運動失調症の病態解明と治療法開発に関する研究

文献情報

文献番号
201024014A
報告書区分
総括
研究課題名
運動失調症の病態解明と治療法開発に関する研究
課題番号
H20-難治・一般-014
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
西澤 正豊(新潟大学 脳研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 辻  省次(東京大学医学部 附属病院 神経内科)
  • 佐々木 秀直(北海道大学 神経内科)
  • 貫名 信行(独立行政法人 理化学研究所)
  • 鈴木 康之(岐阜大学 医学部 )
  • 祖父江 元( 名古屋大学 神経内科)
  • 小野寺 理(新潟大学 脳研究所)
  • 山田 光則(国立病院機構 さいがた病院)
  • 黒岩 義之(横浜市立大学 神経内科)
  • 武田  篤(東北大学 神経内科)
  • 和田 圭司(国立精神・神経センター 神経研究所 )
  • 吉田 邦広(信州大学 医学部)
  • 高嶋  博(鹿児島大学 神経病学講座)
  • 中島 健二(鳥取大学医学部 脳神経内科)
  • 永井 義隆(国立精神・神経センター 神経研究所 )
  • 矢部 普正(東海大学 医学部)
  • 吉良 潤一(九州大学大学院)
  • 加我 牧子(国立精神・神経センター 精神保健研究所)
  • 加藤 剛二(名古屋第一赤十字病院 小児医療センター)
  • 瀧山 嘉久(山梨大学医学部 神経内科学講座)
  • 水澤 英洋(東京医科歯科大学大学院)
  • 今中 常雄(富山大学大学院)
  • 宮井 一郎(社会医療法人大道会 森之宮病院)
  • 中田 力(新潟大学 脳研究所)
  • 平井 宏和(群馬大学大学院)
  • 岡澤 均(東京医科歯科大学)
  • 二村 直伸(国立病院機構 兵庫中央病院)
  • 池田 佳生(岡山大学大学院)
  • 山海 嘉之(筑波大学大学院)
  • 桑原 聡(千葉大学大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
57,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
運動失調症を共通の主症状とする脊髄小脳変性症SCD、多系統萎縮症MSAおよび副腎白質ジストロフィーALDを対象として、その病態を解明し、病態の進行を阻止できる治療法を確立することにより、これらの神経難病を克服する。
研究方法
代理バイオマーカーの開発。治療法に関する基礎的検討。自然歴に関する前向き研究、全国共同研究組織の構築。運動失調症に対するリハビリテーションの有効性の検討。SCDの原因遺伝子の同定。ALDにて骨髄移植を実施できる診療体制の確立を行った。
結果と考察
MRIによる指標が臨床スケールと相関することを示した。PETにて蓄積するα-シヌクレインを可視化した。モデルマウスにてポリグルタミン凝集体を分解させる方法を開発した。ポリグルタミンの二量体形成阻害剤、蛋白を細胞核外に移行させる化合物を同定した。プルキニエ細胞選択的に遺伝子導入が可能なシステムを開発した。MSAにてゲノム欠失を明らかにした。SCA15,SCA31の原因遺伝子を同定した。MJDとSCA6の重症度の変化を明らかにした。短期集中型のリハビリの小脳失調への有効性を示した。HALにて立位姿勢保持を促進する視覚フィードバックシステムを開発した。ALDの造血幹細胞移植治療における前処置方法を確立した。
JAMSAC、JASPACによる活動が順調に進行し、大規模なデータベースが構築し、代理バイオマーカーの候補をいくつか確立した。原因遺伝子の同定と分子病態の解明を目指した研究については継続する必要がある。モデルマウスにおける治療効果の検証も着実に進捗し、既存の化合物ライブラリーを用いた大規模スクリーニングによる治療候補薬の探索も始まった。リハビリテーションの有効性について、その有効性を証明することができた。一方、装着型ロボットスーツHALについて、今後も技術革新を続け薬事承認取得を目指す。
結論
運動失調症の症例登録とゲノムリソースの収集を行った。分子病態に基づいた疾患特異的な治療法の開発に向けて、代用バイオマーカーを複数開発した。進行抑制に有効な治療候補化合物を複数同定し、モデル系を利用してその治療効果の検証を行った。遺伝性SCDの新たな原因遺伝子を2つ同定した。小脳性運動失調に対する短期集中リハビリテーションの有効性を実証し、ロボットスーツHALの運動失調症への応用を試みた。小児大脳型ALDに対する造血幹細胞移植の普及に取り組んだ。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

