文献情報
文献番号
201024085A
報告書区分
総括
研究課題名
難治頻回部分発作重積型急性脳炎の診断基準作成のための疫学研究
課題番号
H22-難治・一般-029
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
佐久間 啓(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 免疫研究部)
研究分担者(所属機関)
- 斎藤 義朗(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 病院 小児神経科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
2,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
難治頻回部分発作重積型急性脳炎(以下AERRPSと略)は主に学齢期の小児に見られる原因不明の脳炎である.我々は報告例などを元に本疾患の臨床像をまとめて暫定的な診断基準を作成したが,診断基準が適切であるかどうかを検証する必要性が指摘されていた.本研究では,AERRPSと類縁疾患との共通点および相違点を明らかにし,これらのデータに基づいて最終的にAERRPSの診断基準を作成することを目的とする.
研究方法
AERRPSならびに類縁疾患を対象として、全国の小児神経科医に対するアンケート調査を実施した.集まった症例は5例で,内訳はAERRPS2例,自己免疫性辺縁系脳炎1例,抗NMDA受容体脳炎1例,嗜眠性脳炎1例であった.この他に2007年から2010年までの4年間に我が国で21例のAERRPS症例が報告されており,このうち臨床情報の記載が十分でなかった8例を除いた13例も今回の研究の対象に含め,計15症例を対象として臨床症状・検査所見,治療,予後などについて検討した.
結果と考察
発症は男児にやや多く,幼児?学童が中心だった.全例で発熱を認めたが,発熱の原因が明らかであったものは3例のみであった.初発症状は大部分がけいれんで,精神症状や不随意運動で発症した例はなかった.発作症状は大部分が眼球偏位,顔面間代であった.髄液細胞増加は半数以上,脳波以上は全例(ほとんどが高振幅徐波)で認められたが,MRIで病初期から異常を認めた例は少なかった.全例で抗けいれん薬の持続静注量法が行われていた.最初はmizazolamが使用される場合が多いが,治療として多くの場合は効果不十分でbarbiturateの大量持続静注を要していた.またphenobarbital大量療法の実施率が4割と高かった.mPSLパルス療法をはじめとする免疫調整療法は半数近くで併用されていた.予後は大部分が知的障害を残したが,最重度知的障害を認めたのは2例のみで,急性期に重篤な経過を呈したにもかかわらずIQ80以上で社会復帰を遂げた例もあった.後遺症としてのてんかんは全例に認められたが,適切な抗てんかん薬の投与によりけいれんが抑制された例もあった.
結論
本研究の結果から,従来の暫定的な診断基準の内容が概ね妥当であることが証明された.しかし一方でいくつか修正すべき点も確認されたことから,これに基づいて診断基準を改定した,
公開日・更新日
公開日
2011-12-27
更新日
-