医療機関から在宅へ円滑に移行するための適切な栄養管理に関する実態把握及び体制整備へ向けた課題探索のための研究

文献情報

文献番号
202521011A
報告書区分
総括
研究課題名
医療機関から在宅へ円滑に移行するための適切な栄養管理に関する実態把握及び体制整備へ向けた課題探索のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24IA1011
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
榎 裕美(一般社団法人 日本健康・栄養システム学会)
研究分担者(所属機関)
  • 三浦 公嗣(一般社団法人日本健康・栄養システム学会)
  • 梶井 文子(東京慈恵会医科大学 医学部看護学科)
  • 加藤 昌彦(椙山女学園大学 生活科学部 )
  • 菊谷 武(日本歯科大学 口腔リハビリテーション多摩クリニック)
  • 古賀 奈保子(医療法人社団いばらき会 栄養課)
  • 高田 和子(東洋大学 健康スポーツ科学部)
  • 高田 健人(十文字学園女子大学 人間生活学部)
  • 田中 和美(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部栄養学科)
  • 友藤 孝明(朝日大学 歯学部口腔感染医療学講座社会口腔保健学分野)
  • 西井 穗(神戸女子大学 家政学部 管理栄養士養成課程)
  • 松尾 浩一郎(東京科学大学大学院医歯学総合研究科 地域・福祉口腔機能管理学分野)
  • 本川 佳子(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
3,220,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
在宅医療の需要増に伴い、地域に応じた在宅栄養管理体制の整備が急務である。しかし、在宅療養者に対する訪問栄養食事指導等の実績は乏しく、現場の管理栄養士の圧倒的な不足に加え、医療機関や多職種間で連携し切れ目のない支援を行う仕組みが機能していないことが、体制整備の大きな障壁である。令和6年度の研究においては、訪問栄養食事指導の実施体制が十分に整備されていないこと、ならびに管理栄養士の人的資源の不足が、在宅療養者に対する適切な栄養管理の提供を阻害する主要な要因であることが明らかとなった。本研究では在宅における栄養管理体制を「生活支援としての食」と「医療としての栄養管理」の両側面から捉え直し、配食サービスの実態および多職種連携に関するインタビュー調査を統合的に分析することにより、在宅栄養管理の構造的課題を明らかにすることを目的とした。さらに、令和6年度の実態調査を踏まえ、現場で活用可能な手引書の作成および医療計画への反映を見据えた提言を整理し、実装可能な体制整備の方向性を提示することを目指した。
研究方法
①日本生活協同組合連合会等を対象とした配食サービスの実態を調査し、在宅療養者への食支援の現状と課題を整理した。②在宅療養支援病院、在宅療養支援診療所、在宅療養支援歯科診療所、都道府県栄養士会栄養ケア・ステーション等計24施設の管理栄養士および関係職種を対象としたインタビュー調査を実施し、多職種および多施設が連携した訪問栄養食事指導等の構造およびプロセスを明らかにした。さらに、これらの研究成果を踏まえ、③退院支援から在宅定着期、看取りに至るまでの一貫した栄養管理の実務的指針となる手引書の作成に向けた検討と、④二次医療圏域単位での管理栄養士の必要数の推計および確保目標の設定等、医療計画への反映を見据えた提言の整理を行った。
結果と考察
本研究対象の配食・宅配サービスは、在宅療養者や独居高齢者、買い物困難者の食品へのアクセスを確保し、配達時の見守りを担う生活支援基盤であった。一方、利用は主に1日1食の補完にとどまり、喫食状況や残食、栄養摂取量を体系的に把握する仕組みや、医療・介護専門職との連携は十分でなかった。また、中山間地域等では配送コストや人材確保に課題があり、支援ニーズが利用につながらない状況も認められた。24施設へのインタビューでは、在宅における栄養管理を組織的取組として位置づけ、管理栄養士が院外で活動できる体制を整えた施設では、入院早期からの栄養評価、退院支援から訪問栄養食事指導への移行、多職種間の情報共有が行われていた。これらの好事例では、体重増加、褥瘡の改善、経口摂取の維持・再開、再入院の回避、介護者負担の軽減等が報告された。他方、制度への理解不足や連携体制の未整備により医師の指示書発行に至らないこと、報酬・業務負担に伴う人材確保の困難、管理栄養士不在の医療機関から栄養ケア・ステーション等への連携ルートや役割分担の不明確さが課題であった。これらを踏まえ、退院支援、在宅療養の定着期、看取り期を通じた栄養管理の手順、多職種の役割、情報共有項目、介入フロー等を整理した栄養管理の実務的指針となる手引書(概要版を含む)を作成した。さらに、医療計画への反映を想定し、二次医療圏域単位での管理栄養士の必要数・確保目標、連携拠点機能、ICTによる情報共有体制等に関する提言とテンプレートをまとめた。
以上から、在宅栄養管理の課題は、訪問栄養食事指導の実施率や人材不足だけでなく、退院時の施設間連携、口腔・摂食嚥下機能を含む情報共有、専門職への連携ルート、生活支援で把握した栄養課題を医療・介護につなぐ仕組みの不足が相互に関連していると考えられた。配食サービスを食の供給に加えて栄養リスクの早期把握につなげ、多職種が把握した情報を医師へ円滑に提供できる体制、指示書作成の負担軽減、地域資源を含むICT基盤の整備が必要である。本研究の手引書は、こうした連携を実務に実装するための指針となり得る。今後は、複数の配食事業者を対象とした実態把握と手引書の活用可能性および効果の検証が求められる。
結論
本研究では、在宅療養者に対する栄養管理体制の課題を明らかにし、退院支援から看取りまでをつなぐ実務的指針となる手引書を作成した。医療計画への反映を見据えた提言においては、医療計画の枠組みの中で管理栄養士の必要数の考え方を明示し、地域単位での人材確保と体制整備を推進する必要性を示した。今後は、食支援と医療の連携強化、多職種連携の推進および人材確保を通じて、地域特性に応じた包括的な在宅栄養管理体制の整備を進める必要がある。

