文献情報
文献番号
202518013A
報告書区分
総括
研究課題名
成人の侵襲性細菌感染症サーベイランスの強化のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
25HA1001
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
明田 幸宏(国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所 細菌第一部)
研究分担者(所属機関)
- 常 彬(国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所 細菌第一部)
- 林原 絵美子(国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所・細菌第二部)
- 高橋 英之(国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所 細菌第一部)
- 池辺 忠義(国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所 細菌第一部)
- 新橋 玲子(国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所 感染症疫学センター)
- 加藤 博史(国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所 実地疫学研究センター)
- 福住 宗久(国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所 実地疫学研究センター)
- 土橋 酉紀(国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所 感染症疫学センター)
- 木下 諒(国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所 感染症疫学センター)
- 金城 雄樹(東京慈恵会医科大学 細菌学講座)
- 黒沼 幸治(札幌医科大学医学部呼吸器・アレルギー内科学講座)
- 阿部 修一(山形県立中央病院 感染症内科・感染対策部)
- 大島 謙吾(東北大学病院 総合感染症科)
- 田邊 嘉也(新潟大学 呼吸器・感染症内科)
- 丸山 貴也(三重県立一志病院 内科)
- 笠原 敬(奈良県立医科大学 感染症内科学)
- 山岸 由佳(高知大学 教育研究部医療学系臨床医学部門)
- 後藤 憲志(久留米大学 医学部感染制御学講座)
- 西 順一郎(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 微生物学分野)
- 仲松 正司(琉球大学大学院 医学研究科感染症・呼吸器・消化器内科学講座・感染対策室)
- 大石 和徳(富山県衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
令和7(2025)年度
研究終了予定年度
令和9(2027)年度
研究費
10,230,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、継続的に国内 10 道県において侵襲性肺炎球菌感染症(IPD), 侵襲性インフルエンザ菌感染症(IHD),侵襲性髄膜炎菌感染症(IMD),劇症型溶血性レンサ球菌感染(STSS)の患者及び病原体のサーベイランスを実施し、 4 疾患の発生動向と原因菌の血清型等の関連性を明らかにすることを目的としている。本研究は医療機関と自治体が協力して実施され、予防接種施策等の公衆衛生対策に反映される点に特色があり独創的である。さらに病原体ゲノムを用いたゲノムサーベイランスについても進め、疫学情報とともに病原体情報を組み合わせた詳細なサーベイランスが実施可能となっている。また本研究班の研究成果は国の予防接種有効性評価等にも活用されている。今期研究班では 4 疾患のサーベイランス及び病原体ゲノムサーベイランスの拡充を更に進めるとともに、対象病原体による非侵襲性症例や届出基準非該当症例、それらからの分離菌株についても可能な限り協力機関からの収集を進め、侵襲性感染症と非侵襲性感染症等との比較解析等を実施する。さらにウイルス感染症との混合感染による侵襲性細菌感染症の重症化の実態や関連性についてより詳細を明らかにする。
研究方法
侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)、侵襲性インフルエンザ菌感染症(IHD)、侵襲性髄膜炎菌感染症(IMD)、劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)を対象として、臨床情報および病原体情報を統合した全国規模のサーベイランスを実施し、発生動向、原因菌の血清型・遺伝子型、薬剤耐性、ワクチンカバー率等について解析を行った。
結果と考察
成人侵襲性細菌感染症に関する全国サーベイランスを実施し、病原体の疫学動向、分子疫学的特徴、薬剤耐性およびワクチン効果に関する重要な知見を得た。成人侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)では血清型3が最多であり、PCV21は75.9%と高い血清型カバー率を示した。また、PCV21特有血清型の増加が認められ、今後の血清型置換への影響が示唆された。侵襲性インフルエンザ菌感染症(IHD)では無莢膜型インフルエンザ菌(NTHi)が大部分を占め、アンピシリン非感受性株も高頻度に認められた。侵襲性髄膜炎菌感染症(IMD)はCOVID-19流行後に再増加し、2025年には過去最多を記録した。劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)では、A群レンサ球菌M1UK系統株の国内流行を確認した。さらに、高齢者における肺炎球菌ワクチン導入効果を評価した結果、PCV20およびPCV21の導入により成人IPDをそれぞれ約15%、23%減少させる可能性が示された。加えて、ワクチン接種戦略の費用対効果分析モデルを構築するとともに、PCV20免疫血清による抗体結合性を確認し、ワクチンの感染防御効果を支持する結果を得た。これらの成果は、侵襲性細菌感染症対策および今後の予防接種政策立案に資する重要な科学的基盤となる。
結論
本研究により、COVID-19パンデミック下で一時的に減少していた侵襲性細菌感染症が、パンデミック収束後に再び増加傾向へ転じていることが明らかとなった。侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)、侵襲性インフルエンザ菌感染症(IHD)、侵襲性髄膜炎菌感染症(IMD)、劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)を対象とした全国規模のサーベイランスにより、病原体の血清型・遺伝子型動向や患者背景の変化を把握するとともに、コロナ禍前後における流行動態の変化や新たな流行株の出現を明らかにした。特にIPDでは血清型3や19Aの再増加、IMDでは新たな遺伝子型の国内定着、STSSでは新規変異株の拡大が示唆され、継続的な分子疫学的監視の重要性が確認された。また、肺炎球菌ワクチンの免疫学的評価や費用対効果分析を通じて、今後のワクチン政策を科学的に評価するための基盤整備を進めることができた。一方で、現行ワクチンでは十分な予防効果が得られていない病原体や血清型への対応、高齢者におけるワクチン接種率向上などの課題も明らかとなった。今後は、ワクチンの有効性評価に加え、リスク集団を対象とした予防戦略やワクチンに依存しない感染対策の検討を進めるためにも、病原体情報を含む継続的かつ高精度な感染症サーベイランスを推進することが重要である。
公開日・更新日
公開日
2026-08-29
更新日
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