多発性硬化症に対する新規分子標的治療法の開発

文献情報

文献番号
201024067A
報告書区分
総括
研究課題名
多発性硬化症に対する新規分子標的治療法の開発
課題番号
H22-難治・一般-011
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
山下 俊英(大阪大学 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
39,413,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の最終目標は、多発性硬化症(MS)の発症および病態形成を制御する分子標的治療薬を開発し、臨床応用を実現することである。MSは複数の神経症候が再発と寛解を繰り返し、比較的強い障害が残る例が少なくなく、根本的治療法が確立していないのが現状である。我々は、抗RGM抗体治療薬が、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の発症を抑制し、さらに修復過程を促進することを見いだした。したがってRGM阻害剤は多発性硬化症の各病期に対する症状緩和に寄与するのみならず、根本的治療薬として有望である。我々は、脊髄損傷治療薬としてヒト型抗RGMモノクローナル抗体を製薬企業との共同開発で進めている。本研究では、RGMモノクローナル抗体のMSの急性増悪期および再発寛解型に対する薬剤としてのfeasibility studyを実施している。複数の実験的自己免疫性脳脊髄炎モデルを用いて、各病期における薬効・薬理試験を行い、薬剤治療の最適条件を決定することが本研究の到達目標である。
研究方法
我々は、RGMによるT cellの活性化の分子メカニズムの解析を行った。さらにマウスのEAEモデルを作成し、RGM中和抗体の投与による、その後の症状の改善の有無を評価した。さらに抗体の作用のメカニズムをin vivoで明らかにした。
結果と考察
今年度の研究によって、実験的自己免疫性脳脊髄炎の発症および寛解過程に、RGMがキーとなる役割を担っていることを明らかにした。すなわち樹状細胞の活性化に伴い誘導されるRGMの発現がT cellsの活性化に必須であり、抗RGM中和抗体の投与によってMSの発症が抑制されることを見いだした(Nature Medicine, 2011;特許出願済み)。さらに当該抗体治療は、神経症状を発症した群においてもその後の修復過程を加速し、神経症状の改善を促し、また神経症状の再発も抑制した。樹状細胞に発現しているRGMがT細胞の活性化を促進し、RGM中和抗体は抗原提示細胞によるT細胞の活性化および炎症性サイトカインの分泌を抑制することで、脳脊髄炎の発症および再発を抑制することが、RGM中和抗体の作用メカニズムである。
結論
本研究終了後、速やかに前臨床試験へ移行し、問題のないことを確認したうえで臨床治験に進む。本薬剤は多発性硬化症の根本的治療薬となりうる点で医学的に貢献するのみならず、特に「要介護状態」からの回復が可能になるという観点で、医学経済面での大きな貢献も望める。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024067Z