産業現場で活動する保健師・看護師の活用及び資質向上のための方策に係る研究

文献情報

文献番号
202522017A
報告書区分
総括
研究課題名
産業現場で活動する保健師・看護師の活用及び資質向上のための方策に係る研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23JA2001
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
中谷 淳子(産業医科大学 産業保健学部 産業・地域看護学)
研究分担者(所属機関)
  • 錦戸 典子(東海大学健康科学部)
  • 井上 彰臣(産業医科大学 IR推進センター)
  • 吉川 悦子(高橋 悦子)(日本赤十字看護大学 看護学部)
  • 千葉 敦子(青森県立保健大学 健康科学部 看護学科)
  • 金森 悟(帝京大学 大学院 公衆衛生学研究科)
  • 後藤 由紀(四日市看護医療大学)
  • 久保 善子(原 善子)(共立女子大学 看護学部)
  • 伊藤 美千代(東京医療保健大学 千葉看護学部)
  • 安部 仁美(公立大学法人 山梨県立大学 看護学部)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
2,845,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究課題では、令和5年度に「産業看護職に求められる実践能力およびコンピテンシーに関するスコーピングレビュー」と「中小規模事業場における産業看護職の活用ニーズに関するインタビュー調査」を実施し、産業看護職に求められる知識・能力の抽出を行った。これらの調査結果に基づき、令和6年度~令和7年度上半期にかけて、産業保健活動未経験あるいは経験の浅い看護職の受講を想定したe-ラーニング(全50項目)と2日間の集合研修からなる教育プログラムを開発した。開発した教育プログラムが受講者のニーズに即しているかを検証することを目的に、令和7年度下半期にモデル事業を実施し、参加した看護職を対象に教育プログラムの有用性に関するアンケート調査を行った。

研究方法
令和7年5~8月にかけて、企業や労働衛生機関の産業医、産業看護職、安全衛生担当者、独立開業している産業医、保健師、労働衛生コンサルタント等を通じて、モデル事業の参加対象となり得る看護職に対して参加の呼びかけを行った。
 モデル事業への参加申込があった看護職に対し、令和7年9月から順次e-ラーニングを配信し、e-ラーニングの受講(集合研修の事前課題を含む)と集合研修(令和7年10月4~5日に東京都内で開催)への参加を依頼するとともに、集合研修終了後に、教育プログラムの有用性に関するアンケート調査への回答を依頼した。
 アンケート調査では、基本属性(保有資格、産業看護職としての経験年数、所属、教育プログラムの受講状況)、e-ラーニングおよび集合研修に対する評価(取り組みやすさ、受講期間、分量、理解度、難易度など)、教育プログラム全体に対する評価(受講前に比べて自信がついたか、自身が必要としていたものだったか、知り合いの看護職に勧めるか、全体的な満足度)、追加で学びたい事項、教育プログラムを改良するにあたっての意見について尋ね、量的に分析が可能な項目について単純集計を行った。
結果と考察
 e-ラーニングについては、取り組みやすさ、難易度、理解度のいずれも概ね良好な評価が得られ、各項目において90%以上が「十分に理解できた」または「概ね理解できた」と回答していた。一方で、77.3%が受講期間を「短かった」または「短すぎた」と回答し、推奨図書による自己学習についても十分に実施できていない者が多かった。今回のモデル事業では教材開発に時間を要したため結果的に受講期間が約1か月となった。全50項目という内容量を踏まえると、今後は2か月以上の受講期間を設定するなど、より余裕を持った学習スケジュールの検討が必要と考えられた。

 集合研修については、各プログラムの理解度は良好であり、ほぼ全員が内容を理解できたと回答した。一方、59.1%が分量を「多い」、難易度を「難しい」と回答しており、受講者に一定の負担感があった可能性が示唆された。そのため、受講者の基礎知識や経験、研修時間等を踏まえた内容や難易度の調整が必要と考えられた。

