ヘモクロマトーシスの実態調査と診断基準作成

文献情報

文献番号
201024075A
報告書区分
総括
研究課題名
ヘモクロマトーシスの実態調査と診断基準作成
課題番号
H22-難治・一般-019
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
高後 裕(旭川医科大学 内科学講座 消化器・血液腫瘍制御内科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 生田 克哉(旭川医科大学 内科学講座 消化器・血液腫瘍制御内科学分野)
  • 佐々木 勝則(旭川医科大学 消化管再生修復医学講座)
  • 鈴木 隆浩(自治医科大学 内科学講座 血液学部門)
  • 小船 雅義(札幌医科大学 内科学第四講座)
  • 林 久男(愛知学院大学 薬学部 薬学治療学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
13,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
鉄過剰症は、鉄代謝関連遺伝子異常に基づく遺伝性ヘモクロマトーシスを代表とする特発性と、頻回で大量の赤血球輸血に起因する輸血後鉄過剰症などの続発性に大きく分けられる。これまで本邦での大規模な鉄過剰症の実態を明らかにした報告は皆無である。一方、特発性ヘモクロマトーシスを含む包括的な診断基準は存在せず、診断自体がままならぬ現状が続いている。そこで本邦における鉄過剰症の実情を明らかにし、明確な診断基準の草案作成を目的とする。
研究方法
鉄過剰症症例の有無やその症例数などに関したアンケート調査を全国レベルで実施した。次に原因不明の鉄過剰症に対してさらなる臨床情報の調査を実施し、症例の登録、臨床データや検体の提供を推進した。登録症例に関して順次鉄代謝関連遺伝子の解析を進めた。
結果と考察
379施設(血液関連124施設、肝臓関連220施設、糖尿病関連30施設、その他5施設)に対して予備アンケート調査を実施したところ、182施設中117施設で「鉄過剰症の症例もしくは鉄過剰の疑い症例」患者を抱えていた。この117施設が現在関与している症例数の総数は1,446症例に及び、1089症例中、輸血後鉄過剰症(疑い)が1,013例(93.0%)に対し原因不明の鉄過剰症例は76例(7.0%)であった。この結果は、本邦においては輸血後鉄過剰症が鉄過剰症の中で主体となっていることを再確認させたものであった。一方で予想以上に原因が特定できない鉄過剰症患者を抱えて、詳細な診断および治療法や治療開始時期の決定に苦慮する臨床医が多いことも判明した。76例の原因不明の鉄過剰症に対して一次調査を実施し、2010年12月までに18施設32症例の回答が得られた。これにより、輸血後以外の鉄過剰症でも、特に血清フェリチン値が1000 ng/mlを超えると肝機能障害や耐糖能異常・糖尿病などの臓器障害が高率に出現していることが判明した。さらに協力可能な症例では、鉄代謝制御に関わる分子の遺伝子解析を進めてきたが、これまでのところ欧米で認められる遺伝性ヘモクロマトーシス関連遺伝子の変異は検出されておらず、本邦では欧米と遺伝的背景も大きく異なることが確認できた形である。
結論
「原因不明の鉄過剰症」の存在と臨床的特徴の解明をしたが、その中で、遺伝性の症例を他の原因による鉄過剰症から鑑別することは、従来の血清マーカーだけでは不十分であることも判明した。各種鉄動態関連遺伝子の解析は不可欠であり、今後は簡便な遺伝子変異診断法の確立が急務であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201024075C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本邦における鉄過剰症の大部分は輸血後鉄過剰症と判明した一方で、「原因不明の鉄過剰症」症例も存在することが明らかとなった。その中で、遺伝性症例を他の原因による鉄過剰症から鑑別診断することは、従来の血清マーカーだけでは不十分であることが判明し、遺伝性ヘモクロマトーシス責任遺伝子、その他鉄動態に関連する遺伝子の解析が重要かつ不可欠な現状を明らかにすることができた。現在、次世代シーケンサー対応鉄関連遺伝子網羅的解析用AmpliSeq Custom Panelを構築し、遺伝子診断法の確立を目指している。
臨床的観点からの成果
原因が輸血によらない「原因不明の鉄過剰症」でも、輸血後鉄過剰症と同様に、明らかに鉄過剰に伴い臓器障害が出現していることが明らかとなり、特に血清フェリチン値が1000 ng/mlを超えると肝機能障害と耐糖能異常・糖尿病が多く認められており、原因検索と原因除去を含めた治療介入が必要と考えられた。しかし、遺伝性の症例などでは原因を取り除くことができないため、血清フェリチン値、肝臓での鉄沈着度合、貧血などを考え合わせた上で鉄キレート療法や寫血療法などの治療指針を示すべきであることが明らかとなった。
ガイドライン等の開発
ヘモクロマトーシス診断基準(案)を作成した。ヘモクロマトーシスは鉄が過剰蓄積する病態を広く指すが、臨床的には「体内への鉄過剰蓄積に起因して臓器障害が起こっている、もしくは今後起こる可能性があるもの」と考える。本邦では輸血後鉄過剰症頻度が最も高く、血清フェリチン値500 ng/ml以上かつ赤血球輸血20単位以上受けたことがある場合は「輸血後鉄過剰症の診療ガイド」(難治性疾患克服研究事業 特発性造血障害班)の診断基準を参照する。輸血や他の二次性原因が特定できない場合に遺伝子変異検索を行うべきである。
その他行政的観点からの成果
特記事項なし
その他のインパクト
特記事項なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
6件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
17件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024075Z