地域の実情に応じた在宅医療提供体制構築のための研究

文献情報

文献番号
202521003A
報告書区分
総括
研究課題名
地域の実情に応じた在宅医療提供体制構築のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23IA1005
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
田宮 菜奈子(国立大学法人筑波大学 医学医療系 / ヘルスサービス開発研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 柏木 聖代(国立大学法人東京科学 大学院保健衛生学研究科)
  • 黒田 直明(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 公共精神健康医療研究部)
  • 浜田 将太(東京薬科大学 薬学部 薬剤疫学講座)
  • 八木 怜奈(田口 怜奈)(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 長寿医療研修センター)
  • 城戸 崇裕(筑波大学 附属病院小児科)
  • 孫 瑜(ソン ユ)(筑波大学 医学医療系)
  • 羽成 恭子(筑波大学 ヘルスサービス開発研究センター)
  • 小宮山 潤(筑波大学 医学医療系 ヘルスサービスリサーチ分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
6,358,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
在宅医療の需要が増加する中、地域の実情に応じた在宅医療提供体制構築が重要となる。本研究班では、第8次医療計画の見直しに向けた在宅医療の課題や指標例等を検討するための基礎資料を得ることを目的とし、令和7度は以下の3つの課題に対して5件の研究を行った。
研究方法
各課題の研究テーマを示す(詳細な方法は省略する)。
【課題 1・地域別の課題の検討】
研究1 地域別の施設への訪問診療利用者の特徴に関する検討:NDBを用いた分析
研究2 訪問看護サービスの利用における地域格差:全国データを用いた横断研究

【課題 2・専門職毎の提供実態】
研究3 日本における訪問診療を開始した要介護認定高齢者の臨床的サブタイプ:全国規模の潜在クラス分析
研究4 自治体の医療介護突合データを用いた在宅死亡前の訪問薬剤管理指導等の利用についての検討

【課題 3・在宅医療における特徴的な項目ごとの検討】
研究5 小児への在宅医療についてのヒアリング調査
結果と考察
【課題 1・地域別の課題の検討】
研究1,2より高齢者人口における施設への訪問診療利用状況および訪問看護サービスの利用状況には地域差が存在し、いずれも都市部や西日本では比較的利用者が多いのに対して、東北地方では利用者が少ない傾向がみられた。
施設への訪問診療利用者の地域差は医療・介護資源と関連しており、機能強化型在支診・在支病数や介護付きホーム定員数が多い地域ほど施設への訪問診療割合が高く、介護保険施設定員数が多い地域ほど少ないことが示された。一方、訪問看護利用者は訪問看護資源が多い地域、都市部や居住可能面積の広い地域で利用が多かった。施設への訪問診療利用者における臨床的アウトカムに関しては、北海道および西日本地域で入院が多い一方で、在宅(在施設)死割合は東日本地域で多いことが示された。これらは医療資源と相関しており、病床数の多い地域では入院が多く、在宅(在施設)死割合)看取りが相対的に少ない一方、機能強化型在支診・在支病利用割合が多い地域では在宅(在施設)看取りが多くなっていた。

【課題 2・専門職毎の提供実態】
研究3では自宅への訪問診療を新規に開始した要介護認定患者を、臨床的特徴の異なる7つのサブタイプに分類した。これらのサブタイプにより利用する医療介護サービスやアウトカムに差異が認められ、整形外科疾患型を基準とすると、進行がん型、呼吸器疾患型、多疾患併存型が死亡、往診のリスクが高くなっており、訪問看護や訪問薬剤の利用も多かった。一方、認知・身体機能低下を特徴とするサブタイプでは、訪問介護などの介護的側面の強いサービスの利用が目立ち、死亡と往診利用は進行がん型、呼吸器疾患型、多疾患併存型ほどではないがやや多くなっていた。そして、整形外科疾患型や認知症型、神経疾患型では、介護的側面の強いサービスの利用が目立ち、死亡リスクおよび往診利用割合も低かったことから、比較的安定した臨床経過をとり、医療的ニーズよりも機能障害に起因する介護ニーズが中心となっていると考えられた。本研究結果を活用することで地域毎の患者サブタイプ数に合わせて必要な医療介護資源が予測でき、資源の配分にも役立つと考えられた。また、病状が進行した状態での医療用麻薬使用患者における訪問薬剤利用割合は著明に増加していたことを踏まえると、この指標は在宅医療における質指標の一つになり得る可能性が示唆された。

