前庭機能異常に関する調査研究

文献情報

文献番号
201024020A
報告書区分
総括
研究課題名
前庭機能異常に関する調査研究
課題番号
H20-難治・一般-020
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 行雄(国立大学法人富山大学 大学院医学薬学研究部(医学)耳鼻咽喉科頭頸部外科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 池園 哲郎(日本医科大学 医学部)
  • 伊藤 壽一(京都大学 大学院医学研究科)
  • 柿木 章伸(東京大学 医学部附属病院)
  • 肥塚 泉(聖マリアンナ医科大学 医学部)
  • 鈴木 衞(東京医科大学 医学部)
  • 高橋 克昌(群馬大学 大学院医学系研究科)
  • 工田 昌也(広島大学 病院(医))
  • 武田 憲昭(徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部(医学系))
  • 土井 勝美(近畿大学 医学部)
  • 山下 裕司(山口大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
23,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 メニエール病の診療ガイドライン策定、疫学的特徴とくに有病率推定と発症年齢の推移、病態の解明とモデル動物の作成、内リンパ水腫の画像診断、難治性内耳疾患の遺伝子バンク構築、診断効率と難治症例の治療効果向上などを目的とした。
研究方法
 メニエール病診療ガイドラインを研究班班全体で作成した。研究班所属施設による疫学調査と有病率推定のための特定地区調査を行った。また、メニエール病発症に関する諸因子とモデル動物の作成、メニエール病、病態、内耳保護、治療に関する基礎的研究、3T-MRIによる画像診断、遺伝子バンクによる試料収集、各種の新検査、新治療法などに関する研究を各施設で分担して行った。
結果と考察
1)メニエール病の診療ガイドラインが作成、出版された。2)メニエール病発症の高齢化と女性優位の年次推移が明らかとなり、また、本邦の患者数が4.5~6万人と推定されて、今後の継続的調査への基礎資料となった。3)メニエール病の発症に実験的内リンパ水腫に加えてエピネフリン負荷、抗利尿ホルモンなど大きく関与することが明らかとなり、また、メニエール病モデル動物が作成されて、今後の治療法開発研究への応用が期待された。4)動物実験的に種々薬剤の前庭保護作用が確認され、また、前庭組織再生医療のための基礎的研究が行われ、今後の進展が期待された。5)ガドリニウム造影MRIによる内リンパ水腫の質的、定量的画像診断が可能となり今後の臨床応用が期待された。6)遺伝子バンクによる試料収集が進捗し、今後の発展が期待された。7)難治性のメニエール病、遅発性内リンパ水腫に対する治療法として、有酸素運動導入、利尿剤と漢方薬の併用、水分摂取療法、新たな中耳加圧治療法が報告され、難治症例に対して良好な有効率が確認された。
結論
本研究班3年次の研究として、メニエール病・遅発性内リンパ水腫に対する、診療ガイドライン作成、疫学的研究、病態解明、治療効果向上などを目的とした基礎的臨床的諸研究が行われた。各研究においていくつかの新知見が報告された。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

文献情報

文献番号
201024020B
報告書区分
総合
研究課題名
前庭機能異常に関する調査研究
課題番号
H20-難治・一般-020
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 行雄(国立大学法人富山大学 大学院医学薬学研究部(医学)耳鼻咽喉科頭頸部外科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 池園 哲郎(日本医科大学 医学部)
  • 伊藤 壽一(京都大学 大学院医学研究科)
  • 柿木 章伸(東京大学 医学部附属病院)
  • 肥塚 泉(聖マリアンナ医科大学 医学部)
  • 鈴木 衞(東京医科大学 医学部)
  • 高橋 克昌(群馬大学 大学院医学研究科)
  • 工田 昌也(広島大学 病院(医))
  • 武田 憲昭(徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部(医学系))
  • 土井 勝美(近畿大学 医学部)
  • 山下 裕司(山口大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
メニエール病の診断基準改訂と診療ガイドラインの作成、疫学的特徴とくに有病率推定と発症年齢の推移、病態の解明とモデル動物の作成、内リンパ水腫の画像診断、難治性内耳疾患の遺伝子バンク構築、診断効率と難治症例の治療効果向上などを目的とした。
研究方法
35年前に作成されたメニエール病診断基準を改訂、診療ガイドラインを作成した。研究班所属施設による疫学調査と有病率推定のための特定地区調査を行った。また、メニエール病発症に関する諸因子とモデル動物の作成、メニエール病、病態、内耳保護、治療に関する基礎的研究、3T-MRIによる画像診断、遺伝子バンクによる試料収集、各種の新検査、新治療法などに関する研究を各施設で分担して行った。
結果と考察
1)改訂された診断基準を基礎にメニエール病の診療ガイドラインが作成、出版された。2)メニエール病発症の高齢化と女性優位の年次推移が明らかとなり、また、本邦の患者数が4.5~6万人と推定されて、今後の継続的調査への基礎資料となった。3)メニエール病の発症に実験的内リンパ水腫に加えてエピネフリン負荷、抗利尿ホルモンなど大きく関与することが明らかとなり、また、メニエール病モデル動物が作成されて、今後の治療法開発研究への応用が期待された。4)動物実験的に種々薬剤の前庭保護作用が確認され、また、前庭組織再生医療のための基礎的研究が行われ、今後の進展が期待された。5)ガドリニウム造影MRIによる内リンパ水腫の質的、定量的画像診断が可能となり今後の臨床応用が期待された。6)遺伝子バンクによる試料収集が進捗し、今後の発展が期待された。7)難治性のメニエール病、遅発性内リンパ水腫に対する治療法として、有酸素運動導入、利尿剤と漢方薬の併用、水分摂取療法、新たな中耳加圧治療法が報告され、難治症例に対して良好な有効率が確認された。
結論
メニエール病・遅発性内リンパ水腫に対する、診断基準の改訂と診療ガイドライン作成、疫学的研究、病態解明と治療に関連した基礎的研究、内リンパ水腫画像診断、遺伝子解明のための試料収集、診断・治療効果向上などを目的とした基礎的臨床的諸研究が行われた。各研究において新知見が報告された。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-02-15
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201024020C

