インターロイキン1受容体関連キナーゼ4(IRAK4)欠損症の全国症例数把握及び早期診断スクリーニング・治療法開発に関する研究

文献情報

文献番号
201024072A
報告書区分
総括
研究課題名
インターロイキン1受容体関連キナーゼ4(IRAK4)欠損症の全国症例数把握及び早期診断スクリーニング・治療法開発に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-016
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
大西 秀典(岐阜大学 大学院医学系研究科 小児病態学)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤 善一郎(岐阜大学 医学部附属病院 小児科)
  • 谷内江 昭宏(金沢大学 医薬保健研究域 医学系小児科)
  • 西小森 隆太(京都大学 大学院医学研究科 発達小児科学)
  • 杤尾 豪人 (京都大学 工学研究科)
  • 高田 英俊(九州大学 大学院医学研究院 成長発達医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
13,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
自然免疫のシグナル伝達経路の異常により、免疫不全症を発症することが知られている。自然免疫不全症(IRAK4欠損症、MyD88欠損症など)は、一般的な免疫検査で診断することができず、易感染患者の中にまぎれている可能性が高い。これらの疾患は、難治性で、ときに致死的であるため、早期診断により適切な治療を行う必要がある。本研究では特に、IRAK4欠損症を対象として、国内での患者発生の実態調査及び早期診断システムの確立、新規治療法の確立に向けた研究を行う。
研究方法
国内でのIRAK4欠損症患者の実態が不明であるため、2010年度に全国症例調査を行った。迅速診断スクリーニング法として、患者全血をリポポリサッカライド刺激下で抗CD14抗体及び抗TNF-α抗体で染色し、フローサイトメーターで解析した。スクリーニング法でTNF-α産生量の低下が認められた症例及び、臨床症状から自然免疫不全症が疑われた症例についてIRAK4、MyD88、NEMO、IKBA等の遺伝子解析を行った。日本人310名を対象に、Mal遺伝子の塩基配列を解読した。IRAK4欠損症で報告されている遺伝子変異を導入したIRAK4デスドメイン(DD)とそれぞれ野生型のIRAK4-DD, MyD88-DDタンパクを精製し、タンパク間相互作用を検討した。
結果と考察
全国調査の結果、IRAK4欠損症患者の国内確定診断症例数は4家系7名、MyD88欠損症患者は0名であった。また1施設の症例は、IKBA欠損症であった。フローサイトメーターを利用した迅速診断スクリーニング法にて、健常者では単球の90%以上がTNF-αを産生したが、IRAK4欠損症患者では、TNF-αの産生は著しく低下していた。さらに、類縁疾患であるIKBA欠損症患者も同様にTNF-α産生が著しく低下していた。Mal遺伝子上に8種類のSNPが同定され、そのうち3種類は機能損失型亜型であることが確認できた。IRAK4-DDとMyD88-DD野生型同士は、タンパク間相互作用を示すが、IRAK4変異型はMyD88野生型との相互作用が低下していた。
結論
IRAK4欠損症は乳幼児期の重症感染症がおこりやすく、死亡率も高い。学童期以降になると易感染性は著しく低下し、次第に死亡率も低下していくことを考えると、乳幼児期の迅速診断、感染予防が極めて重要である。一方で、我々の開発した迅速診断スクリーニングシステムは、IRAK4欠損症のみならず自然免疫不全症全般の診断に有効であり、易感染性が示される症例について、積極的な検査が推奨される。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201024072C

成果

専門的・学術的観点からの成果
IRAK4及びMyD88のそれぞれのデスドメインの野生型と変異型リコンビナントタンパクを精製し、それぞれの組み合わせについて、タンパク間相互作用を検討したところ、IRAK4とMyD88野生型同士の組み合わせでは、強いタンパク間相互作用を示すが、IRAK4及びMyD88変異型は相手側タンパクの野生型との相互作用が著しく低下することが判明した。つまりIRAK4のミスセンス型変異では、タンパク自体の欠損ではなくタンパクは存在するが、相互作用の減弱により疾患が発症しうることが明らかになった。
臨床的観点からの成果
フローサイトメーターを利用した迅速診断スクリーニング法にて、健常者では単球の90%以上がTNF-αを産生した。またIRAK4欠損症の国内症例のうち3名の患者で、TNF-αの産生が著しく低下していることが確認された。さらに、類縁疾患であるIKBA欠損症患者単球でも同様にTNF-α産生は著しく低下していた。このことから、自然免疫不全症全般において、本スクリーニングシステムが診断に有用であることがわかる。
ガイドライン等の開発
自然免疫不全症の診断フローチャートを考案した。その基盤技術となるのが、フローサイトメーターを利用した迅速診断スクリーニングシステムである。患者血液をリポポリサッカライド添加下で4時間培養し、細胞内TNF-αの産生率を評価することでIRAK4欠損症は約半日の工程で診断可能である。
その他行政的観点からの成果
該当なし
その他のインパクト
平成22年12月23日にKKRホテル東京にてインターロイキン1受容体関連キナーゼ4(IRAK4)欠損症の全国症例数把握及び早期診断スクリーニング・治療法開発に関する研究班会議を開催した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
28件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
8件
The 8th Asia Pacific Congress of Allergy, Asthma and Clinical Immunology 2010にてBest Paper Awardを受賞
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
YANG AN, HIDENORI OHNISHI, EIKO MATSUI et al.
Genetic variations in MyD88 adaptor-like are associated with atopic dermatitis
INTERNATIONAL JOURNAL OF MOLECULAR MEDICINE , 27 (6) , 795-801  (2011)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024072Z