遺伝性女性化乳房の実態把握と診断基準の作成

文献情報

文献番号
201024091A
報告書区分
総括
研究課題名
遺伝性女性化乳房の実態把握と診断基準の作成
課題番号
H22-難治・一般-035
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
生水 真紀夫(千葉大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 深見 真紀(国立成育医療研究センター 分子内分泌研究部)
  • 原田 信広(藤田保健衛生大学 医学部)
  • 横田 千津子(城西大学 薬学部)
  • 花木 啓一(鳥取大学 医学部)
  • 野口 眞三郎(大阪大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
遺伝性女性化乳房症は、男性に乳房の高度発育、低身長・性欲の低下などをきたす疾患である。アロマターゼ遺伝子の異常によって生じる疾患であり、アロマターゼ阻害剤の早期投与により発症を予防出来る可能性が示されている。
本症は稀な疾患で、わが国における実態は不明である。これは、本疾患が新しい疾患であり診断基準が未確定であること、診断確定に必要な遺伝学的診断ファシリティーがないことなどによる。
本疾患の早期診断・治療を目的として、(1)わが国における患者の実態把握と(2)細胞遺伝学的診断法の確立を行う。
研究方法
1.文献調査
1983年から2010年の間に医学中央雑誌に収載された文献を渉猟し、疾患頻度・臨床像などを調査した。
2.アンケート調査
患者数の把握を主な目的として、一次および二次の全国調査を実施した。
3.細胞遺伝学的診断法
染色体CGH arrayなどの系統的診断法を開発し、診断法の評価を実施した。
結果と考察
1.文献調査
約30年の間に、わが国において54症例の特発性女性化乳房症症例が報告されており、そのうち2症例に家族歴があり、遺伝性女性化乳房症の症例であることが確実と考えられた。
2.アンケート調査
家族歴があり遺伝性女性化乳房症であることがほぼ確実と考えられた症例(カテゴリー1a)が26例、臨床像から遺伝性女性化乳房症の可能性があると考えられた症例(カテゴリー1b)が155例あることが判明した。症例のほとんどが細胞遺伝学的診断が試行されていない症例で、薬物療法も行われていなかった。1a症例はすべて18歳以下の発症例であった。
3. 細胞遺伝学的診断法
新たに開発して19番染色体CGH array、long range PCR、5’RACEを組み合わせた系統的アロマターゼ遺伝子変異スクリーニングにより、遺伝子重複などの新たな遺伝子変異を同定することができた。
結論
アンケート調査結果などから、特発性女性化乳房症の患者はわが国に20?180名の幅で存在すると推定された。このうち、およそ20名が家族性女性化乳房症であることがほぼ確実な症例であったが、その他の症例については孤発例の可能性があるものと考えられた。これらの症例には重複例も含まれている可能性もある。今後の細胞遺伝学検査により診断を確定する必要があると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201024091C

成果

専門的・学術的観点からの成果
わが国における遺伝性女性化乳房症の患者の概数(20例)を初めて明らかにした。また、患者の多くが小児内分泌科・外科・形成外科で診察を受けており、初診時の年齢がいずれも18歳以下であること、そのほとんどが細胞遺伝学的診断を受けておらず、発症予防のための投薬治療も行われていないことが明らかとなった。本研究により、遺伝性女性化乳房症の実態が初めて明らかとなった
臨床的観点からの成果
わが国における本症患者の実態を明らかにし患者の追跡調査が可能になったことで、臨床的診断のための基本的な情報を得る体制が構築された。また、得られた臨床情報を元にわが国における本症の臨床像を明らかにすることは、診断基準の策定などのための貴重な資料となるものである。本症の早期診断・治療介入が行われていない実態が明らかとなり、あらためて本疾患を医療者に啓蒙することおよび遺伝子診断のためのファシリティーの供給が大切であることが明らかになった。
ガイドライン等の開発
臨床診断のためのガイドライン策定のため、情報を収集している段階にある。
その他行政的観点からの成果
ホームページを通じて、医療者や患者からの問い合わせを受けており、社会への啓蒙につながっている。Fukami M, Shozu M, Soneda S,
その他のインパクト
国外からも診断依頼があり、細胞遺伝学的診断法についても評価を受けつつある。

発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Fukami M, Shozu M, Soneda S et al.
Aromatase Excess Syndrome: Identification of Cryptic Duplications and Deletions Leading to Gain of Function of CYP19A1 and Assessment of Phenotypic Determinants.
J Clin Endocrinol Metab.2011 Apr 6. [Epub ahead of print]  (2011)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024091Z