文献情報
文献番号
201024087A
報告書区分
総括
研究課題名
乳児特発性僧帽弁腱索断裂の病因解明と診断治療法の確立に向けた総合的研究
課題番号
H22-難治・一般-031
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
白石 公(国立循環器病研究センター 小児循環器部)
研究分担者(所属機関)
- 市川肇(国立循環器病研究センター 小児心臓外科 )
- 森崎隆幸(国立循環器病研究センター 分子生物学部)
- 黒嵜健一(国立循環器病研究センター 小児循環器部 )
- 北野正尚(国立循環器病研究センター 小児循環器部 )
- 坂口平馬(国立循環器病研究センター 小児循環器部 )
- 池田善彦(国立循環器病研究センター 臨床検査科・病理)
- 中西敏雄(東京女子医科大学 循環器小児科)
- 賀藤均(国立成育医療研究センター 器官病態系内科部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
乳児特発性僧帽弁腱索断裂は、生来健康な乳児が突然ショック状態に陥り、早期診断と早期治療が行われないと生命の危険にさらされる重篤な疾患である。しかし国内外での実態調査はなく、教科書に独立疾患として記載がないために、本疾患は一般小児科医に認知されてこなかった。近年発症が増加傾向にあり、早急に診断および治療ガイドラインを作成し病因研究を行う必要がある。
研究方法
全国の小児科専門医研修施設511施設に1次アンケート調査を、本疾患を経験した施設に詳細な臨床経過を記載する2次アンケート調査を実施した。回収することのできた2次アンケート調査票から、過去10年間に86例の発症が確認された。要診療施設に未回収の施設が含まれていたこと、および、過去の症例には「乳児突然死症候群」と診断されていた可能性があるため、実際の発症数は更に多いものと予想される。
結果と考察
86例中85例が1歳未満の発症であり、在胎週数は38.8週+/-1.5週、胎児期/出生後の経過、予防接種に特異的所見はなく、男女比は48:38、平均月齢は4.4ヶ月(大半が4~6ヶ月時の発症)、平均体重は6.83+/-1.19kgであった。7例に川崎病既往、2例に母親由来SSA抗体陽性例が認められた。全例で数日の感冒様前駆症状の後、呼吸困難や顔面蒼白などのショック症状をきたしていた。発症は近年増加しており、平成20~21年(16~17例)をピークとしていた。季節別では春から夏の発症が多かった。検査所見では、発症時の白血球数は17,042+/-8,158/uLと高値を示すも、CRP値は2.49+/-2.82mg/dlと低値、CTRは55.4+/-5.7%と顕著な心拡大は認められなかった。 75 例に外科手術が実施され、24例(27.5%)が人工弁置換を余儀なくされた。死亡例は6例(6.9%)で、8例(9.8%)に中枢神経障害を合併した。病理組織標本が得られた21例(24%)では、主に単核球浸潤および弁の粘液様変性が見られた。
結論
乳児特発性僧帽弁腱索断裂の世界初の臨床実態調査を行い、特徴として死亡例が多く、救命例も人工弁置換や中枢神経合併症を残す症例が多く、発症が増加傾向にあることなどが明らかになった。生来健康な乳児に突然発症するこの疾患の早期診断と治療のガイドラインを早急に作成するとともに、発症予防と的確な治療法の開発に向けての基礎研究を行う必要がある。
公開日・更新日
公開日
2011-12-27
更新日
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