プリオン病予防の実用化に関する研究

文献情報

文献番号
201024065A
報告書区分
総括
研究課題名
プリオン病予防の実用化に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-009
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
堂浦 克美(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 工藤 幸司(東北大学 未来医工学治療開発センター)
  • 木村 朋寛(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 岡村 信行(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 逆瀬川 裕二(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 上高原 浩(京都大学 大学院農学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
プリオン病は、発症後に治療的介入を行っても病気の進行を止めることは不可能であるものの、潜伏期の予防的介入では発症を寿命一杯まで遅らせるところまで達成可能である。研究代表者らは、セルロース誘導体が、プリオン病に対して長期間にわたる優れた発病抑制効果を発揮することを発見しており、その実用化を目指している。
研究方法
臨床での投与法を想定した2ヶ月間の間欠静脈内投与の安全性試験および投与終了後6ヶ月間の回復試験をマウスで実施した。最適化研究として各種セルロース誘導体修飾体を作製して発症抑制効果をマウスで検討した。また、セルロース誘導体関連の低分子化合物群から、効果を持つものを探索した。さらに、セルロース誘導体の作用機序解明研究として、体内投与により変動する因子群を各種マイクロアレイで探索し、候補因子について発症抑制効果との関連を検討した。
結果と考察
セルロース誘導体の静脈内投与では、投与期間中に貧血傾向がみられ、諸臓器に泡沫状貪食細胞が増加し、無毒性量は100mg/kg未満であった。休薬によって貧血傾向は回復し、泡沫状貪食細胞の泡沫状の変化に回復傾向が認められた。セルロース誘導体の修飾による研究では、効果が高いセルロース誘導体構造の特徴として、親水性で分解されにくい構造を持つことが明らかとなった。一方、関連する低分子化合物の探索では、メチル化単糖およびその類縁体に効果を認めた。化学構造が単純な低分子化合物を発見した意義は大きく、セルロース誘導体の発症抑制効果を保持しながらも毒性のない化合物の開発が可能かもしれない。セルロース誘導体の作用機序解明研究では、糖代謝変動やサイトカイン誘導の関与が明らかとなった。今後、さらに解明を進めていくことで、新たな創薬標的因子を同定できる可能性がある。また、同様な働きをもつ既製薬品があることより、その発症抑制効果や治療効果を動物で実証できれば、早期に臨床へ応用できる。今回の安全性試験の結果を踏まえると、セルロース誘導体をそのまま実用化するという方向から、毒性を持たないセルロース誘導体関連低分子化合物の開発や、セルロース誘導体の作用機序に関連する既成薬品の評価に研究の方向をシフトさせる必要が考えられる。
結論
セルロース誘導体の実用化に向けて、毒性研究・最適化研究・薬物送達研究・作用機序解明研究を実施し、その毒性、低分子関連化合物、作用機序に関する新たな知見を得た。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024065Z