公開日・更新日

公開日
2026-08-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2026-08-19
更新日
-

文献情報

文献番号
202521011B
報告書区分
総合
研究課題名
医療機関から在宅へ円滑に移行するための適切な栄養管理に関する実態把握及び体制整備へ向けた課題探索のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24IA1011
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
榎 裕美(一般社団法人 日本健康・栄養システム学会)
研究分担者(所属機関)
  • 三浦 公嗣(一般社団法人日本健康・栄養システム学会)
  • 梶井 文子(東京慈恵会医科大学 医学部看護学科)
  • 加藤 昌彦(椙山女学園大学 生活科学部)
  • 菊谷 武(日本歯科大学 口腔リハビリテーション多摩クリニック)
  • 古賀 奈保子(医療法人社団いばらき会 栄養課)
  • 高田 和子(東洋大学 健康スポーツ科学部)
  • 高田 健人(十文字学園女子大学 人間生活学部)
  • 田中 和美(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部栄養学科)
  • 友藤 孝明(朝日大学 歯学部口腔感染医療学講座社会口腔保健学分野)
  • 西井 穗(神戸女子大学 家政学部 管理栄養士養成課程)
  • 松尾 浩一郎(東京科学大学大学院医歯学総合研究科 地域・福祉口腔機能管理学分野)
  • 本川 佳子(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
在宅医療の需要増に伴い、地域に応じた在宅栄養管理体制の整備が急務である。しかし、在宅療養者に対する訪問栄養食事指導等の実績は乏しく、現場の管理栄養士の圧倒的な不足に加え、医療機関や多職種間で連携し切れ目のない支援を行う仕組みが機能していないことが、体制整備の大きな障壁である。本研究はこうした現状を踏まえ、2年間にわたり在宅における栄養管理体制の実態を包括的に把握し、管理栄養士と他職種との円滑な連携による栄養管理システム構築に向けた現場向けの手引書の作成、および次期医療計画等を通じた政策的な体制整備を見据えた提言・基礎資料を提示することを目的とした。
研究方法
本研究は、以下のプロセスに沿って量的・質的調査を組み合わせた多角的な手法で実施した。①文献等による訪問栄養食事指導等の効果・課題に関する事例収集、および各都道府県の第8次医療計画における管理栄養士の人材確保や訪問指導の体制整備に関する記載状況を整理した。②入院医療から在宅療養への切れ目のない栄養管理体制構築の課題を探るため、在宅療養支援病院・同診療所・同歯科診療所、都道府県栄養士会栄養ケア・ステーション等を対象にWEB実態調査を実施し、管理栄養士と他職種との連携状況や制度的障壁を抽出した。③在宅療養者への生活支援としての食の現状を把握するため、関連団体等にインタビューを行い、生活支援と医療・介護の連携課題を整理した。④多職種・多施設連携による体制の構造化に向け、訪問指導の実績が豊富な先進的24施設にインタビュー調査を実施し、退院支援等の早期介入プロセスやアウトカム、構造的課題を抽出した。⑤これら実態・インタビュー調査結果を統合し、実務的指針となる「手引書」の作成と、医療計画における人材確保・連携拠点強化に寄与する「提言(テンプレート含む)」の整理を行った。
結果と考察
先進的施設への実態調査およびインタビュー調査等から、多職種連携が機能している施設では、退院支援等の早期段階から円滑な栄養介入が行われ、体重増加や経口摂取の維持・再開、再入院の回避等、臨床的に有意義な効果をもたらすことが確認された。他職種からも管理栄養士に対し「生きがい・食べる楽しみ等のQOL向上」への貢献が強く期待されている。一方、医療機関等への実態調査の回収率は低調であったが、報酬算定実績が低迷する現状に鑑み、訪問指導実績がない施設の多くが回答に至らなかった可能性が高く、かえって現場の厳しい実態を反映していると推察された。有効回答施設の分析では、訪問指導が可能な体制を有する施設は在宅療養支援病院36.6%、同診療所14.4%にとどまり、管理栄養士の圧倒的不足と偏在が浮き彫りとなった。さらに連携の障壁として、50%以上が「他機関との契約手続きが煩雑」「依頼先の医療機関がわからない」点を挙げ、地域連携ルートの不明確さ、医師の指示書発行の困難さ、制度の理解不足が推進の壁となっていた。これらより、在宅療養者への栄養管理を阻害する最大要因は、単なる人材不足にとどまらず、管理栄養士と他職種を繋ぐ「多機関・多職種連携の構造」の未整備に起因すると考察された。また、第8次医療計画の都道府県毎の分析において、訪問栄養指導の認知度は他の訪問事業に比べて低く、管理栄養士の配置や指導件数に関する具体的な目標値の記載が不十分であることも明らかになった。この構造的課題を解決し包括的な体制を構築するため、退院支援から在宅定着期、看取りに至る各段階において、管理栄養士が多職種の中で果たす役割や、情報共有の手法を体系化した実務指針としての手引書と栄養管理に関わる多職種が、「誰が」「いつ」「何を確認し」「どこにつなぐか」を短時間で共有し、適切な連携を実践するための資料として手引書・概要版も作成した。同時に、これら現場の実務を支えるためには政策的なアプローチが不可欠である。各都道府県の医療計画において、地域の栄養管理ニーズに基づいた二次医療圏域単位での管理栄養士の必要数推計・確保目標の設定、「在宅医療に必要な連携を担う拠点」を活用した多職種協働の推進、ICTを活用した情報共有体制の整備等を盛り込んだ提言とテンプレートを作成し、次期医療計画等への展開を図った。
結論
在宅における栄養管理を充実させるには、管理栄養士を中心とした多機関・多職種による切れ目のない連携体制の構築と、それを裏付ける政策的アプローチが不可欠である。今後は、実務指針となる手引書に基づく手順・プロセスの明確化と連携の促進を図るとともに、作成した提言を活用し、各都道府県の医療計画において地域特性に応じた管理栄養士の具体的な確保目標数の明示や連携拠点の強化を図るべきである。現場の多職種連携の実践と政策的支援を両輪として推進することで、持続可能な在宅栄養管理体制の構築へとつなげていくことが強く望まれる。