成果

専門的・学術的観点からの成果
1)メニエール病の発症に実験的内リンパ水腫に加えてエピネフリン負荷、抗利尿ホルモンなど大きく関与することが明らかとなった。また、前庭障害を伴うヒトのメニエール病モデル動物が作成されて、今後の治療法開発研究への応用が期待された。2)動物実験的に種々薬剤の前庭保護作用が確認され、また、前庭組織再生医療のための基礎的研究が行われ、今後の進展が期待された。3)難治性内耳疾患の遺伝子バンクが整備され、種々の解析が可能となり今後の発展が期待された。
臨床的観点からの成果
1)ガドリニウム造影による内リンパ水腫の質的、定量的画像診断が可能となり今後の臨床応用が期待された。2)メニエール病、前庭障害を評価するための種々の生理的検査法が新たに開発された。また、前庭刺激に対する中枢応答から、前庭障害に対するリハビリテーションに関する情報が得られた。3)メニエール病、遅発性内リンパ水腫に対する治療法として、有酸素運動導入、利尿剤と漢方薬の併用、水分摂取療法、新たな中耳加圧治療法が報告され、難治症例に対して良好な有効率が確認された。
ガイドライン等の開発
1974年に作成されたメニエール病診断基準を改訂し、メニエール病確実例、非定型例(蝸牛型)と非定型例(前庭型)の定義を明確にし、さらに原因既知疾患の除外の重要性を強調した。本ガイドラインを基礎に、メニエール病診療ガイドラインを出版した。メニエール病の疾患概念、急性期めまいの取り扱いと治療、必要な検査、発作予防のための治療、周辺疾患の解説と鑑別診断、疫学的特徴、メニエール病の歴史と基礎的研究などの諸点と、治療に関する論文抄録集を掲載した。
その他行政的観点からの成果
メニエール病の疫学的特徴とくに有病率推定と発症年齢の推移について調査活動を行った。本邦におけるメニエール病の有病率は40~50/10万人、患者数は4.5~6万人程度と推定された。また、近年のメニエール病発症の高齢化と女性優位の年次推移が明らかとなった。さらに、遅発性内リンパ水腫の調査が行われ、年齢分布、原因疾患について、これまで例を見ない多数例により特徴が明らかとなった。
その他のインパクト
・渡辺行雄:病院の実力-富山編27.読売新聞,2010,2,7.
・渡辺行雄:めまい・メニエール病の的確な診断・治療.週刊朝日,5月7-14日合併号,77,2010.
・渡辺行雄:病気のシグナル-めまい・ふらつき編2-.北日本新聞,2010,11,24.
・渡辺行雄:内耳性めまい.市民公開講座「病気のシグナルvol.1」基調講演,2011,2,26,富山.

