Perry(ペリー)症候群の診断基準等の作成のための奨励研究

文献情報

文献番号
201024079A
報告書区分
総括
研究課題名
Perry(ペリー)症候群の診断基準等の作成のための奨励研究
課題番号
H22-難治・一般-023
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
服部 信孝(順天堂大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 坪井 義夫(福岡大学 医学部)
  • 佐藤 栄人(順天堂大学 医学部 )
  • 富山 弘幸(順天堂大学 医学部 )
  • 斉木 臣二(順天堂大学 医学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
Perry症候群はパーキンソニズム,うつ,体重減少,低換気をきたす予後不良の稀な遺伝性疾患である.2009年DCTN1が原因遺伝子として報告されたが,本邦2家系を含む世界で9家系のみの報告で,分布や頻度、臨床像は明らかでない.L-Dopa反応性の症例もあり,パーキンソン病(PD)との異同が問題である.
 このような背景の中,その診断基準を作成し,世界及び本邦での疾患の分布,頻度およびその実態を明らかにすることを本研究の主目的とした.
研究方法
日本人973例でDCTN1の変異解析を行った.変異陽性患者を実際に診察の上,臨床所見を検討した.その情報に基づき,国際臨床診断基準(案)を世界のPerry症候群患者の担当医,世界のPerry症候群患者の研究者とともに作成した.
 また,機能解析は細胞をもちいた実験でdynactinの凝集の確認,dynactin凝集体の局在の確認,免疫組織化学・生化学的検討を行った.野生型・変異型dynactinをDrosophilaに打ち込み,各lineの樹立を行った.
結果と考察
DCTN1変異解析結果により日本に少なくとも5家系24人の患者が存在することが明らかとなり,地域特異性,創始者効果の有無,有病率,分布など疫学調査を進めることができている.新規変異も2家系で同定でき,さらに今年度,新規変異をもつ九州地方の1家系の情報を得ることができた.
 臨床像の評価に基づき,臨床診断基準の作成・再検討ができてきた.これまで同定されたPerry症候群の数十症例の検討から,30-50歳くらいの比較的若年発症で,PDと同様の症状を呈しながら,短い経過の中で突然呼吸障害から突然死に至ることがわかったので,早期診断し,筋萎縮性側索硬化症(ALS)と同様,病名告知をして人工呼吸管理をするか否か選択していく必要性も考慮されるべきであると考えられた.
 機能解析では,野生型・変異型dynactinをDrosophilaに打ち込み,すでに各lineの樹立を完了し,同モデルの行動学的解析(主にclibming testなどの運動機能)および形態的異常・病理学的異常の詳細な検討を早晩可能にできてきている.
結論
DCTN1変異はPDとの異同が問題になる臨床症候を呈するとともに,TDP-43プロテイノパチーとしてのALSを引き起こすことも知られ,その機能解析は封入体形成機構を明らかに出来る可能性を秘めている.これまでに得られた多くのdataから,より集学的に完成された形での診断基準作成を目指すとともに,難治性疾患の病態解明,克服にむけての研究が進んできている.

公開日・更新日

公開日
2013-03-04
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201024079C

成果

専門的・学術的観点からの成果
DCTN1の直接シーケンス解析により日本に少なくとも5家系24人の患者が存在することが判明し,地域特異性,創始者効果の有無,有病率,分布など疫学調査を進めた.新規変異も2家系で同定できた.全て九州の家系で,G71A変異についてはジェノタイピングにより創始者効果であることが推定された.トランスジェニックドロゾフィラの検討については,野生型・変異型dynactinをDrosophilaに打ち込み,各lineの樹立,モデルの作成を完了し,今後同モデルの行動学的解析などを行っていく準備が整った.
臨床的観点からの成果
実地診療に基づく臨床dataの蓄積もできてきた.頭部MRI,SPECT,MIBG心筋シンチグラフィー,筋電図やポリソムノグラフィーなどの検査所見も得ることができてきている.これらの結果が得られたことにより,臨床像の評価に基づき,4主要徴候(L-dopa反応性のparkinsonism,うつ,中枢性低換気,体重減少)と8つの支持項目からなる国際的臨床診断基準の作成を行うことができてきた.
ガイドライン等の開発
国際会議を経て作成した国際的臨床診断基準に基づき,精神症状や運動障害に対する(抗うつ薬や抗パーキンソン病薬などの)適切な治療法,病名告知,人工呼吸器管理の適応なども含め、今後治療のガイドラインも作成していきたいと考えている.また,Perry症候群は予後不良な疾患で,遺伝学的には浸透率が高い常染色体優性遺伝性疾患と考えられるため,遺伝子診断,遺伝子診療上のガイドラインについても今後検討していく必要があると考えている.
その他行政的観点からの成果
病名告知,人工呼吸器管理の問題は,同じくTDP-43が蓄積し,呼吸障害から死に至る筋萎縮性側索硬化症(ALS)と同様に大きな医療上の問題となる.多くの患者が存在するALSの治療にも通じ得るという行政的観点からの成果にも通じ得る.Perry症候群例は少なくとも早期には認知機能低下をきたしていないので,早期診断に基づく本人・家族の意思決定が前向きに行っていけるかどうかなどは介護上,医療行政上大きな問題となり,その対応策の方向性を少しでも示すことができたのは成果であると考えられる.
その他のインパクト
平成23年2月22-23日東京で国際シンポジウム〝International Symposium on Motor Neuron Disease and Perry Syndrome in Tokyo"を開催し,診断基準作成のための国際会議を通じて,国際的な診断基準を作成することができた.具体的に,4主要徴候(L-dopa反応性のparkinsonism,うつ,中枢性低換気,体重減少)と支持項目からなる国際的臨床診断基準を第52回日本神経学会学術大会で発表し,論文も作成することができてきている.

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
6件
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Tomiyama H, Yoshino H, Hattori N.
Analysis of PLA2G6 in patients with frontotemporal type of dementia.
Parkinsonism Relat Disord  (2011)
原著論文2
Tomiyama H, Yoshino H, Ogaki K, et al.
PLA2G6 variant in Parkinson’s disease.
J Hum Genet  (2011)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2016-07-19

収支報告書

文献番号
201024079Z