【課題 3・在宅医療における特徴的な項目ごとの検討】
研究5では、訪問診療医へのヒアリングを通じて、小児在宅医療における課題が提供体制、診療実務、患者・家族およびライフコースの3つの側面から構造的に存在することが示唆された。まず提供体制の観点では、担い手不足および参入障壁の存在が共通して指摘され、特にバックベッドの確保や医療機関間の連携体制が小児在宅医療の導入および継続における重要な前提条件となっている可能性が示された。診療実務の観点では、小児在宅医療は成人と比較して高い専門性を要し、個々の医師のみで完結することが困難であることが示された。このため、小児在宅医療の症例数を多く有する医療機関との連携や相談体制の整備が重要であると考えられ、遠隔医療を活用したモデルの有用性も示唆された。患者・家族およびライフコースの観点では、症状の進行後や、小児から成人への移行期になってから介入するのではなく、より早期から関与することで患者・家族等と医療従事者の関係性が構築され、急変時や移行期における対応が円滑となる可能性が示唆された。
結論
本研究班は、各専門職にわたるチームで構成されており、厚生労働省と連携しながら現場のニーズにあった研究を進めることができた。これらの結果は、今後の地域の特性や状況に応じた在宅医療提供体制を構築するための基礎資料になり得ると考える。

公開日・更新日

公開日
2026-09-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2026-09-28
更新日
-

文献情報

文献番号
202521003B
報告書区分
総合
研究課題名
地域の実情に応じた在宅医療提供体制構築のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23IA1005
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
田宮 菜奈子(国立大学法人筑波大学 医学医療系 / ヘルスサービス開発研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 柏木 聖代(国立大学法人東京科学大学 大学院保健衛生学研究科)
  • 黒田 直明(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 公共精神健康医療研究部)
  • 森岡 典子(国立大学法人東京科学大学 大学院保健衛生学研究科)
  • 浜田 将太(東京薬科大学・ 薬学部 )
  • 八木 怜奈(田口 怜奈)(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 長寿医療研修センター)
  • 城戸 崇裕(筑波大学 附属病院小児科)
  • 孫 瑜(ソン ユ)(筑波大学 医学医療系)
  • 羽成 恭子(筑波大学 ヘルスサービス開発研究センター)
  • 小宮山 潤(筑波大学 医学医療系 ヘルスサービスリサーチ分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班では、在宅医療の課題や指標例等を検討するための基礎資料を得ることを目的とし、令和5年度~7年度にかけて計22の研究を実施した。
研究方法
【課題 1 地域別の課題の検討】
研究1 自宅への訪問診療(全国)
研究2 施設への訪問診療(全国)
研究3 訪問看護 (全国)
研究4 訪問看護と訪問診療の組み合わせ(茨城県)
研究5 ステーションの規模別にみた教育・研修体制 
研究6 ステーションの損益と関連要因 
研究7 ステーションのアウトカム評価

【課題 2 専門職毎の提供実態】
研究8 訪問診療、訪問看護毎の患者の特徴
研究9 訪問診療、訪問看護毎の家族介護者の主観的アウトカム
研究10 訪問診療利用者の潜在クラス分析 
研究11 口腔・栄養・リハビリテーションに関する訪問サービス
研究12 各訪問サービス利用者の経時的・地域横断的分析 
研究13 訪問薬剤管理指導等の実態 
研究14 医療用麻薬や中心静脈栄養製剤を処方者における訪問薬剤管理指導等の利用
研究15 在宅死亡前の訪問薬剤管理指導等の利用
研究16 自宅退院後30日以内の再入院率 

【課題 3・在宅医療における特徴的な項目ごとの検討】
研究17 レセプトデータを用いた小児の在宅医療の利用実態 
研究18 医療的ケア児に対する茨城県内の関係諸機関に対する聞き取り調査 
研究19 小児在宅医療についてのアンケート 
研究20 小児在宅医療についてのヒアリング 
研究21 諸外国における安楽死に関する現状およびアジアにおける人生の最終段階における意思決定支援の取り組み 
研究22 パンデミック前後における自宅への新規訪問診療導入者とその転帰
結果と考察
【課題 1・地域別の課題の検討】
訪問診療や訪問看護の受療割合、患者特性、サービス利用、アウトカムには著明な地域差があり、地域の医療・介護資源の配置と関連していた。アウトカムに関しては高齢者人口あたりの病床数が多い西日本地域では入院率が高く、逆に病床数が少ない東日本・北日本地域では死亡した患者における在宅死率が高かった。つまり、病床数の多さが、状態悪化時の入院の選択に影響を与えており、supply-induced-demandにつながっている可能性が示唆された。また、近くに訪問看護があれば訪問診療は比較的遠方でも提供可能であることが示唆され、訪問看護は訪問診療と比べてより小さい地域的単位で整備を図ることが望ましいのではないかと推察された。

