高齢労働者の転倒災害防止に向けたOccupational Fall Risk Assessment Tool(OFRAT)短縮版の開発

文献情報

文献番号
202522001A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢労働者の転倒災害防止に向けたOccupational Fall Risk Assessment Tool(OFRAT)短縮版の開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
23JA1002
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
大須賀 洋祐(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 研究所 フレイル研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 笹井 浩行(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) 自立促進と精神保健研究チーム)
  • 畑中 翔(東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム)
  • 中田 由夫(筑波大学 体育系)
  • 岡 敬之(東京大学 医学部附属病院 22世紀医療センター 運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
3,137,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢労働者の増加に伴い、職場における転倒災害の予防は労働安全衛生上の重要な課題となっている。高齢労働者の転倒は、身体機能の低下だけでなく、既往歴、服薬、感覚機能、作業内容、職場環境などが複合的に関与して発生するため、単一の身体機能検査のみではリスクを十分に把握することが難しい。Occupational Fall Risk Assessment Tool短縮版(OFRAT-5)は、就業中の転倒リスクを簡便かつ多面的に評価するために開発された5項目の評価ツールである。本研究では、就業中の転倒回数を0回、1回、2回以上に分類し、OFRAT-5が単回転倒および複数回転倒のリスク評価に有用であるかを検討した。
研究方法
研究参加者は、国立長寿医療研究センターが実施した東浦研究、ならびに東京都健康長寿医療センター研究所が実施したお達者健診および板橋健康長寿縦断研究に参加した65歳以上の地域在住高齢者のうち、月4日以上の有償就労を行っている者とした。ベースライン調査時に666名が登録され、同意撤回または転倒報告の未提出等があった者を除外し、最終的な解析対象者は592名であった。主要アウトカムは、12か月間の追跡期間中に発生した就業中の転倒とした。参加者には、転倒情報を1か月に一度報告するよう求めた。OFRAT-5は、過去1年間の転倒歴、糖尿病、転倒リスクを高める薬剤の使用、主観的な視力不良、敏捷性の低下の5項目で構成され、0点を低リスク、1点を中リスク、2点以上を高リスクに分類した。OFRAT-5リスクカテゴリと就業転倒カテゴリとの関連は、多項ロジスティック回帰分析により検討し、年齢、性、身体的作業の有無を調整した。
結果と考察
解析対象者の年齢中央値は75歳、男性は313名(52.9%)であった。OFRAT-5リスクカテゴリの内訳は、低リスク群325名(54.9%)、中リスク群200名(33.8%)、高リスク群67名(11.3%)であった。12か月間の追跡期間中、就業転倒は0回509名(86.0%)、1回47名(7.9%)、2回以上36名(6.1%)であった。多項ロジスティック回帰分析の結果、低リスク群を基準とした場合、単回転倒のオッズ比は中リスク群で2.04(95%信頼区間:1.09–3.84)、高リスク群で1.12(0.37–3.45)であった。一方、複数回転倒のオッズ比は中リスク群で1.51(0.68–3.36)、高リスク群で4.33(1.79–10.47)であった。傾向性の検討では、単回転倒では有意な傾向は認められなかったが、複数回転倒ではリスク段階の上昇に伴う有意な関連が認められた。これらの結果は、OFRAT-5が単なる転倒の有無だけでなく、反復転倒リスクを有する高齢労働者の識別にも有用である可能性を示している。特に、高リスク群では複数回転倒との関連が明確であり、身体機能、疾患、服薬、視覚機能など複数のリスク要因が蓄積した労働者を把握するうえで有用と考えられる。
結論
OFRAT-5は、地域在住の高齢労働者において、単回転倒および複数回転倒のリスク評価に有用である可能性が示された。特に高リスク群では複数回転倒との関連が強く、職域で優先的に支援すべき高齢労働者を把握するための実用的なスクリーニングツールとなり得る。
現在、OFRAT-5をスマートフォンやタブレット端末で評価可能なウェブ評価システムとして国立長寿医療研センターのホームページ上に公開している。こらを有効に活用することで、職場における評価、判定、フィードバックの標準化が期待される。
なお、本年度の主要解析結果(「転倒回数」をアウトカムとした発生率比に基づく詳細な予測妥当性評価)や公開した転倒リスク評価システムのユーザビリティ調査の結果については、原著論文として別途公表予定である。