文献情報

文献番号
201024014B
報告書区分
総合
研究課題名
運動失調症の病態解明と治療法開発に関する研究
課題番号
H20-難治・一般-014
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
西澤 正豊(新潟大学 脳研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 辻  省次(東京大学医学部属病院 神経内科)
  • 佐々木 秀直(北海道大学 神経内科)
  • 貫名 信行(独立行政法人 理化学研究所)
  • 鈴木 康之(岐阜大学 医学部)
  • 祖父江 元(名古屋大学 神経内科)
  • 小野寺 理(新潟大学 脳研究所 )
  • 山田 光則(国立病院機構 さいがた病院)
  • 黒岩 義之(横浜市立大学 神経内科)
  • 武田  篤(東北大学 神経内科)
  • 和田 圭司(国立精神・神経センター 神経研究所)
  • 吉田 邦広(信州大学 医学部)
  • 高嶋  博(鹿児島大学 神経病学講座)
  • 中島 健二(鳥取大学 医学部 脳神経内科)
  • 永井 義隆(国立精神・神経センター 神経研究所)
  • 矢部 普正(東海大学 医学部)
  • 吉良 潤一(九州大学大学院)
  • 加我 牧子(国立精神・神経センター 精神保健研究所)
  • 加藤 剛二(名古屋第一赤十字病院 小児医療センター)
  • 瀧山 嘉久(山梨大学 医学部 神経内科学講座)
  • 水澤 英洋(東京医科歯科大学大学院)
  • 今中 常雄(富山大学大学院)
  • 宮井 一郎(社会医療法人大道会 森之宮病院)
  • 中田 力(新潟大学 脳研究所)
  • 平井 宏和(群馬大学大学院)
  • 岡澤 均(東京医科歯科大学)
  • 二村 直伸(国立病院機構 兵庫中央病院)
  • 池田 佳生(岡山大学大学院)
  • 山海 嘉之(筑波大学大学院)
  • 桑原 聡(千葉大学大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
運動失調症を共通の主症状とする脊髄小脳変性症SCD、多系統萎縮症MSAおよび副腎白質ジストロフィーALDを対象として、その病態を解明し、病態の進行を阻止できる治療法を確立することにより、これらの難治性疾患を克服する。
研究方法
代理バイオマーカーの開発。治療法に関する基礎的検討。自然歴に関する前向き研究、全国共同研究組織の構築。運動失調症に対するリハビリテーションの有効性の検討。SCDの原因遺伝子の同定。ALDにて骨髄移植を実施できる診療体制の確立を行った。
結果と考察
バイオマーカーとして、MRIを用いた指標が臨床スケールと相関すること、PETにてα-シヌクレインの蓄積を可視化しうることを示した。治療研究として、ポリグルタミン凝集体を分解させる方法を開発し、ポリグルタミンの二量体形成阻害剤、蛋白を細胞核外に移行させる化合物を同定した。さらにプルキニエ細胞選択的な遺伝子導入システムを開発した。患者にて、短期集中型のリハビリが有効であることを示し、HALの運動失調症への応用を試みた。病因研究として、MSAにてゲノム欠失の関与を示し、SCA15,SCA31の原因遺伝子を同定した。MSA、MJD,SCA6の自然歴、本邦の痙性対麻痺の実態を明確にした。ALDの造血幹細胞移植治療における前処置方法を確立した。
JAMSAC、JASPACという大規模なデータベースを始めとして、SCDの自然歴を明らかにした。また、代理バイオマーカーの候補を確立し、今後の治療研究への足がかりとなった。モデルマウスにおける治療効果の検証も着実に進捗し、既存の化合物ライブラリーの大規模スクリーニングによる治療候補薬の探索も始まった。最も大きな成果はリハビリテーションの有効性を証明することができたことである。HALについて,今後も技術革新を続け薬事承認取得を目指す。
結論
運動失調症に属する疾患の自然歴を把握するため、症例登録とゲノムリソースの収集を行った。分子病態に基づいた疾患特異的な治療法の開発に向けて、代用バイオマーカーを複数開発した。進行抑制に有効な治療候補化合物を複数同定し、モデル系にてその治療効果の検証を行った。遺伝性SCDの新たな原因遺伝子を2つ同定した。小脳性運動失調に対する短期集中リハビリテーションの有効性を実証し、ロボットスーツHALの運動失調症への応用を試みた。小児大脳型ALDに対する造血幹細胞移植の普及に取り組んだ。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201024014C

