過剰運動<hypermobility>症候群類縁疾患における診断基準の確立ならびに病態解明

文献情報

文献番号
201024082A
報告書区分
総括
研究課題名
過剰運動<hypermobility>症候群類縁疾患における診断基準の確立ならびに病態解明
課題番号
H22-難治・一般-026
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
渡邉 淳(日本医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 古庄 知己(信州大学 医学部)
  • 島田 隆(日本医科大学 医学部 )
  • 圷 宏一(日本医科大学 医学部 )
  • 池園 哲郎(日本医科大学 医学部 )
  • 中西 一浩(日本医科大学 医学部 )
  • 角田 隆(日本医科大学 医学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
6,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
過剰運動<hypermobility>症候群(ICD-9 分類728.5,ICD-10 分類M35.7)は、全身にわたる複数の関節過可動を来す症候群である。本症候群は、乳幼児から青年期に関節周辺の不定愁訴から発症し、全身の複数の関節過可動から関節脱臼へと進行することがある。関節以外の皮膚症状、自律神経症状を有することがある。これまで全国調査が行われたことはなく、本邦における過剰運動症候群の実態(患者数、診療状況)は全くわかっていない。診療現場での認知度はきわめて低く、病型に合った適切な診療指針も確立されていない。本研究では、過剰運動症候群類縁疾患として、独立して実態(患者数、診療状況)に関する調査研究を行い、診療指針の構築ならびに病態解明を目標とする。
研究方法
本研究は、1)過剰運動症候群類縁疾患における課題の抽出、2)過剰運動症候群に関わる類縁疾患の全国調査、3)過剰運動症候群に関わる類縁疾患の診断基準の作成、4)病因の解明の4点からなる。本研究は診療情報を扱う臨床研究と遺伝子解析研究の2つの側面から倫理委員会の承認を得て行った。
結果と考察
1)過剰運動<hypermobility>症候群と臨床的に診断された22名全員に複数関節での反復脱臼と慢性的疼痛を認め、女性罹患者が85%であった。本症候群は脱臼と疼痛が課題であり、疼痛管理により患者のQOLは大きく向上すると考えられた.
2)本邦では本症候群が周知されていないこと、エーラスダンロス症候群(特に関節可動亢進型)との鑑別が難しいこと、皮膚所見が乏しい場合も散見され、皮膚所見では否定できないことに留意し診断基準を作成した。
3)全国の遺伝子医療部門、整形外科、リウマチ科、麻酔科の計454施設を対象とし質問紙調査を行った。日本においても、複数の施設で罹患者がいることが判明した。
4)欧米において過剰運動<hypermobility>症候群の約5-10%に認めるテネイシンX (TNXB)遺伝子の遺伝子解析システムを開発し、解析を進めている。
結論
本研究では、過剰運動<hypermobility>症候群の診断基準を作成し、本症候群が日本においても存在することを明らかにした。本症候群では原因も含め不明な点が多い。今後、本症候群を1つのカテゴリーとして「臨床像・自然歴の解明」、「原因の解明」、「診断方法の確立」を中心とした研究を継続して進めることで本症候群の病態並びに本症候群の症状進行の予防、治療を明らかにしたい。本症候群は1施設あたりの罹患者は少ないが統括して検討することで、本症候群の実態が明らかになると期待している。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201024082C

成果

専門的・学術的観点からの成果
過剰運動<hypermobility>症候群(ICD-9 分類728.5,ICD-10 分類M35.7)は、複数の関節過可動を来す症候群である。診療現場での認知度は低く、これまで全国調査が行われたことはなく、本邦における過剰運動症候群の実態(患者数、診療状況)は全くわかっていなかった。本研究では、過剰運動<hypermobility>症候群が日本においても存在することを明らかにした。本症候群は1施設あたりの罹患者は少ないが、本症候群の実態が明らかするには統括して検討する方向性が明確になった。
臨床的観点からの成果
脱臼部位に限らない全身的な関節痛への対応に苦慮されている例が多かった。関節症状以外に、皮膚症状としあざはできやすい傾向はあるが、過伸展の割合は少なく、瘢痕形成は認めなかった。ほかに、頭痛、立ちくらみを8割以上に、過敏性腸炎を疑わせる消化器症状を半数以上に認めた。家族歴がみられたのは62%であった。家系図情報から、家系内で症状の幅を認め、男性のみの家系もあり複数の原因が示唆された。本症候群は、関節可動性とそれに伴う脱臼と疼痛が課題の中心であり、疼痛管理により患者のQOLは向上すると考えられた。
ガイドライン等の開発
日本における過剰運動<hypermobility>症候群の診断基準を作成した。作成にあたって、本邦においては本症候群が周知されていないこと、エーラスダンロス症候群(特に関節可動亢進型)との鑑別が難しいこと(血管型とは鑑別は可能)、皮膚所見が乏しい場合も散見され、皮膚所見では否定できないことに留意した。
その他行政的観点からの成果
今後、本症候群を1つのカテゴリーとして「臨床像・自然歴の解明」、「原因の解明」、「診断方法の確立」を中心とした研究を継続して進めることは、本症候群の病態を明らかにし、本症候群の症状進行の予防、治療方法の開発に結びつくと期待される。
その他のインパクト
本症候群に関わる類縁疾患である血管型・新型エーラスダンロス症候群研究班(代表者:信州大学古庄知己博士)、マルファン症候群研究班(代表者:東京大学平田恭信博士)、Loeys-Dietz 症候群研究班(代表者:国立循環器研究センター森崎裕子博士))の過剰運動を来す結合組織疾患の研究班の合同会議を開催し意見交換を行った。平成23年度は合同公開シンポジウムを開催する予定である。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
Gene Reviews Japan(翻訳)関節可動亢進型エーラスダンロス症候群,エーラスダンロス症候群をご存知ですか(患者会リーフレット監修)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024082Z