発表件数

原著論文(和文)
35件
原著論文(英文等)
105件
その他論文(和文)
36件
メニエール病診断基準、メニエール病診療ガイドライン ほか
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
250件
学会発表(国際学会等)
70件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計7件
その他成果(特許の取得)
0件
特許取得4件、特許申請中2件、特許審査請求中1件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
6件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Shojaku H, Watanabe Y, Yagi T, et al.
Changes in the characteristics of definite Meniere’s disease over time in Japan: a long-term survey by the Peripheral Vestibular Disorder Research Committee of Japan, formerly the Meniere’s Disease Research Committee of Japan.
Acta Oto-Laryngologica , 129 (2) , 155-160  (2009)
原著論文2
Shojaku H,Watanabe Y, Takeda N, et al
Clinical characteristics of delayed endolymphatic hydrops in Japan: A nationwide survey by the Peripheral Vestibular Disorder Research Committee of Japan.
Acta Oto-Laryngologica , 130 (10) , 1135-1140  (2010)
原著論文3
Fushiki H, Ishida M, Sumi S, et al
Correlation between canal paresis and spontaneous nystagmus during early stage of acute peripheral vestibular disorders.
Acta Oto-Laryngologica , 130 (12) , 1352-1357  (2010)
原著論文4
H Shojaku,Y Watanabe,H Mineta, et al
Long-term effects of the Meniett device in Japanese patients with Meniere's disease and delayed endolymphatic hydrops reported by the Middle Ear Pressure Treatment Research Group of Japan.
Acta Oto-Laryngologica , 131 (3) , 277-283  (2011)
原著論文5
Aoki M, Hayashi H, Kuze B,et al
The association of the plasma vasopressin level during attacks with a prognosis of Meniere’s disease.
International Journal of Audiology , 49 (1) , 1-6  (2010)
原著論文6
Fukuoka H, Tsukada K, Miyagawa M,et al
Semi-quantitative evaluation of endolymphatic hydrops by bilateral intratympanic gadolinium-based contrast agent (GBCA) administration with MRI for Meniere's disease.
Acta Oto-Laryngologica , 130 (1) , 10-16  (2010)
原著論文7
Ikezono T, Shindo S, Sekiguchi S,et al
Cochlin-tomoprotein (CTP), a novel perilymph-specific protein and a potential marker for the diagnosis of perilymphatic fistula.
Audiol Neurotol. , 14 (5) , 338-344  (2009)
原著論文8
Nakagawa T, Ito J.
Local drug delivery to inner ear for treatment of hearing loss.
Current Drug Therapy , 3 , 143-147  (2008)
原著論文9
Angunsri N, Taura A, Nakagawa T,et al
Insulin-like growth factor 1 protects vestibular hair cells from aminoglycosides.
Neuroreport , 22 (1) , 38-43  (2011)
原著論文10
Nishioka R, Takeda T, Kakigi A, et al
Expression of aquaporins and vasopressin type 2 receptor in the stria vascularis of the cochlea.
Hear Res. , 260 (1) , 11-19  (2010)
原著論文11
Nishimura M, Kakigi A, Takeda T, et al
Time course changes of vasopressin-induced enlargement of the rat intrastrial space and the effects of a vasopressin type 2 antagonist.
Acta Oto-Laryngologica , 129 (7) , 709-715  (2009)
原著論文12
Otsuka K, Suzuki M, Shimizu S, et al
Model experiments of otoconia stability after canalith repositioning procedure of BPPV.
Acta Oto-Laryngologica , 130 (7) , 804-809  (2010)
原著論文13
Ishibashi T, Takumida M, Akagi N, et al
Expression of transient receptor potential vanilloid (TRPV) 1, 2, 3 and 4 in mouse inner ear.
Acta Oto-Laryngologica , 128 (12) , 1286-1293  (2008)
原著論文14
Ishibashi T, Takumida M, Akagi N,et al
Changes in transient receptor potential vanilloid (TRPV) 1, 2, 3 and 4 expression in mouse inner ear following gentamicin challenge.
Acta Oto-Laryngologica , 129 (2) , 116-126  (2009)
原著論文15
Kitahara T, Doi K, Maekawa C, et al
Meniere's attacks occur in the inner ear with excessive vasopressin type-2 receptors.
J Neuroendocrinol , 20 (12) , 1295-1300  (2008)
原著論文16
Sato G, Uno A, Horii A,et al
Effects of hypergravity on histamine H1 receptor mRNA expression in hypothalamus and brainstem of rats: implications for development of motion sickness.
Acta Oto-Laryngologica , 129 (1) , 45-51  (2009)
原著論文17
Maekawa C, Kitahara T, Kizawa K,et al
Expression and translocation of aquaporin-2 in the endolymphatic sac in patients with Meniere’s disease.
J Neuroendocrinol , 22 (11) , 1157-1164  (2010)
原著論文18
K Kizawa, T Kitahara, A Horii, et al
Behavioral assessment and identification of a molecular marker in a salicylate-induced tinnitus in rats.
Neuroscience , 165 (4) , 1323-1332  (2010)
原著論文19
Ikezono T, Shindo S, Sekiguchi S,et al
The performance of CTP detection test for the diagnosis of perilymphatic fistula.
Audiol Neurootol. , 15 (3) , 168-174  (2010)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024020Z