成果

専門的・学術的観点からの成果
モデルマウスにてポリグルタミン凝集体を分解させる方法を開発し、増大ポリグルタミン鎖の二量体形成阻害剤、ポリグルタミン病の原因蛋白を細胞核外に移行させる化合物を同定した。さらにプルキニエ細胞選択的な遺伝子導入システムを開発し、以上の成果は治療を志向した学術的な成果といえる。また病因面から、MSAにてゲノム欠失の関与を示し、SCA15,SCA31の原因遺伝子を同定し、これらの疾患の根本的な解決方法の足がかりを得た。
臨床的観点からの成果
MSA、MJD、SCA6の自然歴、本邦の痙性対麻痺の実態を明確にした。バイオマーカーとして、MRIを用いた指標が臨床スケールと相関することを示した。またMSAにて蓄積するα-シヌクレインをPETにて可視化しうることを示した。失調症患者に対して、短期集中型のリハビリの有効性を示した。さらに失調症状に対応したHALの開発を行った。また、ALDの造血幹細胞移植治療における前処置方法を確立した。
ガイドライン等の開発
遺伝性SCDの診断ガイドラインを作製しWeb公開の予定である。また国際的な臨床評価スケールの日本語版を作製しWeb上で公開している。
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
58件
原著論文(英文等)
228件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
210件
学会発表(国際学会等)
41件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計20件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Miyai I, Ito M, Hattori N, et al.
Cerebellar ataxia rehabilitation trial in degenerative cerebellar diseases.
Neurorehabil Neural Repair. , 26 (5) , 515-522  (2011)
10.1177/1545968311425918
原著論文2
Hasegawa A, Ikeuchi T, Koike R,et al.
Long-term disability and prognosis in dentatorubral-pallidoluysian atrophy: a correlation with CAG repeat length.
Mov Disord , 25 (11) , 1694-1700  (2010)
原著論文3
Tada M, Kakita A, Toyoshima Y,et al.
Depletion of medullary serotonergic neurons in patients with multiple system atrophy who succumbed to sudden death
Brain , 132 (7) , 1810-1819  (2009)
原著論文4
Hara K, Shiga A, Nozaki H,et al.
Total deletion and a missense mutation of ITPR1 in Japanese SCA15 families
Neurology , 71 (8) , 547-551  (2008)
原著論文5
Takahashi T, Kikuchi S, Katada S,et al.
Soluble polyglutamine oligomers formed prior to inclusion body formation are cytotoxic
Hum Mol Genet , 17 (3) , 345-356  (2007)
原著論文6
Ishiura H, Fukuda Y, Mitsui J,et al.
Posterior column ataxia with retinitis pigmentosa in a Japanese family with a novel mutation in FLVCR1
Neurogenetics , 12 (2) , 117-121  (2011)
原著論文7
Sato K, Yabe I, Fukuda Y,et al.
Mapping of autosomal dominant cerebellar ataxia without the pathogenic PPP2R2B mutation to the locus for spinocerebellar ataxia 12
Arch Neurol , 67 (10) , 1257-1262  (2010)
原著論文8
Sato N, Amino T, Kobayashi K,et al.
Spinocerebellar ataxia type 31 is associated with "inserted" penta-nucleotide repeats containing (TGGAA)n
Am J Hum Genet , 85 (5) , 544-557  (2009)
原著論文9
Yabe I, Kitagawa M, Suzuki Y,et al.
Downbeat positioning nystagmus is a common clinical feature despite variable phenotypes in an FHM1 family
J Neurol , 255 (10) , 1541-1544  (2008)
原著論文10
Sato T, Miura M, Yamada M,et al.
Severe neurological phenotypes of Q129 DRPLA transgenic mice serendipitously created by en masse expansion of CAG repeats in Q76 DRPLA mice
Hum Mol Genet , 18 (4) , 723-736  (2008)
原著論文11
Yamada M, Sato T, Tsuji S,et al.
CAG repeat disorder models and human neuropathology: similarities and differences
Acta Neuropathol , 115 (1) , 71-86  (2008)
原著論文12
Bauer PO, Goswami A, Wong HK,et al.
Harnessing chaperone-mediated autophagy for the selective degradation of mutant huntingtin protein
Nat Biotechnol , 28 (3) , 256-263  (2010)
原著論文13
Bauer PO, Nukina N.
Enhanced degradation of mutant huntingtin by rho kinase inhibition is mediated through activation of proteasome and macroautophagy
Autophagy , 5 (5) , 747-748  (2009)
原著論文14
Furukawa Y, Kaneko K, Matsumoto G,et al.
Cross-seeding fibrillation of Q/N-rich proteins offers new pathomechanism of polyglutamine diseases
J Neurosci , 29 (16) , 5153-5162  (2009)
原著論文15
Wong HK, Bauer PO, Kurosawa M,et al.
Blocking acid-sensing ion channel 1 alleviates Huntington's disease pathology via an ubiquitin-proteasome system-dependent mechanism
Hum Mol Genet , 17 (20) , 3223-3235  (2008)
原著論文16
Yamanaka T, Miyazaki H, Oyama F,et al.
Mutant Huntingtin reduces HSP70 expression through the sequestration of NF-Y transcription factor
EMBO J , 27 (6) , 827-839  (2008)
原著論文17
Matsukawa T, Asheuer M, Takahashi Y, et al.
Identification of novel SNPs of ABCD1, ABCD2, ABCD3, and ABCD4 genes in patients with X-linked adrenoleukodystrophy (ALD) based on comprehensive resequencing and association studies with ALD phenotypes
Neurogenetics , 12 (1) , 41-50  (2011)
原著論文18
Watanabe H, Ito M, Fukatsu H,et al.
Putaminal magnetic resonance imaging features at various magnetic field strengths in multiple system atrophy
Mov Disord , 25 (12) , 1916-1923  (2010)
原著論文19
Ito M, Watanabe H, Atsuta N,et al.
Fractional anisotropy values detect pyramidal tract involvement in multiple system atrophy
J Neurol Sci , 271 (1) , 40-46  (2008)
原著論文20
Kawai Y, Suenaga M, Takeda A,et al.
Cognitive impairments in multiple system atrophy: MSA-C vs MSA-P
Neurology , 70 (16) , 1390-1396  (2008)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024014Z