災害派遣精神医療チーム(DPAT)活動における機能強化と激甚災害(南海トラフ地震等)への対応検討のための研究

文献情報

文献番号
202521002A
報告書区分
総括
研究課題名
災害派遣精神医療チーム(DPAT)活動における機能強化と激甚災害(南海トラフ地震等)への対応検討のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23IA1004
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
福生 泰久(公益社団法人日本精神科病院協会 DPAT事務局)
研究分担者(所属機関)
  • 太刀川 弘和(国立大学法人筑波大学 医学医療系臨床医学域 災害・地域精神医学)
  • 立石 清一郎(産業医科大学 産業生態科学研究所)
  • 五明 佐也香(獨協医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
2,114,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成23年に災害発生直後より精神科医療ニーズに対応できるチーム(災害派遣精神医療チーム:DPAT)が発足され、以降各自治体において着実に整備されてきている一方で、被災自治体やDPAT派遣元の自治体、ほかの支援チームからの客観的な評価は十分であるとは言い難い。さらに、今後想定される南海トラフ地震を考慮すると、現在のDPAT体制は脆弱であると言わざるを得ない。
 今年度の本研究班では、南海トラフ地震等の巨大地震時における被災想定や過去の災害時のデータの解析から、必要なDPAT隊数を推計したほか、DPATの新たな機能や連携体制を構築することを目的とした。さらに、今後質の高い研修や訓練を実施するうえで中核的な存在となりうる、DPATインストラクタ―の役割等について明確化した。
 なお、令和7年3月31日に改正されたDPAT活動要領では、「DPAT先遣隊」の名称が「日本DPAT」に変更となったため、本研究報告書から「日本DPAT」を採用しているが、令和6年度までの研究における「DPAT先遣隊」のことであること留意いただきたい。
研究方法
本研究では、以下の研究を行った。
・DMAT隊員へのアンケート調査により、被災地域において精神科を標榜しない総合病院でも精神科医療ニーズが一定数存在することを確認した。
・内閣府が公表している南海トラフ地震等の巨大地震における被災想定とEMISを用いて、耐震性・津波リスクを踏まえた被災精神科病院数と避難想定入院患者数を推計した。
・過去の大規模地震時医療活動訓練の総括からの課題抽出のほか、令和6年度の大規模地震時医療活動訓練において、災害拠点精神科病院における課題の整理を行った。
・南海トラフ地震のメンタルヘルスケアニーズ推定では、東日本大震災・熊本地震のデータによるメタ解析でPTSS・抑うつの有症率を算出し、必要DPAT隊数を推計した。
・能登半島地震のJ SPEED記録を熊本・胆振東部地震と比較し、地域特性による症状傾向の違いを分析した。
・DOHAT・DPAT連携を強化する動画教材を作成し、インストラクター・統括者へのインタビュー調査も実施した。
結果と考察
DMAT155名への調査では、精神科医不在の病院支援で約1割が対応に苦慮し、抑うつ・不安・希死念慮への対応が主な困難であった。DPAT支援は概ね評価され、今後の依頼意向も高かったが、指揮系統の混乱や役割不明瞭さへの懸念が示された。南海トラフ地震の想定では、耐震性や津波リスクを踏まえると最大1万人の精神科入院患者が避難を要し、非自発的入院者や行動制限を要する患者も多数発生することが推計された。
大規模地震時医療活動訓練の分析では、DPAT参加規模は拡大したものの、情報分析不足、DMATとの連携不備、搬送調整の課題が複数年度にわたり改善されていなかった。令和6年度訓練では、病院内指揮系統とDPAT活動拠点本部の機能重複、情報齟齬、措置入院患者の移動に関する法的扱いの不明瞭さなど新たな問題も確認された。
太刀川班は、PTSS・抑うつの発症者を数千〜1万人規模と推計し、必要DPAT隊数は278~1,182隊と算出した。能登半島地震では高齢者比率が高く、不安・不眠に加え抑うつ・希死念慮・フラッシュバックなどが熊本地震より多く、長期支援の必要性が示された。
立石班は、DOHATとDPATの協働を整理した動画教材を作成し、支援者支援の体系化、J‑SPEEDの活用、職場環境改善策、連携モデルを提示した。能登半島地震のデータから、指揮統制の不明確さが疲労悪化とパフォーマンス低下を招くことが示された。
五明班は、DPATインストラクターの早期介入が本部運営の安定化に寄与する一方、指揮系統の混乱、地域理解不足、スキル差による萎縮などの課題を明らかにした。役割の明確化や制度整備が不可欠とされた。
総じて、DPATは災害時に確実な精神科医療ニーズを担う存在であるが、隊数不足、指揮系統の整理、法的課題、他機関連携、長期支援体制など多くの課題が残されている。
結論
南海トラフ地震級の災害では、最大1万人の精神科入院患者避難や数千人規模のPTSS・抑うつ発症が想定され、現行のDPAT隊数では対応が困難である。災害拠点精神科病院の受入能力も不足しており、体制整備とDPAT養成の強化が急務である。また、DMAT等との機能班連携を進め、互いの役割理解を深める必要がある。特にDPATインストラクターは本部運営の要であり、早期介入のメリットを最大化するためにも、役割明確化、地域理解、負担軽減を含む制度的整備が求められる。今後は研修拡充、連携強化、長期支援体制の構築を進め、災害時の精神科医療支援の実効性を高めていくことが必要である。

