (2010)
原著論文2
Okamoto N, Akimaru N, Matsuda K,
Co-occurrence of Prader-Willi and Sotos syndromes
Am J Med Genet A , 125 , 2103-2109  (2010)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2016-06-20

収支報告書

文献番号
201024096Z