 教育プログラム全体については、必要性、推薦意向、満足度のいずれも高い評価が得られた。また、77.3%が受講後に産業保健活動への自信が向上したと回答しており、教育プログラムが自己効力感の向上に寄与した可能性が示唆された。一方で、一部の受講者は「やや自信がなくなった」と回答しており、学習を通じて産業保健活動の幅広さや課題の多様性を認識した結果である可能性が考えられた。さらに、メンタルヘルス支援や両立支援等、発展的内容に関する学習ニーズも示されていた。
結論
本研究で開発した基礎教育プログラムは、産業保健活動の経験がない、または少ない看護職に対して、基礎知識および実践力を習得させる教材として有用であることが示唆された。e-ラーニングおよび集合研修のいずれにおいても理解度や満足度は概ね良好であり、多くの受講者が産業保健活動への自信を高めていた。一方で、受講期間や研修内容の分量・難易度については改善の余地があり、今後は受講者の経験や学習環境に応じた調整が必要である。また、多様な学習ニーズに対応するため、アドバンスコース等の発展的な学習機会を整備する必要性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2026-10-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-10-23
更新日
-

文献情報

文献番号
202522017B
報告書区分
総合
研究課題名
産業現場で活動する保健師・看護師の活用及び資質向上のための方策に係る研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23JA2001
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
中谷 淳子(産業医科大学 産業保健学部 産業・地域看護学)
研究分担者(所属機関)
  • 井上 彰臣(産業医科大学 IR推進センター)
  • 錦戸 典子(東海大学健康科学部)
  • 吉川 悦子(高橋 悦子)(日本赤十字看護大学 看護学部)
  • 金森 悟(帝京大学 大学院 公衆衛生学研究科)
  • 千葉 敦子(青森県立保健大学 健康科学部 看護学科)
  • 後藤 由紀(四日市看護医療大学)
  • 久保 善子(原 善子)(共立女子大学 看護学部)
  • 伊藤 美千代(東京医療保健大学 千葉看護学部)
  • 安部 仁美(公立大学法人 山梨県立大学 看護学部)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 近年、労働者の高年齢化、メンタルヘルス対策、治療と仕事の両立支援、健康経営の推進などにより、産業保健機能の強化が求められている。中小規模事業場を含む幅広い職場において、産業看護職への期待が高まる一方、産業保健活動未経験または経験の浅い看護職に対する体系的な教育体制は十分とは言えない。本研究では、産業看護職の活用促進および資質向上を目的として、産業看護職に求められる実践能力および教育ニーズを明らかにし、それらに基づく教育プログラムおよび教材を開発・評価するとともに、今後の産業看護職の育成のあり方について検討した。
研究方法
 令和5年度は、教育プログラム開発に向けた基礎調査を実施した。①潜在保健師・看護師を対象としたアンケート調査では、産業看護職としての就労意欲および研修ニーズを把握した。②「産業看護職に求められる実践能力ならびにコンピテンシー」に関するスコーピングレビューでは、産業看護実践能力を体系的に整理した。③中小規模事業場の経営者や安全衛生担当者を対象としたインタビュー調査では、産業看護職に期待される役割や必要な能力について検討した。 
加えて、産業看護職の現任教育を運営している関係団体へのヒアリングを行い、教育プログラムに加えるべき教育内容や研修運営に関する意見を聴取した。

 令和6年度は、前年度の研究成果を踏まえ、教育プログラムおよび教材の開発を行った。班会議において教育目的、対象者、評価方法等を整理し、スコーピングレビューおよびインタビュー調査結果をもとに教育項目を抽出した。さらに、教育設計学(Instructional Design)の考え方を参考に教育内容を体系化し、最終的に7章25節50項目からなるe-ラーニングと、約2日間の対面型集合研修から構成される教育プログラムを設計した。また、産業医および管理的立場にある産業看護職へのヒアリングを通じてプログラム内容の妥当性を確認した。

 令和7年度は、教育プログラムの有用性を検証するためモデル事業を実施した。令和7年上半期に参加者募集を行い、9月よりe-ラーニングを配信した。また、令和7年10月4~5日に集合研修を実施し、研修終了後にアンケート調査を行った。
結果と考察
 潜在保健師・看護師を対象とした調査では、保健師・看護師ともに80%以上が産業看護職としての就労を前向きに検討していた。また、研究班が提示した研修テーマにおいて、多くのテーマで80%以上が「受けておきたい」と回答しており、産業保健分野に対する学習ニーズの高さが確認された。一方、一部のテーマでは「用語の意味が分からない」との回答もみられたことから、初学者向けには基礎的事項を含めた丁寧な教育の必要性が示された。
 
 スコーピングレビューでは、産業看護実践能力は「基本的実践能力」と「高度実践能力」に分類され、「産業看護職としての基盤」「コーディネーション」「マネジメント」「産業看護活動」の4カテゴリーが抽出された。
 