公開日・更新日

公開日
2026-09-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2026-09-28
更新日
-

文献情報

文献番号
202521002B
報告書区分
総合
研究課題名
災害派遣精神医療チーム(DPAT)活動における機能強化と激甚災害(南海トラフ地震等)への対応検討のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23IA1004
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
福生 泰久(公益社団法人日本精神科病院協会 DPAT事務局)
研究分担者(所属機関)
  • 太刀川 弘和(国立大学法人筑波大学 医学医療系臨床医学域 災害・地域精神医学)
  • 立石 清一郎(産業医科大学 産業生態科学研究所)
  • 五明 佐也香(獨協医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2013年に災害発生直後より精神科医療ニーズに対応できるチーム(災害派遣精神医療チーム:DPAT)が発足し、13年が経過した。着々と各自治体内で、DPATの体制整備がなされてきているが、今後想定される南海トラフ地震や首都直下型地震等の激甚災害を考慮すると、現在のDPAT体制は十分とは言い難い。
 本研究班では、DPAT体制整備が乏しい都道府県の対策として、近隣ブロック体制整備について検討を行い、南海トラフ地震を想定した訓練において課題を抽出し、過去の災害時のデータ解析等を行うことで、激甚災害時に必要なDPAT隊数について推計した。さらに他の支援チームへの調査等を行うことで、新たなDPATの課題や機能、およびその効果を検証し、DPAT事務局が主催する研修等に反映されるよう、提案を行うことを目的とする。
研究方法
本研究では、以下の研究を行った。
福生班は、訓練・アンケート・被災想定分析を通じてDPAT必要隊数の推計、活動課題の抽出、精神科医療需要の可視化を行い、DPATの役割と運用課題を整理した。
太刀川班は、国内外の災害精神保健データやJ‑SPEED記録を分析し、災害規模・地域特性に応じたメンタルヘルスケアニーズと必要隊数を科学的に推定する基盤を構築した。
立石班は、自治体職員など支援者の健康支援に着目し、DOHAT・DPAT・精神保健福祉センターの合理的連携モデルを構築し、平時からの連携強化に向けた教材開発を行った。
五明班は、都道府県間の広域連携やブロック隊体制を調査し、合同訓練・研修の必要性やDPATインストラクターの実災害時の役割を明確化し、広域支援体制の強化を目指した。
結果と考察
本研究は、南海トラフ地震級の激甚災害におけるDPATの役割と必要体制を、福生班・太刀川班・立石班・五明班の4班で多面的に検討した。福生班は大規模地震訓練の調査から、DPAT調整本部には12~20名、活動拠点本部には13~20名が必要で、拠点は平均3か所、各15〜17病院を担当すると推計した。病院支援では1病院3隊、避難患者15~28名につき3隊、受入病院では34名あたり4~8隊が必要とされた。DMAT等への調査ではDPATの認知度不足が課題で、精神科のない総合病院では1割が対応に困難を感じ、DPAT支援への期待が示された。さらに最大1万人の精神科入院患者が避難を要する可能性が推計され、情報分析や連携不足、指揮系統の混乱などの課題も確認された。
太刀川班は世界の災害精神支援データを分析し、南海トラフ地震では最大6,235隊、補正後でも1,592隊が必要と推計した。国内データのメタ分析ではPTSD20.4%、ASD11.1%と算出され、能登半島地震では相談の4割をDPATが担い、不安・不眠が多く、高齢者の症状が顕著だった。PTSS・抑うつの発症者数は数千〜1万人規模と推計され、発災後1日〜1か月で278~1,182隊が必要とされた。
立石班は産業保健領域の課題として、準備不足、人員不足、長時間労働、DPAT隊員の安全衛生などを整理し、DOHAT・DPAT・精神保健福祉センターの連携モデルを提案した。能登半島地震ではJ‑SPEEDにより職員疲弊を可視化し、休息確保に寄与した。
五明班は全国調査で自治体間連携がほぼ未整備で、合同研修が費用面で困難であることを明らかにした。インストラクターの早期参入は本部運営の安定化に寄与する一方、指揮系統の混乱や地域理解不足などの課題も示された。
結論
DPAT本部運営には日本DPAT・インストラクターの配置が不可欠であり、必要隊数は現行の隊員数を大幅に上回る。令和8年時点で日本DPATは1,268名(323隊)、都道府県DPATは5,240名(1,747隊)で、研修拡充とインストラクター養成が急務である。しかし研修費高騰により開催回数が制限され、自治体間で研修の質に差がある。合同研修には国庫補助が求められ、隊員離脱防止や派遣しやすい制度整備も必要である。総合病院へのリエゾン機能、DOHATとの協働、長期的な高齢者支援体制の構築も課題であり、今後は人材育成と自治体連携の強化が求められる。