【課題 2・指標等を用いた実態の把握】
訪問診療と訪問看護両方利用群で最も医療や介護のニーズが高い患者の割合が高かった。また、訪問診療利用群では介護時間が長く、家族介護者のQOLや幸福度も低くなっていた。訪問診療受療者の潜在クラス分析では7つのサブタイプに分類され、往診や死亡リスクの高い群(進行がん型、呼吸器疾患型、多疾患併存型)、中間群(認知・身体機能低下型)、低い群(整形外科疾患型や認知症型、神経疾患型)に大別された。
訪問薬剤の研究から、医療用麻薬やTPN製剤使用者における訪問薬剤管理指導は県レベルでの指標であること、症状が進んだ段階での医療用麻薬使用者における訪問薬剤管理指導等の利用は在宅医療における質指標の一つになり得る可能性が示唆された。

【課題 3・在宅医療における特徴的な項目ごとの検討】
レセプトデータ分析から、医療デバイス依存児における訪問診療利用者の割合は15.9%に留まっていることが示された。訪問診療医への質問紙調査では、多くの回答者が小児の在宅医療について、成人よりもやや難しいと感じていながらも、提供するサービスは成人と変わらないと考え、それが「うまくいっている」と感じていた。「うまくいっている」ことと関連する要因として、機能強化型在支診への勤務、小児科専門医資格、入院先の確保困難がないこと、ACPの実践、重症心身障害児施設での診療経験といった項目が抽出された。さらにヒアリングを通じて、小児在宅医療における課題が提供体制、診療実務、患者・家族およびライフコースの3つの側面から構造的に存在することが示唆された。
ACPの文献レビューでは、各国・地域がそれぞれの実情を踏まえながら、人生の最終段階における医療・ケアに関する意思決定支援について取り組んでいることが示された。
パンデミック時の在宅医療の実態としては、訪問診療導入後3か月以内の入院割合は減少し、その一方で死亡した患者や在宅看取りがあった割合は増加傾向であったが、その変化は特にがん患者で大きかった。特異的な状況では、希望する療養場所が変化する可能性を認識し、医療資源を効果的に配分する必要があると考えられた。
結論
3つの課題に対して様々な角度から研究を行った。本成果を通して、地域ごとの特性や課題に応じて、在宅医療をより効率的・効果的に提供する体制を構築するための基礎資料が得られた。

公開日・更新日

公開日
2026-09-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-09-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202521003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
全国のNDB・介護DB、自治体レセプトデータ、質問紙調査等を用いて、在宅医療・訪問看護・訪問薬剤の利用実態や利用者の類型化、小児在宅医療、ACP、コロナ禍における在宅医療の実態と課題を明らかにした。特に、訪問診療利用者の地域差や医療・介護資源とアウトカムとの関連を検討した研究は、我が国で初めてNDB・介護DB連結データを用いて実施されたものであり、国内外の学会発表や学術誌を通じて発信され、在宅医療政策や提供体制整備に資する重要な知見を提供した。
臨床的観点からの成果
本研究により、訪問診療利用者は多疾患併存型、認知症型、進行がん型など7つの臨床的サブタイプに分類され、それぞれで医療・介護サービス利用や死亡・往診リスクが異なることが明らかとなった。また、訪問診療利用者の家族介護者では介護時間が長く、幸福度やQOLが低い傾向が認められた。これらの成果は、患者特性に応じた在宅医療の提供や多職種連携、家族介護者支援の充実に活用可能であり、患者・家族双方のQOL向上や質の高い在宅療養の実現に貢献することが期待される。
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
本研究では、厚生労働省と継続的に連携しながら、訪問診療、訪問看護、訪問薬剤、口腔・栄養・リハビリテーションの一体的提供に加え、小児在宅医療、ACP、COVID-19パンデミック時の在宅医療など、在宅医療を取り巻く多面的な課題について、実態把握や評価指標の検討、課題分析を行った。これらの成果は、在宅医療提供体制の評価や地域の実情に応じた医療・介護資源配置の検討に活用可能な基礎資料・エビデンスを提供するものであり、今後の医療計画策定や在宅医療政策の推進に貢献することが期待される。
その他のインパクト
全国の訪問診療利用者における地域差や医療・介護サービス利用、アウトカムを分析した研究は Geriatrics & Gerontology International(2025)に掲載され、COVID-19パンデミック前後における訪問診療利用者の利用実態と転帰の変化を検討した研究は Journal of Epidemiology(2026)に掲載された。また、研究成果は国内外の学会でも発信されており、今後も論文発表や講演活動を通じて在宅医療に関する普及・啓発を進める予定である。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sun Y, Komiyama J, Iwagami M
Regional Differences in Characteristics, Service Utilization, and Outcome of Patients Receiving Physician-Led Home Visit Care in Japan: A Nationwide Study
Geriatr Gerontol Int , 25 (11) , 1546-1554  (2025)
10.1111/ggi.70202
原著論文2
Sun Y, Komiyama J, Miyawaki A
Changes in home-visit care utilization and outcomes during the coronavirus disease 2019 pandemic: Comparison between patients with and without cancer
J Epidemiol. Online ahead of print  (2026)
10.2188/jea.JE20250543

公開日・更新日

公開日
2026-09-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
202521003Z