 中小規模事業場へのインタビュー調査では、産業看護職が1次~3次予防まで幅広い役割を担っていることに加え、健康意識向上や生活習慣改善、受診促進、担当者負担軽減など多面的な支援効果が確認された。これらの結果から、産業看護職には幅広い知識と実践能力が求められており、体系的な教育研修の必要性が明らかとなった。
 
 モデル事業では、e-ラーニングおよび集合研修の理解度は概ね良好であり、教育プログラム全体についても必要性、推薦意向、満足度のいずれも高い評価を得た。また、77.3%が受講後に産業保健活動への自信が向上したと回答しており、教育プログラムが自己効力感の向上に寄与した可能性が考えられた。一方で、集合研修の分量・難易度に対する負担感もみられたことから、今後は受講期間や教育内容の調整が必要と考えられた。さらに、メンタルヘルス支援や治療と仕事の両立支援など、発展的内容に関する学習ニーズも確認された。
結論
本研究では、産業看護職に求められる実践能力および教育ニーズを明らかにし、それに基づく教育モデルの開発と評価を行った。
 その結果、産業保健活動未経験または経験の浅い看護職を対象とした、eラーニングと集合研修を組み合わせた体系的かつ実践的な教育プログラムを構築することができた。モデル事業においても、本教育プログラムは概ね良好な評価を得ており、産業保健活動に対する自信の向上にも寄与していた。
 一方で、受講期間や内容量、難易度調整などの課題も明らかとなり、今後は受講者の経験や学習状況に応じた柔軟な運用や継続的改善が必要である。
 本研究で開発した教育プログラムは、今後の産業看護職育成に活用できる実践的教育モデルとして、産業保健機能の強化および中小規模事業場における産業保健活動の充実に寄与することが期待される。

公開日・更新日

公開日
2026-10-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-10-23
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202522017C

成果

専門的・学術的観点からの成果
産業現場で活動する保健師・看護職(以下、産業看護職)に求められる実践能力、コンピテンシーおよび教育ニーズを多面的に明らかにした。スコーピングレビュー、潜在看護職調査、中小規模事業場調査、関係団体ヒアリングを通じて、産業看護実践能力の体系化と教育課題を整理し、産業看護職育成に関する学術的基盤となる知見を提示した。
臨床的観点からの成果
産業保健活動未経験または経験の浅い看護職を対象とした教育プログラム開発・試行し、その有効性を評価した。受講者の多くが教育内容を十分理解できたと回答し、約8割が産業保健活動を実施する自信の向上を認めた。個別支援のみならず、集団支援や組織支援に必要な実践能力の習得を支援する教育モデルとして有用性が示された。
ガイドライン等の開発
基礎調査結果および専門家ヒアリングを踏まえ、産業保健未経験または経験の浅い看護職を対象とした教育プログラムを開発した。プログラムは7章25節50項目から構成されるeラーニングと2日間の集合研修で構成され、産業保健の基礎知識から実践的な支援技術、多職種連携、組織対応までを体系的に学習できる内容とした。モデル事業による評価を経て最終版を作成した。
その他行政的観点からの成果
産業看護職への就労意向を有する潜在保健師・看護師が多数存在することを明らかにするとともに、中小規模事業場における産業看護職活用ニーズと育成上の課題を整理した。本研究で開発した教育プログラムは、産業保健人材の確保・育成を推進し、中小規模事業場を含むすべての事業場における産業保健機能の強化や労働者の健康保持増進施策の充実に資することが期待される。
その他のインパクト
本研究において開発した教育プログラムは、令和8年度より看護職を対象に産業医科大学において実施予定であり、産業保健人材の育成および質の向上に資することが期待される。今後、我が国の産業保健機能の強化および産業看護職の活用促進に向けて、関係機関と連携しながら教育プログラムの継続的な改善と普及に取り組む予定である。また、本研究成果については、学会発表や学術論文等を通じて広く公表するとともに、産業保健関係者や看護職への普及を図る予定である。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
Competencies Required for Occupational Health Nurses: A Scoping Review. Journal of Occupational Heal
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
日本産業衛生学会 中小企業安全衛生研究会 第57回全国集会1件、第97回日本産業衛生学会学術集会 4件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
シンポジウムにおいて、シンポジストとして講演

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2026-06-10
更新日
-

収支報告書

文献番号
202522017Z