オピッツ三角頭蓋症候群の症状把握と発達予後予測に重要な分子メカニズムの解明

文献情報

文献番号
201024090A
報告書区分
総括
研究課題名
オピッツ三角頭蓋症候群の症状把握と発達予後予測に重要な分子メカニズムの解明
課題番号
H22-難治・一般-034
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
要 匡(国立大学法人琉球大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 成富 研二(国立大学法人琉球大学 大学院医学研究科 )
  • 宮崎 徹(国立大学法人東京大学 大学院医学研究科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は、奇形症候群の一つオピッツ三角頭蓋症候群の症状と頻度を把握するとともに原因とその分子メカニズムについて明らかにして発達予後を含めた診断を可能にすることを目的とする。
研究方法
1)オピッツ三角頭蓋症候群の症状総括
 収集した検体情報から、臨床症状の頻度を算出した(オピッツ三角頭蓋症候群25例、オピッツC様症候群新規8例(いずれも海外症例を含む)。
2)患児家族でのエクソーム解析
 CD96に変異を認めないオピッツ三角頭蓋患者家族で全エクソンキャプチャーおよび次世代シーケンス解析を行った。
3)患者細胞からのiPS細胞樹立
 線維芽細胞より,iPS細胞の樹立を試みた。幹細胞同定は,形態および ALP活性など未分化マーカー発現の確認により行った。
4)CD96遺伝子スクリーニングシステムの構築とCD96シグナル伝達解析
 遺伝子診断を目的として、PCR-高精度融解曲線分析法(HRM法)による変異スキャニングシステムを構築した。
 また、発現ベクターを用い、CD96と反応するタンパク質をin vitroで検索した。
結果と考察
 オピッツ三角頭蓋症候群において、随伴症状として、顔貌では、眼裂斜上、内眼角贅皮、耳介後方偏位の頻度が高く、特に歯肉部腫脹・不正が、半数以上に認められ、診断の有用性が高いと思われた。精神発達遅滞も20/22と高頻度であった。
 CD96遺伝子変異のない患児及び両親でのエクソーム解析では、患児、両親についてそれぞれ、74313, 69992, 74525個のSNPを検出した。その中で患児に有意と思われるSNPは、528個であった。
 患者由来線維芽細胞よりiPS細胞を樹立できた。分化誘導による病態発現解析に有用と思われた。
 CD96遺伝子についてPCR-HRM法を用いて、健常者で3つの登録SNP、2つの新規を検出できた。
 CD96と親和性の高いタンパク質を同定し、新規原因候補としての可能性が考えられた。
結論
 症例のまとめによって、オピッツ三角頭蓋症候群の、診断に重要な所見をピックアップすることができた。しかしながら、予後等も含めた診断には、さらなる蓄積が重要と考えられる。
 エクソーム解析は、有用であったが、確実な結果を得るため、複数例のエクソーム解析の追加が必要と考えられる。
 現時点での遺伝子診断には、今回構築したHRM法によるCD96遺伝子スキャニングが有用である。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201024090C

成果

専門的・学術的観点からの成果
原因の一つとして判明しているCD96に対する結合タンパク質を同定できたことは、疾患のメカニズム解明のために重要な知見が得られたと考えられる。また、その他の原因探索として、新しい手法である次世代シーケンサーを用いたエクソーム解析を開始し、学術的および国際的に研究のイニシアチブをとれた点は重要であったと思われる。成果は、日本人類遺伝学会第55回大会、60thASHGmeeting、第17回出生前診断研究会等で発表した。
臨床的観点からの成果
CD96遺伝子診断について、ダイレクトシーケンス法に加え、迅速なスクリーニング法の開発を行った。現在、オピッツ三角頭蓋症候群の遺伝子診断を提供できる唯一の機関として、国内に加え、国際的にも周知され、国外については、米国、カナダ、ブラジル、英国、フランス、オランダ、ドイツ、イタリア、スペイン、フィンランド、トルコなどの研究施設・病院より、オピッツ三角頭蓋症候群に関する遺伝子解析の依頼が来ている。
結果として、国際的にオピッツ三角頭蓋症候群や類似疾患のデータの集積機関としても認知されつつある。
ガイドライン等の開発
現在、ガイドラインの作成までには至っていないが、蓄積された症例より、三角頭蓋(100%)に伴う症状の頻度を算出し、一覧表にするとともに、他の疾患との鑑別により、診断に有用と思われる症状(顔貌、歯肉部腫脹・不正、項部皮膚弛緩等)の抽出を行った。
その他行政的観点からの成果
現在のところ特に無し。
その他のインパクト
公開シンポジウム「OKINAWAライフサイエンスシンポジウムIII」(H23年1月20日開催)で三角頭蓋症候群の解析等について講演した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024090Z