先天性顆粒放出異常症の病態解明と診断法の確立

文献情報

文献番号
201024071A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性顆粒放出異常症の病態解明と診断法の確立
課題番号
H22-難治・一般-015
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
石井 榮一(愛媛大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 藤本純一郎(国立成育医療研究センター 臨床研究センター)
  • 安川正貴(愛媛大学 大学院医学系研究科)
  • 山本健(九州大学 生体防御医学研究所)
  • 金兼弘和(富山大学 附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
先天性顆粒放出異常症は細胞傷害性Tリンパ球(CTL)や NK 細胞の顆粒放出の異常によりさまざまな臨床所見を呈する乳幼児の疾患の総称であり、家族性血球貪食性リンパ組織球症、Chediak-Higashi 症候群、Griscelli 症候群、X-linked lymphoproliferative disease などが含まれる。本研究の目的は、これら先天性顆粒放出異常症の病態に関わる遺伝子異常の解明と診断システムの開発を行うことである。
研究方法
現在組織されている研究会および研究グループを中心にデータセンターを整備するとともに、病態解明を進め診断法を確立する。具体的には、
① 基礎研究および臨床研究の質を高めるためのデータセンターを設置する。
② 遺伝子異常の解明とリンパ球機能解析を行い、診断法の標準化を開発する。
③ 診断基準を用いた治療の国際共同研究を進める。
結果と考察
1) Chiediak-Higashi 症候群、Griscelli 症候群、Hermansky-Pudlak 症候群の全国調査を行い、Chediak-Higashi 症候群14例の存在が確認された。
2) Chediak-Higashi 症候群では、血球貪食症候群をきたす症例はほとんどなく長期生存例では消化管合併症および中枢神経合併症が多かった。リンパ球機能解析では、CTL が低下し顆粒放出機能が欠損していた。Griscelli 症候群およびHermansky-Pudlak 症候群 type 2 は日本での症例は1例もなかった。
4) 家族性血球貪食性リンパ組織球症(FHL)の各亜型の頻度を解析した結果、FHL2 54%, FHL3 34%, FHL4 0%, FHL5 6%であった。
5) X-linked lymphoproliferative disease (XLP) は XIAP 異常のよる XLP2 3例を同定した。またXLPの顆粒放出および CTL 活性は正常であった。
以上より日本における顆粒放出異常症の実態と病態が明らかになった。今後は各亜型の全体像を明らかにし、その標準的診断法および治療法を確立する予定である。
結論
先天性顆粒放出異常症の日本にける実態が初めて明らかになった。またその多くで遺伝子異常およびリンパ球機能の異常も解析された。今後は合併症を中心にその病態を明らかにするとともに、各亜型の標準的診断法および治療法を確立していく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201024071C

成果

専門的・学術的観点からの成果
先天性顆粒放出異常症の日本における実態を明らかにした。日本においては家族性血球貪食症候群(FHL)とChediak-Higashi 症候群が存在しており、その多くは遺伝子異常が同定されリンパ球機能も解析されつつある。治療としては国際治療研究が進められており、造血幹細胞移植を含めた標準的治療法も確立されつつある。しかし将来的には遺伝子治療を含めた副作用の少ない新たな治療法の開発が必要である
臨床的観点からの成果
FHL と Chediak-Higashi 症候群の日本における実態が明らかになった。FHL は臍帯血移植を中心とした骨髄非破壊的移植療法により救命可能となりつつある。Chediak-Higashi 症候群は頻度が少ないものの、長期生存例では中枢神経合併例が多く FHL と同様に造血幹細胞移植の確立が必要と考えられた。
ガイドライン等の開発
HLH-2004 による治療研究は FHL に対しては一定の効果があるが、さらに副作用の少ない標準的治療法を作成する必要がある。診断に関してはウエスタン法と flow cytometry を用いたスクリーニングおよび遺伝子診断という一定の診断システムを開発することができた。
その他行政的観点からの成果
先天性顆粒放出異常症の日本における実態を明らかにした。この成果は難治性感染症、免疫不全など他の分野の疾患への応用のみならず、成人への波及効果が高いと考えられる。
その他のインパクト
小児の先天性造血疾患のシンポジウムを合同で開催し、その中で本疾患の重要性を臨床医に伝達することができた。今後は診断、治療ガイドラインに沿った疾患登録と治療の発展性が期待できる。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
21件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nagai K, Ishii E, Yasukawa M, et al.
Subtypes of familial hemophagocytic lymphohistiocytosis in Japan based on genetic and functional analyses of cytotoxic T lymphocytes.
PLoS ONE , 5 , 14173-  (2010)
原著論文2
Ohga S, Kudo K, Ishii E, et al.
Hematopoietic stem cell transplantation for familial hemophagocytic lymphohistiocytosis and Epstein-Barr virus-associated hemophagocytic lymphohistiocytosis in Japan.
Pediatr Blood Cancer , 54 , 299-306  (2010)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024071Z