ヤング・シンプソン症候群の診断基準作成と実態把握に関する研究

文献情報

文献番号
201024092A
報告書区分
総括
研究課題名
ヤング・シンプソン症候群の診断基準作成と実態把握に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H22-難治・一般-036
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
黒澤 健司(地方独立行政法人神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター 遺伝科)
研究分担者(所属機関)
  • 升野 光雄(川崎医療福祉大学 医療福祉学部 医療福祉学科)
  • 山内 泰子(川崎医療福祉大学 医療福祉学部 医療福祉学科)
  • 近藤 達郎(社会福祉法人聖家族会 重症心身障害児施設みさかえの園むつみの家)
  • 水野 誠司(愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所)
  • 安達 昌功(地方独立行政法人神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター 内分泌・代謝科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
13,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヤング・シンプソン症候群は、顔貌異常、先天性心疾患、甲状腺機能低下症、重度精神遅滞を呈する原因不明の奇形症候群で、その診断や遺伝形式、病因に関しては現在まで明確にされていない。本研究の目的は、1)ヤング・シンプソン症候群の診断基準の作成と疾患概念の再検討を行うこと、2)成人例も含めた患者数を評価し、合併症の実態を把握し、正確な自然例に基づく医療管理のプロトコールを作成すること、3)病因解明の手がかりとしての生物試料の保存(株化リンパ芽球の作成保存)、である。研究成果は、直接患者および患者家族に還元され、難治性疾患のよりよい医療管理の指標となりえる。
研究方法
1)疾患の発生頻度および臨床症状のスペクトラムを評価するために、ヤング・シンプソン症候群の全国1次調査をおこない、2)小児病院受診例から発生頻度推定をおこなった。3)既に臨床的に確定している7症例を中心に臨床症状をまとめ、診断基準を作成した。4)ヤング・シンプソン症候群原因遺伝子同定を目指した生体試料の保存をおこない、5)病因遺伝子同定を目的としたExome解析に着手した。
結果と考察
ヤング・シンプソン症候群全国1次調査では、160施設(240通)へ郵送し、118施設(回収率73.8%)の回答を得、確定例は1施設1例、ほかに疑い例が4例報告された(計5例)。研究班施設の7例を合わせると、合計で12例が今回の1次調査で検出された。神奈川県立こども医療センターでは20年間(1990―2009)に5例を経験したことから、約100,000出生に1例の発生頻度と推定した。確定7症例から、診断基準を、精神遅滞(中等度から重度)、眼瞼裂狭小を必須として付随する弱視・鼻涙管閉塞などの眼症状、内反足を初めとした骨格異常、内分泌学的異常(主に甲状腺機能低下症)、外性器異常(主に男性で停留精巣および矮小陰茎)、を主症状とした。除外項目として、他の奇形症候群あるいは染色体異常症を除外できるもの、とした。5症例でリンパ芽球による株化樹立、さらに3家系でtrio検体の保存が得られ、exome解析に着手した。本研究での成果を広く公開するためにホームページを開設した。
結論
 得られたヤング・シンプソン症候群の情報から診断基準を作成した。原因遺伝子同定を目標にExome解析に着手し、ゲノムレベルでの研究と臨床レベルでの態把握研究を推進する予定である。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201024092C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ヤング・シンプソン症候群7症例の長期観察による研究を第60回米国人類遺伝学会(2010年11月2日ワシントンD.C.)、および第55回日本人類遺伝学会(2010年10月28日、さいたま市)で公表した。本症候群の今回ほどの大規模な研究は世界的にもなく、画期的な研究であると考えられた。Dysmorphologyの専門家による臨床診断が一つの疾患概念を明確に規定し、それをexome解析での病因遺伝子同定につなげてゆく手法は、世界的にみられる新しい研究手法であり、本研究で取り入れ現在も進行中である。
臨床的観点からの成果
ヤング・シンプソン症候群の発生頻度推定を、神奈川県先天異常モニタリング調査のデータと小児病院遺伝外来データから、10万-20万出生に1例と推定した(欧州人類遺伝学会発表予定、2011年5月29日、アムステルダム)。診断確定7症例の長期観察による臨床データから、診断基準を1)精神遅滞、2)眼症状、3)骨格異常、4)内分泌学的異常、5)外性器異常、にまとめた。このことにより疾患概念がより明確になり、正確な診断基準に基づいた実態把握が可能となった。
ガイドライン等の開発
策定したヤング・シンプソン症候群の診断基準にそって疾患概念を明確にし、長期医療管理7症例から得られた医療管理記録を参考に、医療管理指針(暫定版)作成を試みた。その構成は、1)診断基準、2)検査、3)疫学、4)成育発達に基づいた臨床症状、5)自然歴に基づいた医療管理指針、からなり、より具体的で臨床的有用性にあるものを目指した。
その他行政的観点からの成果
ヤング・シンプソン症候群の発生頻度を10-20万出生に1例と推定したことから我が国においては、少なくとも数十例以上の罹患者が潜在していることが推測された。今回策定された診断基準はこれら潜在症例を明らかにすることが予想される。医療管理指針(暫定版)を明確にしたことにより具体的な医療需要の内容があきらかとなった。
その他のインパクト
公開シンポジウム「ヤング・シンプソン症候群の会」を2011年2月11日に神奈川県立こども医療センターで開催し、5家系の参加を得ることができた。アンケート調査により、多くの患者家族が病因の解明、社会の理解、行政的支援を求めていることがあきらかとなった。また、本疾患研究で得られた成果と情報を公開する目的で、ホームページを開設した(http://kcmc.jp/yss/index.html)。

発表件数

原著論文(和文)
1件
黒澤健司 神経線維腫症1型における分子細胞遺伝学的スクリーニング 日レ病会誌 2010;1:35-37.
原著論文(英文等)
3件
Tsuyusaki Y et al., Pediatr Int 2010;52:547-550.
その他論文(和文)
2件
黒澤健司 細胞遺伝学的診断のアルゴリズム.日本臨床 2010. 黒澤健司 外表奇形.小児内科 2010.
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
23件
榎本啓典、黒澤健司ほか Young-Simpson症候群の長期的な臨床像―新生児期から青年期にかけて― 第55回日本人類遺伝学会 2010.10.27-30. さいたま市
学会発表(国際学会等)
2件
Enomoto K et al. Follow-up and Management of Young-Simpson Syndrome. 60th ASHG 2010.11.2-6. USA.
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
公開シンポジウム「ヤング・シンプソン症候群の会」(平成23年2月11日、神奈川県立こども医療センター、横浜)開催。ホームページ開設(http://kcmc.jp/yss/index.html)。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2016-06-29

収支報告書

文献番号
201024092Z