TNF受容体関連周期性症候群(TRAPS)の病態の解明と診断基準作成に関する研究

文献情報

文献番号
201024073A
報告書区分
総括
研究課題名
TNF受容体関連周期性症候群(TRAPS)の病態の解明と診断基準作成に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-017
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
堀内 孝彦(九州大学 大学院医学研究院  病態修復内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 石ヶ坪 良明(横浜市立大学)
  • 武井 修治(鹿児島大学)
  • 鷲尾 昌一(聖マリア学院大学)
  • 簑田 清次(自治医科大学)
  • 楠原 浩一(産業医科大学)
  • 井田 弘明(久留米大学)
  • 高橋 裕樹(札幌医科大学)
  • 藤井 隆夫(京都大学)
  • 田平 知子(九州大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、1)本邦でのTRAPS患者数を把握する、2)特徴的な症状や経過を明らかにする、3)重症度とTNF受容体異常の関連を明らかにする、4)TRAPS患者の遺伝子解析、細胞生物学的解析によ り病態解明をおこなう、それに基づいて、5)診断指針を作成することである。TRAPSの診断基準は確立されたものはなく、また全国的な疫学調査も世界的に見ても皆無であることから、本研究の意義は大きいと思われる。
研究方法
診断基準作成、病態解明のための研究方法は以下の大きく4つの段階に分けられる。
第1段階は、TRAPS疑い患者の調査、同定、第2段階は、遺伝子解析による確定診断であり、第3段階は臨床症状、検査値、患者リンパ球の機能異常の解析結果と遺伝子解析結果を照合し、診断基準を作成する、第4段階はTRAPSの病態を解明することである。
結果と考察
1.TRAPS全国疫学調査(一次調査)2010年8月実施
 第一回班会議(2010年7月、福岡で開催)での検討結果に基づき、全国の200床以上の病院すべての内科1718施設、すべての小児科1182施設、合計2,900施設に対してTRAPS疑い患者の有無を問う一次調査票を送付した。
2.TRAPS全国疫学調査(二次調査)2010年10月実施
3.遺伝子解析 2010年10月から開始
遺伝子解析はTRAPSの確定診断のために必須である。TRAPSの原因遺伝子であるTNF受容体1型遺伝子の全遺伝子領域(エクソン10個)についてシークエンスを行い多型、変異を同定した。
37名のTRAPS疑い患者のうち2名(5.4%)にヘテロでT61I(TNF受容体1型の61番目のアミノ酸スレオニンTからイソロイシンIへの置換)を認めた。さらに遺伝子解析を進めている。
結論
全国の200床以上の2,900施設すべてに調査票を送付し、1,807施設から回答を得、うち154施設に263名のTRAPS疑い患者がいることが判明した。拾い出したこれら患者すべてについて、詳細な臨床所見を問う二次調査を行っている。同時にTRAPSならびに鑑別すべき2疾患(家族性地中海熱、メバロン酸キナーゼ欠損症)の原因遺伝子解析に着手し複数の遺伝子異常を見出した。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201024073C

成果

専門的・学術的観点からの成果
TRAPS疑い患者の末梢血よりDNAを抽出し、鑑別の必要な疾患すなわち、TNFRSF1A(TRAPS原因遺伝子)、FEMV(家族性地中海熱原因遺伝子)、MVK(高IgD症候群原因遺伝子)について変異同定を進めている。現在までにTRAPS疑い患者37名、健常人359名の解析が終了した。TNFRSF1Aの異常は2名に認め、FEMV異常は1名に認めた。MVKの異常は認めていない。欧米のTRAPSで発症リスクとされるTNFRSF1A 多型R92Q, P46Lは疑い患者,健常人には見られなかった。
臨床的観点からの成果
TRAPSの疫学、臨床症状、予後など臨床的な知見の蓄積は特に本邦では乏しい。本研究班では、2010年8月に全国の200床病院すべての内科、小児科、合計2900施設に対してTRAPS疑い患者の有無を問う一次調査票を送付した。1807施設から回答があり(回答率62.3%)、うち154施設から263名の疑い患者の報告があった。回答率の逆数で重み付けを行う統計的解析を行った結果、全国にはTRAPS疑い患者が423名存在することが推定された。
ガイドライン等の開発
稀少な疾患であり国内外でのガイドライン作りは緒に就いたばかりである。平成22年7月9日、10日に開催された第一回班会議で診断基準の基礎となる項目が討議された。その結果に基づいて、疑い患者を調査する一次調査票に診断に重要な項目が記載された。これは診断基準の素案ともいえる。この調査では広く疑い患者を見出すことを目的としており、さらに遺伝子解析、詳細な症状解析によって確定診断を行ったうえで、最終的に診断基準を完成させる予定である。
その他行政的観点からの成果
本研究班は、厚労科研難治性疾患克服研究事業のうち同じく自己炎症症候群に属する「家族性地中海熱」「高IgD症候群(メバロン酸キナーゼ欠損症)」「クリオピリン関連周期性発熱症候群」「Blau症候群」「中條・西村症候群」と緊密な連携をとって研究を進めている。すなわち成果発表を一緒に行い、情報を共有し、病態の解明のための共同研究も開始した。これら研究班の間で有機的な連携をはかることで、稀少な難治性疾患の実態解明と研究、社会への啓蒙を効率よく行うことは行政的にも意義が大きいと考えられる。
その他のインパクト
社会への成果発信の場として「TNF受容体関連周期性症候群(TRAPS)の病態の解明と診断基準作成に関する研究班」のホームページを作成した。研究班の構成、研究の目的、方法と計画を記載するとともに、平成22年度から始まった研究の進展に伴う情報を発信している(http://www.1nai-collagen-disease.com/)。また日本臨床免疫学会雑誌2011年10月号の特集「自己炎症疾患の新しい知見」においてTRAPS研究班でえられた最新の知見を発表する予定である。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
67件
その他論文(和文)
25件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Horiuch T, Mitoma H, Harashima S et al.
Transmembrane TNF-alpha: structure, function and interaction with anti-TNF agents
Rheumatology  (2010)
原著論文2
Mizuki N, Meguro A, Ota M et al.
Genome-wide association studies identify IL23R-IL12RB2 and IL10 as Behcet's disease susceptibility loci
Nat Genet  (2010)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2017-06-06

収支報告書

文献番号
201024073Z