公開日・更新日

公開日
2026-09-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202521002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
過去の災害診療記録やEMIS、内閣府等が公表している各種データから、南海トラフ地震等の激甚災害時に生じうる精神科病院の被災状況、生じうるメンタルヘルスケアニーズ等の具体的な数値を推計値、それに対応するDPATの必要数を算出した。その結果、南海トラフ時に生じうるメンタルヘルスケアニーズ数については、新聞に取り上げらるほど大きな反響があった。
また、本研究において、被災時に生じうるPTSSや抑うつ症状の割合を推計することに成功した。
臨床的観点からの成果
上記のように、本研究において、被災時に生じうるPTSSや抑うつ症状の発症率が算出されたため、これらにトラウマケア等に対応できる者を増やす必要があることを提案した。
また、支援者支援についての産業医の役割について、明確化し、DPATと連携体制の構築の提案が行えるようになった。
ガイドライン等の開発
上記被災状況等をエクセル上でダッシュボードとしてまとめ、一目でわかるようにした。本ダッシュボードは、DPAT事務局と厚生労働省に提出し、今後の活用についてそれぞれ審議していただく予定である。
また、DPATとDOHATの連携体制案を作成し、DPAT事務局と厚生労働省に提案した。
その他行政的観点からの成果
上記ダッシュボードを活用することで、自らの自治体の被災状況を理解し、そのうえで、災害時にどのような精神医療体制を構築するかに役立てることとなった。
その他のインパクト
上記のように、南海トラフ地震時のメンタルケアニーズの推計は、新聞に取り上げられるほど、大きな反響があった。
また、南海トラフ地震時に避難を余儀なくされる患者数も最終年度に算出されたことから、こちらも大きな反響を呼ぶ可能性がある。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
24件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
新聞報道1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2026-09-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
202521002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,697,000円
(2)補助金確定額
2,697,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 291,219円
人件費・謝金 808,170円
旅費 663,474円
その他 351,137円
間接経費 583,000円
合計 2,697,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2026-09-28
更新日
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