公開日・更新日

公開日
2026-10-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-10-22
更新日
-

文献情報

文献番号
202522001B
報告書区分
総合
研究課題名
高齢労働者の転倒災害防止に向けたOccupational Fall Risk Assessment Tool(OFRAT)短縮版の開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
23JA1002
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
大須賀 洋祐(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 研究所 フレイル研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 笹井 浩行(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) 自立促進と精神保健研究チーム)
  • 畑中 翔(東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム)
  • 中田 由夫(筑波大学 体育系)
  • 岡 敬之(東京大学 医学部附属病院 22世紀医療センター 運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本では高齢者の雇用拡大に伴い、高齢労働者による労働災害、とくに転倒災害の予防が重要な課題となっている。就業中の転倒には、身体機能の低下だけでなく、慢性疾患、服薬、視覚機能、作業内容、職場環境など多様な要因が関与する。しかし、既存の評価ツールは身体機能評価に偏る傾向があり、就業中の転倒を予測するための妥当性も十分に検証されていない。本研究では、高齢労働者の就業中転倒リスクを多面的に評価するOccupational Fall Risk Assessment Tool(OFRAT)に基づき、職場で短時間かつ低負担に実施可能な短縮版評価ツールであるOFRAT-5を開発し、その信頼性、予測妥当性、外部妥当性を検証した。さらに、OFRAT-5をスマートフォンやタブレット端末等で実施できるウェブ評価システムを構築し、職域での実装可能性を検討した。これらの主要解析結果は原著論文として別途公表予定である。したがって、本報告書では、OFRAT-5と就業中の単回転倒および複数回転倒との関連に焦点を当てて報告する。
研究方法
研究参加者は、国立長寿医療研究センターが主導する東浦研究、東京都健康長寿医療センターが主導するお達者研究および板橋健康長寿縦断研究に参加した地域在住高齢者のうち、65歳以上で月4日以上、有償で就業している666名とした。このうち、追跡期間中の同意撤回や転倒報告未提出者等を除外し、最終解析対象者は592名であった。本研究は、ヘルシンキ宣言および「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」に基づき、関連機関の倫理審査委員会の承認を得て実施した。主要アウトカムは12か月間の追跡期間中に発生した就業中の転倒とし、毎月の郵送調査により把握した。転倒は、意図せず地面またはより低い位置に身体が接触した事象と定義し、意識消失、麻痺、てんかん発作、他者や車両との衝突による転倒は除外した。OFRAT-5は、過去1年間の転倒歴、糖尿病、転倒リスクを高める薬剤の使用、自己申告による視覚不良、8回ステップテストによる敏捷性低下の5項目で構成した。各項目を0点または1点で評価し、合計点に基づいて低リスク群、中リスク群、高リスク群に分類した。統計解析では、就業中の転倒回数を0回、1回、2回以上に分類し、年齢、性別、身体的作業を調整した多項ロジスティック回帰分析により、OFRAT-5リスクカテゴリとの関連を検討した。
結果と考察
解析対象者の年齢の中央値は75歳であり、男性は313名であった。OFRAT-5のリスクカテゴリは、低リスク群325名、中リスク群200名、高リスク群67名であった。12か月間の追跡期間中、就業転倒なしは509名、1回転倒は47名、2回以上の転倒は36名であった。多項ロジスティック回帰分析の結果、低リスク群を基準とした場合、1回転倒に対するオッズ比は中リスク群で2.04、高リスク群で1.12であった。一方、2回以上の転倒に対するオッズ比は中リスク群で1.51、高リスク群で4.33であり、高リスク群では複数回転倒との有意な関連が認められた。また、OFRAT-5リスクカテゴリの上昇に伴う傾向性は、1回転倒では有意でなかったが、2回以上の転倒では有意であった。これらの結果から、1回のみの転倒は職場環境や偶発的状況の影響を受けやすい一方、複数回転倒は身体機能低下、疾患、服薬、視覚機能低下などの内的リスク要因の蓄積をより強く反映している可能性が示唆された。OFRAT-5は、主観的情報と客観的な身体機能評価を組み合わせた簡便な評価ツールであり、職場で重点的な支援を要する高年齢労働者を抽出するうえで有用と考えられる。また、ウェブ評価システムにより、評価、判定、フィードバックを標準化でき、職域での普及に資する実装支援ツールとなる可能性がある。
結論
OFRAT-5は、地域在住の高齢労働者において、就業中の単回転倒および複数回転倒のリスク評価に有用であることが示された。とくに高リスク群では、2回以上の就業転倒と明確な関連が認められ、反復して転倒を経験しやすい労働者を把握する指標として有用である可能性がある。さらに、スマートフォンやタブレット端末等で実施可能なウェブ評価システムは、職場における転倒リスク評価の負担を軽減し、評価結果に基づく予防対策の実践を支援する手段となりうる。今後は、業種や作業内容ごとの妥当性を検証するとともに、OFRAT-5を用いたリスク通知や介入が実際の就業転倒予防につながるかを明らかにする必要がある。

公開日・更新日

公開日
2026-10-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-10-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202522001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
高年齢労働者の縦断データを分析し、就業中の転倒リスクを簡便に評価できるOFRAT-5を開発した。本ツールは短時間で実施可能であり、複数回転倒のリスク評価に有用であることが示された。現在、一連の成果を国際誌に投稿中である。
臨床的観点からの成果
高年齢労働者の就業中転倒リスクを評価するOFRAT-5を開発し、複数回転倒リスクの高い労働者を把握できることを示した。本ツールを産業保健や健診の場で活用することにより、高リスク者への服薬確認、視覚機能評価、運動指導、職場環境改善を早期に行うことが可能となり、転倒予防と就労継続支援への貢献が期待される。
ガイドライン等の開発
特になし。
その他行政的観点からの成果
特になし。
その他のインパクト
埼玉県シルバー人材センター連合では、OFRAT-5の普及・啓発を進めるため、測定員養成講座を開講し、OFRAT-5をもとに各シルバーセンターで転倒リスクを評価するよう推奨している。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
講演1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2026-06-03
更新日
-

収支報告書

文献番号
202522001Z