公開日・更新日

公開日
2026-08-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-08-19
更新日
2026-09-02

行政効果報告

文献番号
202521011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
在宅療養者への栄養管理において、実態調査により、訪問栄養食事指導が可能な体制を持つ病院は36.6%、診療所は14.4%にとどまる等、管理栄養士の圧倒的な不足・偏在を定量的に示した。また、管理栄養士を中心とした多機関・多職種連携の未整備が最大の課題であることを見出し、連携手続きの煩雑さや他職種からの制度理解の不足など、切れ目のない栄養管理体制の構築を阻む構造的な要因を明確に抽出した。
臨床的観点からの成果
先進施設のインタビュー調査により、多職種連携のもとで早期に訪問栄養食事指導を行うことが、体重増加、褥瘡の治癒、経口摂取の維持・再開、再入院の回避といった臨床的アウトカムの改善に直結することを確認した。また、患者の意欲向上や介護負担軽減にも有効であり、医師や看護師等からも管理栄養士に対し「生きがい・食べる楽しみ等のQOL向上」への貢献が強く期待されていることが明確に示された。
ガイドライン等の開発
調査結果を統合し、実務的指針となる手引書『在宅医療における栄養管理 実践ガイド―退院支援から看取りまでをつなぐ多職種連携―』を開発した。本手引書は、退院支援、在宅定着期、看取り期の各フェーズにおける多職種連携のプロセス、介入フロー、情報共有手段、記録様式等を体系化している。リハビリ・口腔管理等との一体的取組の好事例も収載しており、現場における実務の標準化を促進するツールとなる
その他行政的観点からの成果
都道府県の第8次医療計画の分析から、訪問栄養指導の認知度の低さや具体的な数値目標の欠如を明らかにした。これを踏まえ、次期医療計画等に活用できる提言とテンプレートを作成した。地域の低栄養リスク者数と管理栄養士の対応能力から、二次医療圏単位で必要な人材を推計する計算式や確保目標数の設定方法を明示し、行政が地域特性に応じた計画的な体制整備を行うための政策的基盤を提供した。
その他のインパクト
これまで十分に機能していなかった栄養ケア・ステーション等の連携拠点が果たすべきハブとしての役割を明確化し、管理栄養士を中心とした多職種連携を推進する包括的な在宅栄養管理モデルを提示した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2026-08-19
更新日
-

収支報告書

文献番号
202521011Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,182,000円
(2)補助金確定額
4,182,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 0円
人件費・謝金 1,144,575円
旅費 321,425円
その他 1,754,000円
間接経費 962,000円
合計 4,182,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2026-08-19
更新日
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