難治性疾患由来外来因子フリー人工多能性幹細胞の委託作製とバンク化

文献情報

文献番号
201024050A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性疾患由来外来因子フリー人工多能性幹細胞の委託作製とバンク化
課題番号
H21-難治・一般-169
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
江良 択実(熊本大学 発生医学研究所 幹細胞部門 幹細胞誘導分野)
研究分担者(所属機関)
  • 北川 道憲(熊本大学 発生医学研究所 系統発生分野)
  • 西中村 隆一(熊本大学 発生医学研究所 腎臓発生分野)
  • 尹 浩信(熊本大学大学院生命科学研究部 皮膚病態治療再建学)
  • 房木ノエミ(ディナベック株式会社 細胞工学グループリーダー)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
96,590,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
希少性が高く有限である難治性疾患の生体試料を有効利用するために、難治性疾患由来人工多能性幹細胞(iPS細胞)の医師や研究者からの委託作製と、作製したiPS細胞のバンク化システムの構築が研究目的である。
研究方法
皮膚生検後、iPS細胞樹立のための皮膚線維芽細胞の樹立を行う。次に、SeVベクターにて初期因子を一過性に発現させ、もっとも簡便で、確実なiPS細胞作製方法の確立を行う。また必要に応じて末梢血液からの樹立も行う。樹立したiPS細胞については、1)未分化マーカー発現2)三胚葉系細胞への分化を誘導し、多能性を確認する。
結果と考察
1) 医薬基盤研、理研BRCとのサンプルのやり取りについてのルールを記した書類の作製と説明用パンフレットの作製、2)疾患由来iPS細胞のバンクへの登録、3)市民公開シンポジウムの開催、4) 基礎と臨床の共同研究の成立を行った。またiPS細胞の樹立については、a) 未分化マーカーのRT-PCR法での発現確認方法を確立、b) 分化マーカーのqRT-PCR法による発現量を測定する方法を確立した。加えて、末梢血液からのiPS細胞誘導方法を確立した。難治性疾患からのiPS細胞の樹立では、合計81疾患、179症例の皮膚生検サンプルより線維芽細胞を樹立し、現在iPS細胞の誘導中である。うち30症例では、iPS細胞を樹立し依頼医師へ提供した。この中には、難治性疾患の研究班からのサンプルも含まれており、ようやく多くの研究者にこの事業が知れ渡ったと考えられる。提供したiPS細胞は、倫理委員会の承認と患者の同意のもと研究へ使われる。バンクに登録したiPS細胞については、供給体制が整いしだい供給を開始するが、その際も使用機関での倫理審査の承認があることが供給の前提となる。
結論
血液細胞からのiPS細胞樹立方法を確立したことから、難治性後天性血液疾患からiPS細胞を作製することが可能となった。ただし効率が低いのでさらなる検討が必要である。作製したiPS細胞は基礎研究と臨床研究に広く活用可能であり、PRを十分に行えば多くの研究者が使うことが予想できる。学会やシンポジウム、あるいは研究班の班会議での事業の紹介はサンプルを集める上で効果的であった。また市民シンポジウムを開催し、バンク事業を市民や患者に紹介していくことは、この事業を理解してもらう上で重要である。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024050Z